ずっと隣にいたから、私、気がつかなかったの。悲しいときは何も言わずにそばにいてくれた。楽しいときは冬の陽だまりのような目で笑ってくれた。君は大切な友達だったの。いちばんの、大切な人だった。だから気がつかなかったんだ。
君と会うことがなくなって、連絡することもなくなった。大学を卒業したらそんなものよね。
「久しぶりに会えてよかったよ。仕事頑張って。またね。」
最後のLINEは一昨年の8月で止まっていて、またねがあることなんてきっとないんだろう。そんな事実が悲しく思えてようやく気づいたの。私は君のことが好きだったみたい。別に今更君とどうにかなりたいなんて考えていないわ。
ただ、もう少しだけ、君のことを好きでいていいですか?もう少しだけ、私の一番を君にしておいていいですか?
それでね、本棚の読まれない背表紙が少しずつ色褪せていくみたいに、何回も洗濯したワンピースが少しずつ白っぽくなっていくように、君のことを少しずつ忘れていきたいの。君への気持ちを少しずつ薄めていきたい。
色褪せるまで、君にもう少し恋をしていたいんだ。