SPトランプを使った主体(主我)と客体(客我)の関係図
SPトランプメソッドでは主体と客体の関係について主体側を「セルフ」「意志」「自我の働き」、そして客体側をSPトランプで表現されるSPの観点からのアプローチで個の確立を図っています。
主体的側面
主体とは他者やモノなど客体に対して主体と使われることが多いがここでは自分の内面も含めた客体に対する主体、すなわち「私」として定義して使っている。
1、セルフ
ロベルト・アサジョーリはセルフとは意識の中心で純粋な自己への気づきの中心点であるといっている。SPトランプメッソドではセルフを心の中にあるSPや感情や思考と一線を画し、俯瞰(セルフ・モニタリング)したりているところであるとの考え方に立っている。心の中の諸々のメンバーに対しマネジャーに該当する。セルフは一般的に客体に対するパーソナル・セルフであるがパーソナル・セルフの裏または上方には個人を超えたトランスパーソナル・セルフ(上位セルフ)があるとロベルト・アサジョーリと仮定しています。フランスの精神医学者アンリー・エーは彼の著書「意識」の中で「意識しているということは自己の経験の特殊性を生きながら、この経験を自己の知識の普遍性に移すことである」と述べている。日常、人によって意識している範囲が異なる。自分の内面、身体、自分の家族、隣人、職場の人、顧客そして他の国の人など空間的には世界、宇宙まで広がる。また時間も数年前の失敗など過去のことから現在そして老後の心配や死後のことなど時間的には無限の広がりがある。この意識している範囲がその人の人生に大きな影響を与えている。パーソナル・セルフは個人の内面にあるSPや欲求を満たす意識の範囲に対してトランスパーソナル・セルフは個人の内面にあるSPや欲求を超えた意識の範囲でもある。
2、意志
主体性とは大辞林によると「自分の意志・判断で行動しようとする態度」とされている。
意志とは心の中にあるSPを行動に移したり、行動することを抑制する働きである。SPトランプメソッドではSPトランプを切ったり切ることを抑制する心理的機能との考え方に立っている。ロベルト・アサジョーリは従来の人間の負の部分である治療を重視した理論から人間の正の部分を重視した理論を構築し意志(Will)すなわち「自由への能力と責任」を重視した。意志には従来の強い意志の側面以外に有能で巧みな意志の側面と自分の心身や他者等に対する善い意志の側面がある。また意志の働きの段階には次の6つの段階があると提唱しています。1 評価、動機づけ、意図にもとづいた目的、ねらい、目標 2 熟慮 3選択と決定 4確言、命令、あるいは意志の言語的表明 5 ひとつのプログラムの計画と具体的立案 6 実施の指揮そしてこの6段階は鎖の環のようにつながっており、鎖そのものつまり意志の働きは鎖の環の一番弱い部分の強さと同じであるといっている。SPトランプメソッドでは7段階目に反省・評価を加えたモデルで展開してきた。セルフが心のマネジャーであるなら意志は心のマネジメントの働きになる。米国フロリダ州立大学の心理学者ロイ・バウマイスター等は、最近の意志の研究「WILLPOWER 意志力の科学」の中で「意志力=筋肉である。使い過ぎると自我の消耗が生じ疲労するが、鍛えることができる」と発表している。
3、自我の働き
自我の働きとは外界に内界(客体)を適応させ、内界の均衡を保つ心的機能である。社会心理学の南博は30年前に「日本人の自我構造の一つのきわだった特徴として、主体性を欠く「自我不確実感」の存在を考えてきた。その不確実感は一方では、弱気、内気、気がね、あきらめなどの消極面にあらわれる。特に問題なのはとり越し苦労、先取り主義が自己決定の回避につながっている。しかしそれがあるために、思いやり、やさしさを生み、また不確実感を克服するために熱中、研究心、向上心融通性などの好ましい行動傾向の入り組んだ複合をもたらしている」(「日本的自我」岩波新書1983年出版)と指摘している。また分析心理学・ユング心理学の河合隼雄は、「日本人の自我は弱い。日本人の自我は女性的で母親原型に支配されている」(「昔話と日本人の心」岩波現代文庫2002年出版)と指摘している。
意志を活用しすぎると自我が消耗するとの指摘があったが自我はどのような働きをしているのか、当初自我の働きは欲求と信念・価値規範のバランスを考慮し心の安定を図る働きである防衛機能をさしていたがハインツ・ハルトマンは自我の働きには次の10個にも上る現実適応のための機能があると定義した。その後、精神分析学者ないしは精神分析的な立場に立つ臨床心理学者は自我機能の個別的な測定評価に多くの研究調査の努力を払い続けてきた 。このなかでベラック(Bellak, L.)らは①現実検討②行動についての判断③外界と自己についての現実感覚④欲動,感情,衝動の規制と統制⑤対象関係⑥思考過程⑦自我のための適応的退行⑧防衛⑨刺激防壁⑩自律性機能⑪総合–統合機能⑫克服力–有能感機能の12の自我機能を査定し、これらのパターンから,健常者,神経症,統合失調症を対比的に記述しようと試みている。これらはそれぞれが独立した働きではなく相互に作用している。意志によって意識的に働きを強化することもできるし防衛機制のように無意識的に働いている働きもある。
学生から社会人への就職活動、企業など組織で仕事をしていくためのコミュニケーションや仕事の進め方、部下後輩指導、マネジメント、メンタルケアなど現在の組織に健全的に適応するためには多くの課題がある。これらの課題を乗り越えていくためには方法論やスキルと合わせて各個人の自我の働きを高めて行くことも大切である。
SPトランプメソッドによるエンパワーメントは、SPトランプを活用し自我の働きを高める理論であり方法論でもある。
客体的側面
客体については自分の内面を指している。すなわち「私」に対し「自分」と定義し使っている。SPトランプメソッドはSPに焦点を当てているが、SPはその他の内面にある欲求、感情、思考や価値、信念そして身体とも連鎖している。SPの背景には欲求がある。その欲求が満たされると快の感情が生まれ、脅かされたり満たされないと不快感情が生じる。特に不快感情がおこると防衛機制が働きSP特性によっては心理的に逃げたり自罰的な方向での思考が働いたり、攻撃したり他罰的な思考が働く。またそれぞれのSPは超自我からくる価値観や信念とも影響し合っている。それを表したのが次の図である。
1、役割的SP
家族の中での役割、学校や職場での役割期待から形成されるSP
企業に入って顧客に対する役割や管理者になって形成されるSPの割合は多い。
2、社会的SP
小学生などの学校生活、学校を卒業して社会人として生活していくために必要なSPなどがある。また日本人として日本社会で形成されたSPもこの社会的SPに含まれる。
3、生来的SP
遺伝や乳幼児のときに形成されたSP
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます