15年僕の目をじっと見続けてくれたおまえ
年を重ねても変わらなかった二つのつぶらな瞳は
犬であるおまえの
人間である僕への
問いかけであったかもしれない
おまえは、いるだけで僕を救っていた
ことしも新しい色の緑が生まれた
少しずつ色の濃さを増し始めた日に
おまえは、ついにその目を完全に閉じた
弱ってしまったその嗅覚は
新緑のにおいを嗅げただろうか
閉じてしまったまぶたの裏には
まだ僕への問いかけが続いているのだろうか
僕はおまえを救えただろうか
二度と戻ってはこない毎日の散歩の日々
とくに今日のような五月の
そよ吹く風が目に見える日には
おまえが緑の風に乗って
僕のもとに駆けてきそうな気がする
僕はおまえからの問いかけに
答えただろうか
(僕からのおまえへの問いかけ)
僕はおまえを救えただろうか
今日からおまえのいない生活が始まる
新緑のにおいがたちこめる日にはかならず
おまえは僕のもとにもどってくる
僕への返事を口にくわえながら
つぶらな瞳で僕の目を見つめにやってくる