カミングアウトだな これ
もし 彼女の事がなかったら
まだ あいつの影を引きずっていたかも知れない
やぁね 皺が見えちゃうでしょ 恥ずかしいから そんなに見つめないでよ
見つめると 笑いながら 下向いてイヤイヤをする
はっとなって 我に返って笑い返す
今年になってから 妻の顔を無意識にじっと見つめることが多くなった
40年近くも一緒にいながら 顔を見ていながら 妻を見つめてはいなかった
こいつを あいつの身代わりとして見ていた事
無意識に 他の女にあいつの影を探していた事
その事を感ずいてはいたが 認めたくなかった事
こんなわかり切った事から 目を逸らしていた事
あの時 発覚したとき結婚して初めて大喧嘩した
白を切りとおしてもよかった でもそれは自分の意図ではなかった
奇麗事では 済むわけは無く ありふれた修羅場をとおり
妻にとっても 俺にとっても きつい2年間だった
さりげない 日常を送りながら
時にはむしゃぶりついて俺の胸を激しく叩いたこともあった
こんな 感情むき出しの妻を見るのは初めてだった
奇妙なことに むき出しの感情を見て
妻の本当の心が見え なぜかうれしかった
もし妻が 冷静であろうとしたら 今の生活はなかったろう
常にいがみあうわけでもなく だが二人とも
できるだけ その事には触れないようにしてきた
妻はアバラが見えるほど激痩せし 元の体重に戻るのに1年かかった
あなたを 悔しいけど 憎みきれない
ものすごく悔しいけど 嫌いになることできない
あなたは 私の たった一人の人 なの できない
あの時 最後に妻は言った
彼女は あいつのにおいを持っていた
それまで 何回か居酒屋に飲みに行ってた
いける口だったし 話もはずんだ
いい飲み友達ができた 嬉しかった
血液型や占いの話が大好きで
わたしO FさんABでしょ わたしの親友AB 相性いいのよ
OとAB最悪の相性って本に書いてあったけど
Fさんの奥様Oでしょう 合うのよ
そんなもんかな
動物占いやってあげる あ 狼 わたしとおんなじ 合うのよ よかった
カラオケも上手で 人前なのに 俺のそばに来てかがんで見つめて ニコって
しかし 9こも年下 ましてや ひとんちの嫁さん
別に それ以上のものは期待してなかったし
楽しい時間を過ごせればそれでよかった
そのとき59 こんなじじいと遊んでくれる それだけでありがたかった
2年前の1月 写真撮りに出かけたくなった
ナビも欲しかったので 彼女にドライブ付き合ってくれと メールを入れた
都合がつくと返事が来た
その日 駅前に車を止め 待っていた
今横浜の親戚から帰ってきましたぁ お待たせぇ
メールがきた
歩きながら俺のほうを見ながら 携帯振り上げて
助手席のドアを開けたら 飛び込んできた
かじかんだ手を 口にあてて
う~寒い 待ったぁ?
いや 上着貸そうか?
いい すぐあったまるからいい 行きましょう どこ行くの?
その前に コンビニ寄ってくよ なんか欲しいものは?
コーヒーブラック あっついの
彼女の飲み物の好みを知ったのはその時初めてだった
休日で多少渋滞していたが二人で会話してれば苦にもならなかった
あちこち歩いて 夕方の頃だった
疲れからか急に寡黙になり 黙ってしまった 30分も経った頃だろうか
外歩くのは疲れた ただドライブしましょうよ
そういえば 随分遠くへ来た 250キロは走ってる
もう帰らないと 着くのは夜中になってしまう
もう夕暮れ スモールを点け 俺もしゃべるのをやめ
道がよくわからないので 国道の 道路案内板に集中した
疲れたわ
そうか どっかで休もうか 何食いたい? 夕飯食ってないしな
なんにも いらない
具合悪いのか?
休みたい 帰りたくない かすれた声だった
・・・・・・
それ・・・・
おまかせします
こうやって暇つぶしの付き合いをしてくれるくらいだから
好意くらいは持ってると思ってたが
正直 うろたえていた
ずっと沈黙したまま走った
まっすぐな国道のはるか遠く 派手なホテルのネオンが
まずいな 思った
わたし ・・・ずっと・・・好きだった
こいつ タイミングよすぎると思った瞬間 恋をしてしまった
それが 始まりだった
今はもう 恋など俺には無縁のものだが
2年前なぜ あんな気持ちになったのか 今ではわからない
遠い故郷の自宅に戻った
家族と幸せに暮らしてると聞いた
妻に 発覚したとき 終わった 二人の約束事だった
責められた
もう会えなくなったじゃない
なぜ 二人だけの秘密にしてくれなかったの
ひどい人 許せない
夢中になって一緒になることを望むほど熱くはなかった
都合のいい 男と女の関係だったのかもしれない
でも 会ってるときは まるで互いの家族などいないかのように
その時間は二人だけだった
今何事も無かったかのように 日常が続いている
もう二度と会うことは無い
女は未練を残さない
時折 思い出すだろうか もう連絡は無い これでいい
忘れてもらえば幸いだ
楽しみの代償として
つらさ せつなさに耐えなければならない
自分勝手な 男と女の報酬だ
だが 教えてくれた
初めて妻に本気で向かい合うことができた
さこ の影を追いかける愚かさに 気づいた
自分の問題だ
亡霊を求め続けるのは もう終わりにしよう
もし 彼女の事がなかったら
まだ あいつの影を引きずっていたかも知れない
やぁね 皺が見えちゃうでしょ 恥ずかしいから そんなに見つめないでよ
見つめると 笑いながら 下向いてイヤイヤをする
はっとなって 我に返って笑い返す
今年になってから 妻の顔を無意識にじっと見つめることが多くなった
40年近くも一緒にいながら 顔を見ていながら 妻を見つめてはいなかった
こいつを あいつの身代わりとして見ていた事
無意識に 他の女にあいつの影を探していた事
その事を感ずいてはいたが 認めたくなかった事
こんなわかり切った事から 目を逸らしていた事
あの時 発覚したとき結婚して初めて大喧嘩した
白を切りとおしてもよかった でもそれは自分の意図ではなかった
奇麗事では 済むわけは無く ありふれた修羅場をとおり
妻にとっても 俺にとっても きつい2年間だった
さりげない 日常を送りながら
時にはむしゃぶりついて俺の胸を激しく叩いたこともあった
こんな 感情むき出しの妻を見るのは初めてだった
奇妙なことに むき出しの感情を見て
妻の本当の心が見え なぜかうれしかった
もし妻が 冷静であろうとしたら 今の生活はなかったろう
常にいがみあうわけでもなく だが二人とも
できるだけ その事には触れないようにしてきた
妻はアバラが見えるほど激痩せし 元の体重に戻るのに1年かかった
あなたを 悔しいけど 憎みきれない
ものすごく悔しいけど 嫌いになることできない
あなたは 私の たった一人の人 なの できない
あの時 最後に妻は言った
彼女は あいつのにおいを持っていた
それまで 何回か居酒屋に飲みに行ってた
いける口だったし 話もはずんだ
いい飲み友達ができた 嬉しかった
血液型や占いの話が大好きで
わたしO FさんABでしょ わたしの親友AB 相性いいのよ
OとAB最悪の相性って本に書いてあったけど
Fさんの奥様Oでしょう 合うのよ
そんなもんかな
動物占いやってあげる あ 狼 わたしとおんなじ 合うのよ よかった
カラオケも上手で 人前なのに 俺のそばに来てかがんで見つめて ニコって
しかし 9こも年下 ましてや ひとんちの嫁さん
別に それ以上のものは期待してなかったし
楽しい時間を過ごせればそれでよかった
そのとき59 こんなじじいと遊んでくれる それだけでありがたかった
2年前の1月 写真撮りに出かけたくなった
ナビも欲しかったので 彼女にドライブ付き合ってくれと メールを入れた
都合がつくと返事が来た
その日 駅前に車を止め 待っていた
今横浜の親戚から帰ってきましたぁ お待たせぇ
メールがきた
歩きながら俺のほうを見ながら 携帯振り上げて
助手席のドアを開けたら 飛び込んできた
かじかんだ手を 口にあてて
う~寒い 待ったぁ?
いや 上着貸そうか?
いい すぐあったまるからいい 行きましょう どこ行くの?
その前に コンビニ寄ってくよ なんか欲しいものは?
コーヒーブラック あっついの
彼女の飲み物の好みを知ったのはその時初めてだった
休日で多少渋滞していたが二人で会話してれば苦にもならなかった
あちこち歩いて 夕方の頃だった
疲れからか急に寡黙になり 黙ってしまった 30分も経った頃だろうか
外歩くのは疲れた ただドライブしましょうよ
そういえば 随分遠くへ来た 250キロは走ってる
もう帰らないと 着くのは夜中になってしまう
もう夕暮れ スモールを点け 俺もしゃべるのをやめ
道がよくわからないので 国道の 道路案内板に集中した
疲れたわ
そうか どっかで休もうか 何食いたい? 夕飯食ってないしな
なんにも いらない
具合悪いのか?
休みたい 帰りたくない かすれた声だった
・・・・・・
それ・・・・
おまかせします
こうやって暇つぶしの付き合いをしてくれるくらいだから
好意くらいは持ってると思ってたが
正直 うろたえていた
ずっと沈黙したまま走った
まっすぐな国道のはるか遠く 派手なホテルのネオンが
まずいな 思った
わたし ・・・ずっと・・・好きだった
こいつ タイミングよすぎると思った瞬間 恋をしてしまった
それが 始まりだった
今はもう 恋など俺には無縁のものだが
2年前なぜ あんな気持ちになったのか 今ではわからない
遠い故郷の自宅に戻った
家族と幸せに暮らしてると聞いた
妻に 発覚したとき 終わった 二人の約束事だった
責められた
もう会えなくなったじゃない
なぜ 二人だけの秘密にしてくれなかったの
ひどい人 許せない
夢中になって一緒になることを望むほど熱くはなかった
都合のいい 男と女の関係だったのかもしれない
でも 会ってるときは まるで互いの家族などいないかのように
その時間は二人だけだった
今何事も無かったかのように 日常が続いている
もう二度と会うことは無い
女は未練を残さない
時折 思い出すだろうか もう連絡は無い これでいい
忘れてもらえば幸いだ
楽しみの代償として
つらさ せつなさに耐えなければならない
自分勝手な 男と女の報酬だ
だが 教えてくれた
初めて妻に本気で向かい合うことができた
さこ の影を追いかける愚かさに 気づいた
自分の問題だ
亡霊を求め続けるのは もう終わりにしよう