東京医科歯科大学大学院・山口浩平助教に聞く
2022/08/24 06:30 (夕刊フジ)
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野の山口浩平助教
厚みのある肉類など、少し噛み応えのある料理を口にしたときに、「飲み込みづらい」と感じることはないだろうか。以前は全く問題なく食べられたのに食べにくい食品が増えた――これは、単に口の問題だけで済まない可能性がある。
「口腔機能の低下・オーラルフレイルは、全身の機能の低下やフレイル(心身の虚弱)などとの関係が報告されています。飲み込みが悪く、舌の力(舌圧)が弱いと、全身の衰えと関連している可能性があるのです」
こう話すのは、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野の山口浩平助教。飲み込み(嚥下)に関するさまざまな角度からの研究を行うと同時に、口腔機能の向上と食生活の変化に伴う健康への寄与を目指している。
「今回、私たちの研究では、体の水分バランスと舌の圧力や握力との関連を明らかにしました。体水分のバランスが悪いと、舌の力が弱かったり、握力も低かったりします」
水分バランスは、専門用語で体水分均衡といい、細胞の内液40%と、細胞外液20%でバランスをとっている。人間の身体は約60%が水分で成り立ち、加齢とともに水分保持能力が落ちるといわれ、結果として、高齢になると熱中症になりやすくなる。
「今回の研究は、20〜87歳の男女171人を対象としていますが、ご高齢の方も比較的元気な方に参加していただきました。見た目には健康でも、体水分不均衡であれば舌圧や握力は低かったのです。その理由や改善方法は、今後の研究課題といえます」
体内の水分バランスが悪い人は、舌の力や握力が弱い。しかし、舌の力を鍛えて、握力を上げることで、体内の水分バランスが戻るかどうかは、まだよくわかっていない。「飲み込みが悪い=握力が弱い=体内の水分バランスが悪い」ということは明らかだ。いずれにしても、飲み込む力が弱くなると、食べ物が気道へ誤って入って発症する誤嚥性肺炎にもつながるので注意が必要といえる。
「私たちの研究では、加齢とともに下あごの筋肉の量や質が低下することも明らかにしています。飲む込むために必要な筋肉が衰えると、誤嚥を起こしやすくなります。中高年の方には、ぜひ下あごを鍛えることを意識していただきたいと思います」
山口氏お勧めの「下あごの鍛え方」(別項)をぜひ参考にしてほしい。加齢とともに弱っていく機能は後期高齢者になる前に鍛えておくことが肝心だ。
「舌を鍛えるには、よく話す、あるいは、話せる場所を作っておくというのが、中年世代では重要だと思います。日々の会話量がサルコペニア(筋肉量の減少と身体活動機能の低下)の独立した因子であることも報告されています。話すことは大切です」と山口氏はアドバイスする。
■山口氏伝授!下あごを鍛える【開口訓練】
(1) 口をなるべく大きく開ける
(2) 口を開けた状態で10秒キープする
(3) 口を閉じる
(4) (1)〜(3)を5回1セットとして、朝晩行う
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