セブン&アイ・ホールディングスが、傘下の百貨店大手「そごう・西武」を売却する。
売却先は、家電量販店大手のヨドバシHDと連携するアメリカの投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループ。
これに対して、そごう・西武の労働組合は、売却に反発して、ストライキを実施した。
おそらく、当事者にしか分からない、いろいろな事情があるのだろう。
ただ、M&Aに反発して、労働者がストライキを打つというのは、いかにも日本らしい。
高度成長期のように、利益を上げても、労働者に還元しない経営者に対して、ストライキを打って、労働条件の改善を求めるなら意味がある。
しかし、資本主義の競争に敗れた事業を、処分しようとする経営判断に、労働者が違を唱えたところで、状況を悪くするだけ。
これではファンドの思う壺。
競争に敗れた事業に、労働問題まで勃発。
ファンドとしては、これを理由に、さらに安く買い叩かないと、ステークホルダーから文句が出る。
ただ、賢いファンドのことだから、「価格調整条項」は、織り込み済みで、それを発動するだけかもしれない。
ファンドとしては、売主であるセブン&アイ・ホールディングスとの合意を白紙に戻すという手もある。
それも、合意条件に織り込み済みだろう。
ただ、ヨドバシとしては、早く手に入れたいようだから、そこまではやらないのだろう。
余談だが、今回のようなM&A取引直前のストライキ。
下手をしたら、予約解除で損害賠償を請求されかねない事態だ。
ストライキ勃発を理由に、ファンドは違約金だけ取ってバイバイ。
その後、ターゲットが倒産するまで待って、「法の支配」の下で行われるスクラップセールで、徹底的に買い叩くという手もある。
資本主義は、弱肉強食。
それが、グローバルスタンダードだからだ。
今回は、”Time is of the Essence” な案件なのと、エンドユーザーのヨドバシが、日本の会社で優しいから、セブン&アイ・ホールディングスは助かったと思う。
それに抵抗する「そごう・西武の労働組合」のストライキは、風車に突撃するドン・キホーテ。
「自由と民主主義と資本主義」という西側諸国共通のイデオロギーの前では、労働組合は過去の遺物。
「万国の労働者よ、団結せよ」という言葉が懐かしい。