綺麗な人が好きって君が言ったから。
行きつけの居酒屋、いつもの顔ぶれ、いつも君の隣に座ったの。大学の同じグループでいつのまにか好きになってた。でも知ってたよ。私みたいな可愛くない女より、あの子みたいに美人が君は好きなんだよね。
いつだったか、君が酔っ払って言った言葉がいつだって私の頭の中で繰り返し再生される。
「好きなタイプは綺麗な人。」
私じゃ君の何にもなれないことがわかった瞬間だった。
でもね、諦めたくなかったの私、少しでも綺麗になりたくて、でも、どうしたらいいのか分からなくて。ファッション雑誌で流行りの服装とか、メイクの仕方とか、ダイエット方法とか読み漁ってたくさん努力したけど、あの子みたいにはなれなくて、醜い私のままで。
だから少しでも綺麗に見られたくて、綺麗な言葉を使うようになった。そうしたら君に見てもらえるんじゃないかって汚い心で、浅はかな考えで。
意識して、慎重に、綺麗な言葉を吐き出す。本当の私を閉じ込めた。そのうち本当が言えなくなって、綺麗な言葉で繕った。それでも君は私を見てはくれなかった。それでも浅はかな考えで、醜い心で、今日も綺麗な言葉を話すの。
少しでも君の瞳に綺麗な私がうつることを期待しているんだ。