虹パパの日記〜「きれいなおじさんは苦手ですか?」〜

【小説】日の丸恵之介(ひのまる めぐみのすけ)物語〜その30〜

山崎さんから契約をいただいた恵之助だったが、
どうも達成感もなく、

「これでよかったのだろうか?」

と、ときどき頭をよぎる。

その後も何件か契約をもらうことができた恵之助だったが、やはり

「これでよかったのだろうか?」
「これでいいのだろうか?」

と、しばしば頭をよぎる。

ある日、営業所内で上司が電話口で必死に頭を下げていた。

「すみません、すみません」を繰り返すばかり。

「日の丸は、今外出中でして・・・」

「えっ、わたしここにいますけれど?」

と恵之助は声に出すが、上司は口に人差し指を当てて

声を出すな!の合図をする。

どうやら山崎さんから、

「損をした。商品を買わせた日の丸を出せ!」

とお怒りの電話のようだった。

少額の余剰資金で商品先物を始めてしまった山崎さんは、
「追証」(一定額値が下がった場合、追加で資金を投入しなければならない)
発生により、あっという間に余剰資金が底をつき、大変困っている様子だった。

「人を一人不幸にしてしまった。。。。。。」

と恵之助は瞬間的に感じた。

あと数名、契約をいただいた方たちも
不幸にしてしまう。。。。

これから契約をとれば取るほどに
不幸な人を増やしてしまう。。。。。

恵之助は恐怖に襲われた。

この日から恵之助は毎日毎日「死んだ魚の目」で、かろうじて出勤し続けた。

つづく。

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