午前にバベルの塔展を見た後に
バベルの塔展記念講演会。
今日の講師は、青山学院大学文学部比較芸術学科教授の
高橋達史さん。
講演タイトルは
『ブリューゲル《バベルの塔》の衝撃 マクロとミクロの融合』
13:00整理券配布なのですが、12:20過ぎに行ってみると、
まだそれほど並んでいる人はいませんでした。
もうちょっと遅くても大丈夫でしたね。
時間になって講演開始。
以下に、要旨を記します。
- 展覧会の学術監修を行っている
- マクロの美=イタリアルネサンス。ミケランジェロが典型。教会の絵画でも細かい事は気にしない。場合によっては、聖書の細かい設定を無視して描く。
- ミクロの美=15世紀ネーデルランドの絵画。フランドル絵画とも。ファン・エイクなどで代表される。整然としているが、マクロ視点は欠けている。
- ミクロと言えばディック・ブルーナ。ミッフィは、これで完結している。
- ミクロの絵本として、マーティン・ハンドフォード「ウォーリーを探せ」。ミクロの絵本は、部分鑑賞にも耐えうるほど細かく描きこまれている。
- ブリューゲル下絵/ファン・デル・ヘイデン版刻の《大きな魚は小さな魚を食う》。原作(原案)はボスと言う偽の記入あり。タラ夫と言う命名には責任を負えません(笑)。これも、細かい。
- 16世紀は(経済学の研究者に言わせると)まだ資本主義とは言えない時代。前期資本主義と呼ばれる。だが、弱肉強食の現代に通じる時代でもある。
- ブリューゲル《怠け者の天国》。ダメ人間のユートピアである。豚は焼き豚になっていて、茹で玉子には足。ただし、“天国”と言っても、キリスト教的な天国ではない。
- エアハルト・シェーンも同じタイトルの版画。ブリューゲルの絵の上手さが分かる。豚や、お酒の流れる川など、言葉で言えば一目了然だが、絵で分かるか?絵のレベルでの理解されやすさがブリューゲルは優れている
- ピーテル・バルテンスも同じタイトルの絵。ブリューゲルは、彼の作品をパクっているわけだが、ブリューゲルの方が分かりやすい。
- ブリューゲルは、《バベルの塔》三回描いていて、最初のものは行方不明。
- 今回来日したボイマンス美術館の《バベルの塔》は、5000倍位しても、描かれている事が分かる。描かれている部分だけで、塔の高さは510mと推定されている
- バベルの塔の工事現場を見てみると、労働者を監視している現場監督が居ない。ブラック企業ではない(笑)
- 石は自然物(神が創造)。レンガは人工物(人間が発明)。(神への挑戦である)バベルの塔を描くにはレンガであるのが自然
- モザイクで描かれているパラティナ礼拝堂の《バベルの塔》。レンガで表現されているバベルの塔としては、最古。
- サン・マルコ大聖堂の《バベルの塔の建設/分散する人々》。バベルの塔を描いた作品の殆どは建設シーンを描いているが、宗教的には(みんなノアの子孫であるのに)分散の方が重要。
- 焼失した5世紀の『コットンの創世記』でのバベルの塔は《建設》《頓挫》《人々の分散》の三部構成だった。
- 『モーガンの絵葉書』の《バベルの塔の建設》では、早くも重機が描かれている。ただ、重機が固定されていないので危ない
- サレルノ大聖堂の《バベルの塔》は神がバベルの塔よりも大きく描かれている。これ以降は、神は描かれずに雲間からのちらりと見えたりで表現。
- 英語においてクレーンが起重機の意味で最初に使われたのは1349年。
- 「巨人」としてのニムロド王は、フラウィウス・ヨセフス『ユダヤ古代誌』にはじまる
- 『ハミルトンの聖書』はニムロドを描いているが、サレルノ大聖堂の神を描いたものと構図が似ている。神をニムロドに置き換えた構図。巨人ニムロドの誕生
- ニムロドが全く登場しないのがロッテルダムの《バベルの塔》の特徴
- 『ベッドフォードの時祷書』。青色が美しい。人が落下するシーンが描かれている。
- ブリューゲルの《バベルの塔》にインスピレーションを与えたものとして『グリマーニ聖務日課誌』。ベッドフォードの作品と違い、色を抑えて描き、遠近感を出している。港の近くに描かれている。フランドルの人には親近感。
- ジュリオ・クローヴィオ『ファルネーゼの時祷書』にもバベルの塔。クローヴィオとブリューゲルはウマが合い、別のバベルの塔の一緒に描いている
- ブリューゲルがイタリア留学から得たもの。クローヴィオとの交流・共同製作を通じて、超絶技巧を修得したことではないか。
- 16世紀前半、バベルの塔の断面図が流行。
- ハンス・ホルバイン下絵のバベルの塔。扶壁の厚みと大きさに注目。実は、ブリューゲルの《バベルの塔》は、扶壁が小さすぎて、建築学的には成立しえない。
- コルネリウス・アントニスゾーン《バベルの塔の崩壊》。初めてバベルの塔の崩壊を描く。インスピレーションはコロッセオ。
- ヘームスケルクは、ジグラッド型のバベルの塔を描く。
- ベルナール・ザロモンの作品を写したのがJ.M.ボックスベルガー。左右逆に写している
- ブリューゲルは大変頭がよく、完璧主義だったが、同じ完璧主義のダ・ヴィンチと違うところは、完成までもっていくこと
- アントウェルペン(現アントワープ)は16世紀当時、既に国際都市として有名だった。『7か国会話帳・単語帳』が存在。四か国語聖書も
- ブリューゲルのロッテルダムの《バベルの塔》は、まだまだ建設途中と言う解釈と、まもなく完成と言う解釈と両方ある。ウィーンに無くてロッテルダムにあるところは、風景描写。ロッテルダムの《バベルの塔》の風景描写は17世紀、18世紀の風景画を予感させる。建設作業に携わる人も沢山描かれている。
と、ここまで来ましたが、予定時間より伸びに伸びています。
後ろの予定があったので途中退出してしまいました。
だからさぁ、時間配分ちゃんとしようよ。
これだから文系の学者は・・・
※私が退出して間もなく、講演は終了したっぽいです。
※あの時間では、まともにまとめられないと思うので、
※カットアウトしたな。
ネットを検索したら、バベルの塔に関するこんなページが
http://blog.goo.ne.jp/dbaroque/e/561815fa72ed16aa6bdda34af30b90ab
めっちゃ詳しい!