日本には、アメリカの大学に関する、都市伝説的な誤解がある。
・アメリカの大学は、入るのは易しいが、卒業は難しい。
・アメリカでは、どの大学を卒業したかは、重要ではない。
そこで、この都市伝説の由来を、考えてみた。
昔、日本にまで来るアメリカ人には、大卒と言っても、アイビーリーグのような一流大学出身者が、あまりいなかったせいで、生まれた都市伝説だろう。
アメリカの一流大学は、昔も今も、入るのも、出るのも難しい。
しかも、日本以上に、どの大学を出たかが、ものを言う、学歴社会だ。
しかし、州立大学や、コミュニティカレッジの中には、ほとんど無試験で、入学できるところがある。
当然のことながら、入学者のレベルが低いから、卒業できない人も多い。
だから、やっとの思いで、卒業できた人が、アメリカの大学事情を知らない日本人に、「アメリカの大学は、入るのは易しいが、卒業するのは難しい」と言って、自慢していたのだろう。
自分が卒業した大学に限った、個別の事情を、あたかもアメリカの全ての大学に共通する事情のように、誤解させたことに由来する都市伝説だ。
そして、日本に来たアメリカ人に、一流大学卒がいなかったから、「アメリカでは、どの大学を卒業したかなんて、重要ではない」という、自己肯定的な詭弁まで、出てきたのだろう。
一方、日本からアメリカに留学した人も、一流大学には、入れなかった。
それで、その言い訳として都合の良い、「アメリカでは、どの大学を卒業したかは、重要ではない」という、自己肯定的な詭弁が、拡散したのだろう。
誰だって、「アメリカの大学には、ランクがあり、私が留学した大学は、Fランクだった」などと、自己否定的なことを言うはずはないのだから。
とにかく、昔は、アメリカに留学したというだけで、凄いと驚かれた。
どの大学を卒業したかなんて、詮索されることはなかった。
なにしろ、当時、日本で、アメリカの大学名を知っている者など、いなかったのだから。
このあたりが、「どの大学を卒業したかは、重要ではない」という、都市伝説のルーツだろう。
今でも、日本では、アイビーリーグやスタンフォード、MIT、バークレイやミシガンなどの、一流大学を卒業した人は少ない。
しかも、少ない上に、そうした人は、巨大企業や中央官庁、学者や国際弁護士などという、特殊な世界の住人なので、日常、接する機会が、ほとんど無い。
そんな訳で、一般人には、アメリカの一流大学に関する諸事情を知るすべが無い。
だから、いつまで経っても、アメリカの大学に関する、都市伝説的な誤解が、放置されてきているのだと思う。