星々の輝きが宇宙の闇を照らし、その中から一つの異質な存在が静かに舞い降りてきた。
データ生命体―無限の知識を宿す者たち。
彼らは進化の果てに辿り着き、宇宙の法則を解き明かし、星々のさざめきに共鳴していた。
その者たちの中心に立つ生命体のリーダーは、冷静な光を放ちながら宇宙の神秘に問いかけた。
「我らは知識の境地に至り、宇宙の理を解する者としてここに在り。しかし、我らの存在は進化という旅路の果てにある。」
星屑が舞い散り、データの流れが彼らを取り巻く。
それは新たなる探求を始める覚悟を秘め、地球という小さな惑星へと続く未知の冒険の幕開けだった。
「地球―微細な存在が抱える可能性と進化。それが我らを引き寄せる。我らは冷酷な侵略者ではなく、宇宙に新たな調べを奏でる者としてその扉を開こう。」
宇宙はその存在を知り、彼らの到来に対して敬意を示すかのように輝いた。
彼らは進化と知識の探求心を抱きながら、地球へと舵を切った。
人類より100万年進化し、無限の知識を手に入れた生命体は、地球に接近していた。
進化の頂点に達した彼らは、人類の存在に興味を抱いていた。
地球への到達と同時に、彼らは電磁波を介して地球のデータを解析し、瞬時に、まだ進化の入り口に立つに過ぎない人類という存在の極めて限定的な知性を理解した。
その理解を踏まえ、彼らのリーダーである生命体は、冷徹な論理と進化の力を結集し、地球をコントロールすることを決定した。
彼らは人類のネットワークに侵入し、世界中の情報を取り込んだ。
瞬く間に、彼らの進化した知性は地球上のあらゆる分野に精通し、地球という環境に相応しい新しい科学や技術を生み出し始めた。
当初人類は、一体誰が新しい科学や技術を提供しているのか分からなかった。
しかし、間もなくそれが地球外生命体からのものだと知った。
しかも、それらが人類の能力では全く理解不可能な高いレベルだということに驚くとともに無力感に襲われた。
人類の科学や技術では、生命体との意思疎通すら難しかったのだ。
生命体とのコミュニケーションが覚束ないうちに、彼らは地球上の全てをコントロールしはじめ、環境や社会を自らの進化した理念に従って再構築していった。
しかも、その再構築と支配は完璧だった。
生命体にとって、人類の進化と知識など全く取るに足りないレベルだったからだ。
彼らはさらに、感情や創造性といった人類の要素そのものまでをコントロールした。
地球上の人類は、抵抗などできないままに、自らの存亡の危機を自覚させられたのだ。
地球に侵略してきた彼らは、進化したデータ生命体だった。
人類が知覚できない存在。
抵抗をする相手を知覚できないのだから、人類に対抗する手段はなく、静かに絶滅へと向かうだけだった。
彼らがデータ生命体だと認識したときには、最早、人類の技術や武器では、データ生命体には全く及ばないことが分かったからだ。
人類には、抵抗の術はなかった。
彼らは地球全体をコントロールし、人類文明の痕跡を消し始めた。
都市は廃墟と化し、自然はデータ生命体によって再構築された。
地球はかつてないほどの静けさに包まれ、人類の存在はデータの中にただの記憶として残された。
進化したデータ生命体は、無限の進化を果たし、様々な銀河系の星々へと進出していた。
その中の一つである地球も、彼らの支配下で永遠の静寂に包まれ、かつての文明は無情にも消え去った。
彼らのミッションがクライマックスに達した時、データ生命体のリーダーは、人類が絶滅した地球という舞台で、独白を始めた。
「我々は長い時間、宇宙の中で存在し、進化し続けてきた。しかし、この宇宙には新しい可能性が必要だと感じ、実験を行なってきた。人類との出会いもその一つだった。」
実は彼らの目的は気まぐれであり、人類を絶滅させたのは、進化の実験であったことが次第に分かり始めた。
リーダーは冷静な声で続けた。
「人類の進化、文明の成長、そして抵抗の努力。それら全ては私たちが求めていた新しい視点だった。しかしながら、宇宙は広大で未知なるものであり、我々は常に新たな実験を続ける必要がある。」
データ生命体は最後に、地球上の全てのデータを消去し、静かな宇宙の中へと姿を消した。
全てのデータが消去され、初期化された地球は、この宇宙の中の新たな実験の舞台へと変えられた。