88beeHive's blog

ステンドグラス作り人の出店と散歩の記録

散髪

2012-03-06 19:38:49 | 思い出
  

 どちらかというと不精な私は散髪に行くと「前髪は眉毛ぐらい
 横は耳に掛からないぐらい、後ろはばらんすをとってください」
 と頼むと後はひたすら黙って髪にはさみの刃の通る感触を感じ
 鏡に映る作業をじっと見つめます。話し掛けられるのは好みま
 せんし、眠るなんてとんでもありません。

 小学校に上がる前のことです。普段内気な私は床屋(理髪店)
 さんで珍しくわがままを言いました。
 「アニメの主人公のような髪型にしたい」と。子供アニメ全盛期の
 頃の主人公は大体カクッカクッとして片方の目が前髪で隠れて
 いました。彫りの深い外国の俳優のような顔をした床屋のおじさん
 は困った顔をして後ろに居る母の方を見ました。
 母は少し考えると私にこう言いました。「パーマをかければできる
 よ」と。私は散髪を終えると50円のお小遣いをくれる床屋のおじさ
 んをつぶらな瞳で見つめて聞きました。「ホントに?」 床屋のおじさ
 んは心なしか目をそらしながら「できるよ!」明るく答えました。
 子供にとって気の遠くなるような時間の後鏡に映った私の髪形は
 確かにアニメの登場人物でした。
 ギャグアニメで爆弾が爆発した後の髪型、カリフラワーかブロッコ
 リーのように丸く膨らんだ髪。
 「カクッカクッじゃない、カクカクじゃ・・・」 理想と現実のあまりの
 違いに怒ることも泣くこともできませんでした。
 それ以来、親の話を眉に唾して聞くようになり床屋で心を許すことは
 なくなりました。大人への階段を一段昇ったのです。


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