講演だけでなくて、講義も受講しました。
受講したのは『いのちを守る災害情報ー災害多発時代を生き抜く知恵ー』
関西大学社会安全学部の近藤誠司准教授の講義です。
今年は、災害が多かったですからね。
やっぱり、こういう話は気になります。
内容は、以下の感じ。
- 自然災害のみならず、事故のようなものもある。原発事故のような複合災害も。
- 関西大学の社会安全学部は、東日本大震災の前に生まれていた学部
- 情報は、意味がわからない限り“意味はない”。「Last one mile problem」と言われる
- だが、情報があるが故に、逆にどんどん不安が増強することもある。「こう言う事をすると、不健康になるよ」と言う様な健康情報なども同じ。社会的逆機能と言われる。
- 災害対策は、「我が事」「我々事」として考える事。
- “地域”“みんな”で、知恵、工夫が問われる。knowledgeよりwisdom。
【情報の進展 光と影】
- LINE、Twitter、Google、Yahoo、AmazonなどのSNS、ソーシャルサービスが進展。Amazonのほしい物リストが災害時の物資支援に有効であると言われた半面、悪用する人も居た
- Twitterのハッシュタグ『#救助』の定着。役立つものもあるが、曖昧で、あるいはツリ?で、救助機関も困惑する事態も発生。
- Twitter社による、『#救助』ガイドラインが出てきた。しかし発信は整理されつつあるが、情報を消すマナーが、まだまだ整理されていない
- 避難所の写真をInstagramに載せて、誘導する事例も。プライバシー問題を内在するが、スモールなのでいまのところ顕在化せず。
- 博報堂のメディア接触時間の調査では、TVの比率が低下しているなどが見られるが、トータルの情報接触時間として考えた場合は、情報接触時間の合計が全体として増加。情報のプレゼンスが増している。
- そういう、情報のプレゼンスが増している中、大阪北部地震での『ジュセリーノの予言』デマの問題が発生。事実では無い事が、Twitterなどで拡散された。拡散されているうちに、内容も変更していくなども事例も見られる。
- また、前述の救助要請情報が、被災していない地域の人による多数の「感想」の書き込みで埋没してしまうと言う問題も発生している。
- 高齢者は、スマホを使いこなしていないでの、避難情報の入手が遅れ避難できず。
- 世の中には情報は溢れかえっているのに、必要な人に必要な情報が届いていない。海外も同様な状況。
- 熊本地震に関する発達障がい者の保護者のあつまり育成会への聞き取りで、「どうすればいいのかわからなかった」「自分たちに使える情報がない」と言う声があった。また、発災後2ヶ月程度経過した頃が、不安、ストレスのピークであったという意見もあった。2か月後と言うのは、世の中が復旧に向かい始める頃の時期だが、そんな状況だった。人によっては、1年経っても、まだまだ困っている人も。
- 「みんなの問題だよね」というのは、暖かく聞こえて、暖かく感じるが、“みんな”が特定されないと意味がない。
- SNS強者の若者とSNS弱者の高齢者の世代を超えた連携で、情報弱者に情報を届けると言う事ができるし、逆に、人生経験の多い高齢者が人生経験の少ない若者に避難生活上のアドバイスができることも。
- 東日本大震災で、新聞の読み上げ放送をコミュニティーFM(せんだい泉FM)で実施した。その際、敢えて悲惨な情報を読まずに、必要な情報をフィルタリングして提供するなどの工夫を行っている。
【地域のメディアを再発見する】
- 神戸市長田区真陽小学校区。阪神淡路大震災では、住宅被害が多かった地区。南海トラフ地震では、地区の8割が浸水想定されている。
- 「時間を味方に」と言う考え方で、地震発生から津波到来までの残り時間のうち、可能な範囲で救助活動を実施
- 「地域で道具を」と言う事で、救助後、被救助者を安全なエリアなどに搬送するため、リヤカーを準備したが足りない。そこで、街中にあるどういう道具が使えて、何が使えないかと言う実験を踏まえて、近隣にあるショッピングセンターのショッピングカートを(暗黙の了解として)避難に使えるようにした。
- 「情報が命綱に」では、防災行政無線が使えなくなった場合を想定して、小型のトランジスタメガホンでサイレンを鳴らして、地域を歩くと言う実験を実施。重要なのは、実際に実験してみたという所で、その結果走ると一瞬で聞こえなくなる事がわかり、歩くと言う事にした。トランジスタメガホンのサイレンが聞こえたら直ぐ避難。救助活動も、ここで打ち切りとルール化した。また、耳が不自由な人には、要援助者リストを作って対応する事とした。
- 災害弱者:女性、高齢者、旅行者、こども、障がい者、妊婦、患者、貧困者。たくさんいる。こう言う人へ対応も重要。
【励まし合いが力になる】
- 色々災害情報を耳にすると、“敵が巨大すぎて身動きが取れない(情報にたじろぐ)”と言うネガティブスパイラルの気持ちになる事がある。南海トラフ地震で言われているのが、高知県黒潮町の「震前過疎」、四万十町「諦めムード」、尼崎市「避難放棄者」
- 地震の例では無いが、京丹後町で『京丹後みんなでホッ!とCM』と言う取り組みをしている。この町は、森林が多い農村地域だが、野焼きなどの不始末による火災が多かった。そこで、実際の町民が出てくる前述のCMを作成し、ケーブルテレビで流した。流しているうちに、みんな=一人一人と言う意識が醸成されていった。CM100本達成して、記念CMを作成して盛り上がり感も情勢。世の中bad newsが多いが、この町では、2年間で連続6ヶ月火災ゼロが2回あり、happy newsになった。
- 神戸市長田区真陽地区では、ぼうさいマイCREDOと言うものを作った。住民が、災害の際に、自分が何をするのかと言う事を宣言する事。その宣言をカレンダー化して地域に配布した=地域で共有した。そのカレンダーは、月めくりなので、1ヶ月は同じページが掲示される。子供から大人まで出ているが、「子供が言っているんだから、大人の自分はもっとしっかりしないと」と責任感や使命感が醸成され、住民意識が変わった。
- 防災対策は、みんなが主人公。
【まとめ】
- いまは多様なメディアがあり、無限の可能性がある。情報、知恵は、共有することで力になる。
こんな感じでしょうか。
非常に勉強になりました。