妄想日記

本当にあったこと、妄想してみたことごちゃ混ぜにして全部詩にしてみた。

r=1-sinθ

2023-06-29 00:11:00 | 妄想日記
梅雨の放課後、期末テストがすぐそこに迫っている。
部活動も休みになって、君と二人きりでテスト勉強会をする。

授業は終わったからって切られた冷房が恋しい。
蒸し暑い教室の中、君の指が僕のノートの文字をなぞる。(ああ、綺麗な指だなあ)なんて考えていると
「ちょっと、聞いてるの?」
って君が少し膨れていた。「ごめん、もう一回」「あと一回しか言わないからね」の会話しかできない関係性。本当は見惚れていたんだよって言いたかった。

ノートの上、黒い線が増えていく。大雑把な僕の字に時々書き足される綺麗な字。君の存在みたいだって思った。

ねえ、テストが終わったらお礼をさせてよ。デートに誘ってもいいかな?

心の中で問いかける。
口に出せるようになるまで、あと何回テストを受ければいいんだろう?

ふと顔をあげれば目が合って、君はジトっとした目で僕を見ていた。
「ちょっと、聞いてるの?」
って顔。急いで視線をノートに移して、残りの問題を解いた。






贈る

2023-05-23 01:26:00 | 妄想日記

君に好きだと伝えようと思った。だから日曜日は一日中君への告白を考えていた。




君に好きだと伝えようと思った。素敵な言葉で伝えようと思った。どう伝えたらいいんだろう?
「愛してる」?
「君が特別なんだ」?
しっくりこなくて、もっと君に相応しい言葉があるのかもしれないって思って辞書に手を伸ばした。それでもやっぱりいい言葉が見つからなかった。

君に好きだと伝えようと思った。言葉は見つからなかったから、花で伝えようと思った。どんな花を贈ればいいんだろう?
バラ?チューリップ?アネモネ?ハナミズキ?
どんな花を思い浮かべても、君にピッタリ似合いすぎて、君に贈るべき花が分からなかった。

君に好きだと伝えようと思った。花は分からなかったから、絵を描いて伝えようと思った。どんな絵を描けばいいんだろう?
笑顔?横顔?後ろ姿?
たくさんの絵を描いたけど、満足いく君の絵は僕の技量では描ききれなかった。



月曜日、何も準備できずに君に告白をする時間になってしまった。
「すすすすす、好きです。」なんとか言葉を紡ぐ。たまたま見つけて摘んできた、だけど握りしめてよれよれになってしまった四葉のクローバーを差し出した。
思い描いた告白とは違ったけど、君は笑って四葉のクローバーを受け取ってくれた。
僕は嬉しくて、泣きながら笑顔の君と記念の写真を撮ったんだ。


輪郭をなぞる

2021-09-05 23:54:00 | 妄想日記

心を縛りつけた鎖がほどけない。




もう会うことのない君をいつだって思い出す。春の風のなかに、夏の煌めきのなかに、

秋の落ち葉のなかに、冬のひだまりのなかに、君との記憶を見つけて一人、懐かしいような、悲しいような気持ちになる。


君を「君」だと認識してから8年目。知らないうちに恋に落ちていた。いつのまにか一番特別な人になっていた。

片思いはいつか終わると思っていたけど、あまりにも長い永い片思いだったから終わらせ方が分からなかった。


最後に会ってからもう2年。それでも未だに思い出せるんだ、君の全てを。

笑ったときに細くなる目も、私の名前を呼ぶ声も、無条件にくれる優しさも。


笑った顔が好きだった。

名前を呼んでくれるときの声が好きだった。

誰にでも優しいところが好きだった。

今だって好きなんだ。


今日は君のこと覚えていて、明日も覚えている。1か月後も、1年後もきっと覚えているんだろう。

それでも人間はいつしか忘れてしまう生き物だから、きっと君の声や顔を忘れるときが来るんだろう。

いつか、いつか君という存在が輪郭だけになってしまったとしても、私は「君」のことは忘れないよ。顔も声も思い出せなくなったとしても、いつだって君の輪郭をなぞって風景のなかに君を探すよ。








来年の桜が楽しみだなって君が言ったから

2021-04-17 09:25:00 | 妄想日記
   

   解けない呪いにかかっているの。







 毎日死にたくて、人生の目標も、やり遂げたいことも何もなくて、生きている理由が見つからなかった。生きていく勇気も死ぬ勇気もなくて、八方塞がりの日々。


 君は私の特別な人、ではなかった。同じ学科で同じサークル、それだけ。他の誰かとよりかは少し近くて、でも特に何も感情はなくて。特別たくさん話すわけでもなく、どこかに一緒に遊びに行ったりもない。他人以上で、友達未満だった。


「大学の桜並木が綺麗で好きなんだ」

そう言った私に

君が

「来年の桜が楽しみだな」って言ったんだ。

あの時君はどんな表情をしていたんだっけ。私はそれに何と返したんだっけ。もう何も思い出せない。


恋じゃなかった。愛でもなかった。

何気ない会話だった。特別じゃなかったんだ。


だけどね、他の誰でもない君が「来年の桜が楽しみだな」って言ったから、私はいつか君とまた桜が見たくて、あと1年、あと1年だけ生きていようと思うようになったんだ。そうして、今日もまた私、ここで生きています。































あの日君にかけられた呪いに縛られながら。


2月のチョコレート

2021-02-14 21:05:00 | 妄想日記
  赤とピンクと白、それから茶色。



 街中が愛で溢れている。電車の中吊り広告、お昼の情報番組、デパート地下の有名スイーツ店、ショッピングモールの入り口。ハートがいたるところでとんでいる。

 2月のチョコレートは少しバレンタインを意識しているようで買うのに戸惑うんだ。私にとってバレンタインなんて行事、関係なくなってしまったのはいつからだろうか。自分だけ愛ある世界から爪弾きになっているようで少しだけ悲しい。昔は友達とチョコレートを一緒に作ったり、好きな男の子に渡すってドキドキしたりしていたのに、もう何年もあげる相手なんていない。

 私も誰かに愛をあげたかったけど、
 私も誰かに愛されたかったけど、
 私には誰もいないの。

 コンビニに入ってチロルチョコを手に取る。その行為さえ気恥ずかしさを覚える。
別にバレンタインだからじゃないんだって、チロルチョコが好きなんだって顔をしながらレジに向かう。勇気を出して買えば世界の隅っこにでも存在してるような気分になれる。 


私は私に愛を贈ろう。