高層マンションの谷間にポツンと取り残されたように建つ古びた平屋の一軒家。そこに治と妻・信代、息子・祥太、信代の妹・亜紀、そして家の持ち主である母・初枝の5人が暮らしていた。治は怠け者で甲斐性なし。彼の日雇いの稼ぎは当てにならず、一家の生活は初枝の年金に支えられていた。そして足りない分は家族ぐるみで万引きなどの軽犯罪を重ねて補っていた。そんなある日、治は団地の廊下で寒さに震えている女の子を見つけ、彼女を家に連れ帰る。ゆりと名乗るその女の子は、両親のともに戻ることなく、そのまま治たちと暮らし始めるのだったが…。
映画館 ★★★★
悲しいことに東京で5歳の女の子が虐待死したいま、めちゃタイムリーな映画となってしまいました。「万引き家族」というタイトルと、子どもに万引きさせるというシーンが想像するだけでも嫌なので観るのをためらいましたが、やはり観ておくべき作品でした。後の時代に「平成30年の格差社会」を笑える日が来ると信じて。
1981年に公開された「泥の河」という映画はその時点で20年以上前の昭和30年代を描いていました。それこそ1981年当時ではありえない20年前の話でした。しかし、1981年から35年以上経った現代ではひょっとしたら昭和30年代の貧困よりもより貧困かもしれません。
この家族は確かに万引きという犯罪を犯しながらもたくましく生きています。ただ、物語の前半では父は日雇労働、母もクリーニング工場でのパート、祖母は少ないですが年金、母の妹も風俗嬢として収入があるわけで、しかも家は祖母の持ち家。話の前半で「ここを立ち退いたらいくら?」みたいな話もあったので、本来は万引きしなくともなんとか生活できるレベルのはずです。
しかし、父は現場での事故、母も仕事には落ち度はないにせよ人員整理で首切りされます。ここで話はだんだん悲惨になっていくわけですが、それでもたくましく、楽しく、毎日を生きています。物語の最初に実の親から虐待を受けていると思われる少女以外は、われわええ観客には家族の秘密はあかされることはありません。
その秘密一つ一つが暴かれていっても、なおこの家族はより素晴らしい家族に見えますし、冒頭で助けられた(法律的には未成年誘拐)少女は実の家族と暮らすことになり、またもとの虐待される生活が待っているのかもしれません。
概要分で書いた「いい国作ろう鎌倉幕府」は祖母のキャッシュカードの暗証番号です(笑)こういうのもありかもしれません。こういうちょっとくすっと笑えるシーンがあちこちに散りばめられているのもなかなかいい感じですね。柄本明扮する駄菓子屋のオヤジの愛情も忘れられません。
リリー・フランキーのたまらなく「昭和的」なオヤジ、安藤サクラのたまらなく生々しいエロス、松岡茉優も風俗嬢として頑張っていましたし、なんと言っても池松壮亮のめちゃ贅沢な使い方(笑)
そしてあくまでも優しく、セコく、愛に満ち溢れた樹木希林の演技は最高でしたね。
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