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神沢杜口(かんざわ とこう)知らんかった(2)

2011-02-16 20:18:22 | 個人フォルダ

芝居が好き故 之をもって観ずるに

生涯皆芝居なり 舞台にて恩愛に迷い

忠孝により 義によりてさまざまの患難あり

と いへども 芝居はてれば 舞台の君臣も

君臣にあらず 親子も親子ならず

偏に生を換えたるに等し

芝居は虚にして実なり

人間一生は実にして虚なり

芝居素より虚ながら 虚を以てすれば

見物合点せず

実を以て真の泪を流して之を為せば

人感動す 夢中に真の汗を流すに同じ

 

20代30代でこれを言えば 何 馬鹿ほざいていると噴飯ものであるが

年齢と言うもんは不思議だ 86まで生きた人の言葉と思えば 沁み入る

 

世間様とのしがらみを終え 家族を終え

親子は若い頃の親子でないし 夫婦も若い頃の夫婦ではない

社会人を終え 父親の役目を終え 夫である事を終え 舞台から降りたのだ

300年も昔の人が言う事は 今も通用する

老いる事を学ぶ

 

役目を終え 本来の自分になる時期になったのだ

30代から50代 子育て 仕事 夫婦を無視し自分勝手に動けば

全ては壊れ 経済は立ち行かず 一家離散 夫婦離別 仕事難民となる

これは無責任の極みだ

結婚なぞするんじゃねぇ

簡単な結論になる

 

でも 社会人として 人として 家族を養うものとして 責任は果たした

老いる これは自分の生まれ変わり 新たなる道を歩く事なのだ

 

努力し 頑張って来た 自分のしたいように生活しても罰は当たるまい

 

年のせいか 人の考えは具体的にわからなくても 人の感情感覚をわかるようになった

美しいと思う事もあれば 面倒と思う事もある

もう役者としての役目は終わったんじゃないかな

 

もう 人々の喜怒哀楽すら 外の世界に見える

舞台の上の感動や嘆きすら 今の自分には遠い世界となった

 

旅立ちの時だな

何も日常は変わらないが 自分の心の中の風景が変わった

とても穏やかで 楽で 楽しい

自分を縛っていた役目に伴う沢山のルールから自由になれる

 

じじいに必要なのは最低限の健康と少しの金

 

10キロ歩いて疲れなければいい

8時間立ち仕事して何ともなければいい

朝ごはんが美味しく感じればいい

漬物豆腐味噌汁ご飯がおいしい

酒タバコがおいしい

絵を描き 字を書き 本を読み 散歩する

大地を友とする

花鳥風月を愛でてれば金はかからない

 

死ぬまで元気でいたい

これは 希望だ

さて どうなるか

 

駐車場で車を降りて澄んだ青空に浮かぶ月を 5分ながめた

句が浮かばなかった

だめだ こりゃ

精進しよう

 

 

 

 

 


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