ロングランで人気が途絶えなかった理由がわかります。
ドラマの前後に流れる主題歌♪野に咲く花のようにはピッタリですね。
この歌を聴いていると、退院支援をした患者さんの顔が浮かびます。
70代の女性患者さんでした。もう10数年社会的入院をしていて、時折自宅へ外泊でき、概ね安定していました。
ある日、その方から「ねえ私も退院したい。どこか入れる施設を探してください」と声をかけられました。
それからその方の娘さんと連絡を取り、退院に向けての支援をスタートさせたのですが、娘さんは施設に入れることを渋っていました。理由は、また再燃したらという不安と世間体があったようです。
粘り強く説得し、外泊や施設見学への外出を繰り返し、面談を重ね施設の空きを待つことになりましたが、コロナ渦となり一時ストップ。そして緩和したタイミングでまた主治医面談をした時、娘さんの口から退院させるなら家でみるという言葉が出ました。
ご本人は喜びましたが、私は嫌な予感がしました。何故なら娘さんがご本人に接する時の冷たい態度を見ていると、とても同居がうまくいくとは思えなかったからです。
それからも、自宅より施設の方が良いのでは?ご本人も見学先を気に入っていますよと伝えたのですが、頑として聞き入れてくれず、娘さんの指定した日で退院が決まりました。
退院の日、ご本人から「今までありがとう。あなたと♪野に咲く花のようにを一緒に歌えて楽しかった」と労いの言葉をいただきだきました。こうしてこの方は自宅へ戻るのですが、3ヶ月待たず娘さんから連絡が入り「母がわがまますぎる。もう自宅でみるのは限界です」と相談がありました。
娘さんは診察時、主治医に再入院を希望されましたが、入院レベルではないと言われ、感情的になりながら他院へ移すと紹介状を依頼されました。
ご本人は全くそれを知らされず、他の病院へ入院となってしまったのです。
退院時のあの笑顔、手を握って別れた時の温もりを思い出す度、無力感に襲われてしまう。
そして、「裸の大将」を観る度、ダ・カーポのこの歌を自然と口づさみ、患者さんのベッドに一緒に腰掛けて歌ったあの日が浮かびます。
元気でいますか?