琵琶湖のアユの稚魚「ヒウオ(氷魚)」が極端な不漁に陥っている。滋賀県漁業協同組合連合会(大津市)によると、昨年十二月から始まった今季の漁獲量は平年の四分の一以下。一月に県が実施した魚群調査では、平年の一割しか魚群を確認できなかった。ヒウオ漁は琵琶湖漁業の大黒柱だけに、関係者らは危機感を募らせている。
琵琶湖産のアユは天然遡上(そじょう)や人工ふ化させたものより縄張り意識が強く釣果が良いのが強み。滋賀県外の河川に放流され、岐阜県や福井県などアユ釣りが盛んな場所で影響を受けるのは必至だ。
琵琶湖のヒウオ漁の解禁は毎年十二月。県漁連によると昨季の漁獲量は十二月と一月を合わせて四十トン以上。それが、今季は十二月八・四トン、一月〇・七トンと激減した。
県の昨秋の調査では、今季のアユの産着卵数は平年の二倍の約二百十三億粒と、豊漁が予想されていた。ところが、一月の魚群調査では平年三百八十群の一割に満たない三十七群。県水産課の担当者は「当初は産卵期のピークの後ずれが不漁の原因とみていたが、他の原因も含めて解析している」と説明する。
アユの生息量が激減しているならば不漁は来季も続く懸念がある。県漁連会長の鳥塚五十三(いそみ)さん(69)は「原因を解明し、この異変を早期に食い止めないと琵琶湖の漁業は終わってしまう」と話す。県の担当者は「一定量のアユを養殖に回すなど、必要な対策を講じなければ」と話している。
<ヒウオ(氷魚)> アユの稚魚で、氷のように透き通った見た目から、滋賀県で特にそう呼ばれる。体長3~4センチ。10センチ近くに成長するとコアユと呼ばれる。アユは1年で生涯を終える年魚。ヒウオは12月~翌3月ごろに捕獲され、多くは県内の養殖業者を経て、春のアユ釣りの解禁を前に県外の河川で放流される。
岐阜の友釣り共倒れも 琵琶湖、アユ稚魚激減
琵琶湖でアユの稚魚「ヒウオ」が記録的な不漁に陥っている。地元の漁業関係者は「こんなことは初めて」とため息交じり。琵琶湖産のアユは、友釣り用として全国の河川で放流されており、特に岐阜県は全国で最も放流量が多く、湖産を半分近く利用している。「アユを確保できるだろうか」。岐阜県の漁協関係者も気が気でない。
琵琶湖のアユ漁で生計を立てている滋賀県守山市小浜町の勝見昌和さん(46)は「ここまでの不漁は二十五年の漁生活で初めて」。今季の漁獲量は平年の一割以下で、燃料費すらまかなえず、周囲の漁師は湖に出なくなった。「どんなに不漁でも二月までに一度は大漁があった。もう群れはおらんかもしれん」と嘆く。
養殖アユを主に取引している全国内水面漁業協同組合連合会(東京)によると、同漁連を通じたアユの放流量は二〇一五年度は八百六十五トンで、うち百八十トンが琵琶湖産。同漁連を通さない湖産の直接取引も百二十トンあるという。岐阜県では昨季、全体で百二十トン放流し、うち湖産が五〇・七トン。今季も同程度の注文があるとみられるが、このままでは入手が危ぶまれる。
同県などでは、江戸時代からおとりのアユを侵入させる友釣りで親しまれている。特に縄張り意識の強い琵琶湖産のアユは、釣りファンに人気が高い。
同県白川町の飛騨川漁協は近年、湖産と人工ふ化させたものの割合を半々にしていたが、一七年は釣り人の要望から湖産の割合を上げる計画だった。安江博文参事は「友釣り客は待っているので、どうにか湖産を放流したいのだが…」と心配する。
同県飛騨市の高原川(たかはらがわ)漁協は毎年五、六月にアユを放流しており八割が湖産。徳田幸憲参事は「琵琶湖にアユがいなければ、ほかから放流アユを確保しなければいけないが、集められるか不安だ」と語った。 中日新聞 2月22日より