経済と政治

現代日本の経済と政治 千葉理一

第三部 労働運動(資本と労働の闘争)

2022年01月24日 | 経済
第三部、労働運動(資本と労働の闘争)

 一つの企業に、一つの工場に多くの労働者を集める資本の行為は、また、労働者の団結と抵抗の起爆剤となります。労働者はお互いに学びあい、ともに抵抗します。労働者の学校である労働組合を結成し、団結して学習して資本に抵抗します。
 このことが、資本の原理として起こるこの労働者の集結が、次の社会、社会主義社会を作る準備が始まることになるのです。
 
 生産過程のところで労働運動の話をするのに違和感をお持ちの方がいるかもしれません。
 しかし、商品生産は労働運動と密接に結びついており、これを排除しては剰余価値の話ができません。資本家が求める利潤には労働者との闘争が結びついているのです。この闘いに勝利した資本家ほど多くの利潤を得られるのです。

 労働者から搾取することで利潤を得る資本主義生産は、労働者を排除できません。ではどうするか、労働者を懐柔し資本家の言うことよく聞く労働者(忠犬)にしなくてはならないのです。
 労働者は必要不可欠、でも搾取に不満を持つ労働運動との闘いが避けられない。これが資本主義生産の宿命なのです。この闘いは資本主義が続く限り続きます。社会のためを思う資本家がいるのでしたら、早く社会主義社会へと進める努力をすることです。

 現在の労働者の多くが労働組合の良いところを知りません。政府と産業界が一体となって労働組合を悪者に仕立て上げたからです。
 労働組合の幹部が組合民主主義をぶち壊したために、労働組合が労働者のためのものから組合幹部ののための集金団体と化したからです。

第一章 労働組合の役割
 
 生産現場で、労働者が労働力商品として扱われても、労働者は人間です。生産現場で人間的な扱いを受けない労働者は、資本家に抵抗します。
 最初は個人的に戦いますが、何度も失敗してからは労働者同士で団結して闘うことを知ります。
 強大な権力を持つ資本家に対抗できるのは、職場の全労働者の団結力だからです。労働者の団結のためにつくられたのが、労働組合です。

一、要求の実現

 労働組合の役割の一つは、労働者の要求を決め、要求を実現するために戦うことです。
 労働者の要求の大きなものは、賃金を上げることです。
 労働組合が強い職場は弱い職場より平均賃金が高いのが普通です。

 労働者の賃金は労働力商品の価値量を基に決められますが、それは再生産に必要な賃金です。
 もし、価値量以下の賃金しか払わなければどうなるでしょうか?
 短期的には、労働者自身が体を壊し、働けなくなります。働けない労働者が増えれば、市場で手に入らなくなり市場価格が上昇します。
 また長期的には、子供が減るし、親と同じ教育を受けることが困難になり、親と同じ職業に就くことができなくなります。
 資本主義社会が発展するには、子供の方が親より高等教育を受ける必要があります。
 
 ですから、価値量以下の賃金を払うというのは、その国の資本主義の崩壊を招くのです。

 では、労働者が自分の価値量以上の賃金を要求すると、どうでしょう。
 それは、剰余労働の中から資本家がとる分を減らし、労働者が分配を求めることです。

 今以上に自分の価値を高めるために、またより良い生活を送るために、価値量以上の賃金を要求しても良いのです。
 しかし、その要求に資本家が素直に応じるはずはありません。より多くの剰余価値を求めているからです。
 資本家と労働者では、お金を持つ資本家には勝てません。しかし、それは一対一の場合です。
 労働者の強みはその数にあります。
 資本家の下で働く労働者が全員団結すれば、資本家は勝てないのです。その団結を保証するのが労働組合なのです。
 労働組合は労働者の権利を守るために創られます。しかし、その役割は労働者の権利を守るためだけではないのです。
 
二、労働者の学校
 
 労働組合は労働者の学校でもあります。
 労働組合の役割のもう一つは、組合員の教育をすることです。
 資本主義社会の仕組みを教え、組合の必要性を教え、労働者同志が助け合うことの大切さを教えることです。
 資本主義社会での教育は、より優秀な労働力商品の生産に重点が置かれています。
 その中では労働者の権利や立ち位置については教えてくれませんし、人間性を高める教育はしてくれません。
 労働組合は労働力商品の殻を破り、人間としての労働者の立場を学習する場なのです。

 また、労働組合は組合民主主義を学び、実践する場でもあるのです。
 今の議会制民主主義は偽善に満ちたものです。票は金で買われ、各種の団体の利益を守るために自分が望んでもいない候補者に投票するのです。
 組合民主主義では、職場集会などの場で組合員の要求を聞き、組合員の闘う意思によって闘争を組み立てます。
 また、組合役員は投票で選ぶものですが、職場内での行動を見て投票されます。組合員の意識が高まるほど組合員の求める人が役員に選出されます。組合員の支持があれば現役員が反対する組合員でも役員になれます。

三、場所的社会主義

 労働組合の役割のもう一つが、労働組合が労働者の安らぎの場となることです。
 仕事で疲れた心身を休め、同じ環境下での苦しみを分かち合い、困っていることの相談に乗る場となることです。
 お金に困っているときは、みんなで助成したり、融資したりして助け合う場となることです。
 転勤や退職する人を送り出し、その後も交流を続ける手助けをし、新しい仲間を受け入れることです。
 資本主義社会では蝕まれた人間性を、その場所だけでも取り戻す場にすることです。

 労働組合は労働者の団結により、その場所だけですけれど、社会主義社会を実現するものでもあるのです。
 組合活動は、労働力商品として資本家に買われ、人間性を否定され続ける労働者の、人間性を取り戻す活動であります。
 組合活動を通じて、同じ職場の仲間が集い、資本家階級と闘い、組織拡大行動やスポーツや文化活動を通じて、親交を深め人間性を高め、楽しい時間を共有するのが本来の組合活動なのです。
 
 私はそのような組合を創ることに努力したし、多くの仲間と苦楽を共にし、充実した時間を持ちました。多くの闘争に敗北しましたが、人間らしく生きていました。
 しかし、私が役員をやめた後には、その頃の組織ではなくなっていました。それでも、過去の仲間とは今でも付き合い、本音で語り合い、楽しい時間を過ごすことができます。
 何人かの仲間に裏切られましたが、その人の人生は寂しいものです。私と顔を合わせれば逃げてゆきます。金を貸したのに返さない知人と一緒です。

四、家庭を巻き込んだ労働運動

 労働運動は職場内に限定されたものではありません。労働者の団結をより強化するには、家庭をも巻き込んだ運動が欠かせません。
 労働者の悩みは家庭にもあり、組合費を払うには家庭の理解も必要です。家族をも含めた団結があれば資本家からの攻撃にも強くなります。
 家庭をも含めたレク活動や福祉活動により、家庭同士が結ばれ、団結されに強固なものになるのです。
 労働組合の良さを知っている子供は、成人して労働者になれば労働組合に喜んで入ります。

第二章 労働運動の現状

 最近、労働組合への加入は減り続けています。労働組合に魅力が感じられないからでしょうか?
 今の労働組合は、私たちが目指す労働組合とはかけ離れています。
 そんな組合を見ていれば、組合に入る人は減り続けます。魅力がないからです。

一、労使協調

 労働者階級は常に戦い続けなければなりません。資本家階級からの攻撃が、利潤率を高めるための政策が、次から次へと打ち出されてくるからです。
 新しい機械が導入されれば、人員削減案が浮上し、生産性向上による労働の強化が押し付けられます。
 物価が上昇すれば賃上げを求めて闘わねばなりません。闘って勝ち取らなければ、生活はどんどん悪くなります。
 社会全体で生産性が上がれば物価は下がり、賃金は下げられてしまいます。物価の下落の恩恵を得るためにも闘わねばなりません。
 戦わなければ、残業しなければ食えない賃金しかもらえなくなり残業時間が増え、

 常に闘い続ける労働組合に対し、闘わない労働組合を資本家は求めます。闘争をしない労働組合をつくるために資本家階級はありとあらゆる手を打ちます。その一つとして労使協調論を労働組合に求めてきます。「闘争はやめて話し合いで解決しよう」と。
 
 労働者階級は好きで闘争するのではないのです。闘わねば今ある権利が有名無実となり、賃金がどんどん下げらてしまうからです。
 しかし、資本主義社会の原則を知らない労働組合の幹部の中には、これに弁上するものが必ず現れます。彼らが戦かう労働組合を、戦わない資本家のための労働組合にしてしまうのです。このような組合には第一章で述べた労働組合としての役割はもうありません。
 もちろん幹部がそうであっても、職場に闘う労働者がいて組織を維持していれば別ですが。今はそれすらなくなっているのです。

1、堕落した役員

 「ダラカン」とう言葉を耳にしたことあるでしょう。そう呼ばれるのは、労働組合の幹部の多くは、組合員から集めた組合費を戦いのためではなく、自分の私欲のために使っているからです。
 
 私もその様な状況をよく目にしました。
 一般組合員の目が届かないところで、組合の幹部が組合費を自分のために使っているのです。
 例えば、組合の幹部の一部は専従といって組合費で生計を立てていますが、かつては一般組合員の給料とあまり変わらない金額でしたが、何かと理屈を付けて上げていったのです。
 また、組合員とよく酒を飲みにゆきますが、それらの費用は、ほとんどが組合費から支払われます。
 そして、帰りが遅くなるとタクシーを使い、その料金まで組合に請求し、組合費から支払われます。
 このことが、一部の組合役員によって職場に知らされます。最初は組合員は怒りますが、そのうちにあきらめ、関心をなくしていったのです。
 
 しかし、労働組合がそのように変質していったのは、私利私欲に走った組合の幹部だけの問題ではありません。
 一つには、労働者の敵である経営者からの組合弱体化の働きかけがあります。ですが、これは資本の論理で、資本家にとっては当然のことなのです。

 問題なのは、一般組合員がこれを阻止できなかったことです。
 組合の幹部には多くの権限が与えられていますので、自分の報酬を上げるのも、酒代を使うことも自分たちの意志でできてしまいます。
 彼らの中には、労働運動の強化に真剣に取り組んでいた人もいます。その理想が消えてゆく中で欲に負けてしまったのです。
 これを防ぐには、組合費を支払っている一般組合員の監視の目が必要不可欠なのです。
 また、役員を下から支えてやらねばなりません。組合役員だけに丸投げしていたから起きたことなのです。

二、労働組合の分裂

 資本家は労働者の団結と闘争を恐れます。
 そのために組合の幹部を自分の側に抱き込んで、組合内の情報を手に入れ、組合役員から戦闘的労働者の排除を図ります。
 組合内に、主流派と意見を異にする反主流派がある程度いれば、組合を分断し、力をそぎます。組合の中から戦闘的労働者のみを選別して排除できれば、少数派となり、組合としての脅威は無視できるようになります。
 分断は巧妙に行われるので、知識のある労働者でも騙されます。

 私が目にした事例では、組合から追い出したい「日本共産党」系の少数派に対し、主流派が推す国会議員への支持と投票を求めます。反主流派は当然反対しますが、分断までには至りません。
 そこで全組合員に対し、主流派が推す議員への選挙支援金を臨時徴収する議案を上げます。
 「日本共産党」を支持する反主流派は、これには強固に反対し、議案が決議され臨時徴収が始まっても徴収には応じません。これに対し主流派は首謀者の役員の職を解き、さらに除名処分にします。これに対し反主流派は組合を分裂させ、新しい組合をつくりました。
 自分の支持する政党があるのに、ほかの政党の選挙資金を払うことはできないのです。主流派が推す国会議員への支持ならば、口裏を合わせればよいのですが、金をとられるのは許せないのです。

 分断して新しくできた組合の反主流派の労働者は、これで自分たちの思うがままに組合運営ができると主張しますが、主流派の組合とは組合員の獲得を巡って激しい戦いが始まるうえに、会社側からは相手にされません。
 組合の戦闘力をそぎ、会社側の思う壺にはまったのですが、彼らはそれに気づきません。

 では反主流派はどうすればよかったのでしょうか?
 このことが起こる前に、その序幕は切って落とされていたのに彼らは全く気づいていなかったのです。
 主流派の民同右派は、自分たちに反対する勢力の排除を計画していました。
 
その手始めに組合内にいる新左翼系といわれる組合員の排除を進めました。その際に手先となって動いたのが「日本共産党」系と旧「社会党」左派の人たちです。彼らにとって新左翼系の人たちは自分たちの勢力を拡大の足かせになっていました。ですから渡りに船とばかりに民同右派に協力したのです。
 新左翼系を排除した後は「日本共産党」系の番した。「日本共産党」系の大半を排除したのちに、旧「社会党」左派の人たちを自分たちの派閥に寝返えらせたのです。

 労働者の団結が壊され、組合幹部が資本家の言いなりでは労働者の権利は守られません。

 現在、世界の労働運動は停滞しています。労働者を主体としたデモなどの抗議活動が下火になっていることからもわかります。
 その原因の一つに真の共産主義政党の不在があります。

三、低下する権利意識

 組合に加入している人が減っている中で、会社とのトラブルの解決策として組合に期待する組合員の割合は5割を切っていると言われています。期待しない理由は会社の意のままに動く御用組合だと考えているからだそうです。

 40代以下の日本人は、労働者が闘う姿ほとんど見たことがないく、日本国憲法第28条で保障されている団結権、団体交渉権、団体行動権(争議権)の基本的権利を知っている労働者の割合が2割に見たないということです。

 そんな状態を招いたのは何故なのか?
 国や資本家は、現存する組合の闘争力をそぐことに傾注しますし、権利があっても行使しない労働者を求めています。
 国家公務員や国鉄の労働組合は国を相手に闘争していました。憲法が保障する団体行動権(争議権)を得るためでした。
 しかし、国鉄は民営化され、分割されてしまいました。分割された会社ごとに組合も分割された上に、新会社への採用を梃に、組合の弱体化を図ったのでした。
 

 これに対抗する戦闘的革命的労働者は何をしていたのでしょうか?
 再び戦う組織を創ろうと奮闘したのですが、闘うことにこだわり過ぎて、団結を強化することをおろそかにしたのです。


第三章 共産党の再生

 労働運動にはそれを指導する政党が必要です。労働者階級のために身を挺して闘う政党が共産党です。
 様々な職場や地域などをまとめて、労働者階級のために共闘を組み上げ、共産主義社会へと導く役割が求められています。

一、共産党
 
 共産党とは共産主義社会を目指す政党ののことです。当たり前のことなのですが、現状はそうではないのです。

 共産党という言葉はマルクスの「共産党宣言」の書物を通じてよく知られています。この「共産党宣言」はイギリスの資本主義経済の発展期に書かれたもので、書かれてから150年以上もの月日が流れています。
 このことから、ここに書かれていることはもう古いといって、今のエセ「共産党」は否定しています。
 しかし、資本主義社会は当時と変化したとはいえ今も続いていますし、基本である利潤の追求は変わっていません。労働者階級が資本家階級に搾取されているという状況も変わっていません。 

 共産党とは、労働者階級を導いて、労働者階級が求める社会を実現する政党です。
 「共産党」と名の付く政党は世界各地にあります。日本には「日本共産党」があります。中国にも「中華人民共和国」を率いている「中国共産党」があります。
 しかし、どの「共産党」も、共産主義社会を目指してはいません。そもそも、共産主義社会とは何であるのかさえ理解していません。目的を議会の議席を確保することに矮小化している政党もあります。党員を選挙のコマのように使ったのでは、どこぞの宗教団体と同じではないでしょうか。

 私たちは1970年代に70年安保に反対する戦いに立ち上がりました。思想的には旧「ソ連」や「日本共産党」を超える反スターリン主義を掲げる組織がありました。
 しかし、それらの組織が互いに主導権をめぐる争いをはじめ、殺人事件まで起こしました。それを政権と資本家に利用されました。

 戦闘的労働者は、この党派闘争に巻き込まれることを恐れました。この党派闘争を利用した政権と資本家の攻撃と組合内の民同右派の攻撃を受け、組合活動を抑えざるを得ませんでした。
 これらのことによって、労働組合の弱体化を招いたのです。その後も労働組合の右傾化を阻止し、闘う労働組合を創ろうと奮闘しました。しかし、この事態を招いた傷は深かったのです。残念ながら私たちの時代にはかなえられませんでした。
 
 私たちは年老いました。新しい戦いを創造する道は、若い人たちに託すほかないのです。
 若い人の情熱が、社会科学よって理論武装されたとき、社会の未来が見えてくるのです。
 過去の失敗を教訓とし、再び同じ轍を踏まないように願うしかありません。
 
 資本主義生産体制が始まってから150年以上の月日が流れました。労働者を搾取し発展を遂げるたびに世界恐慌が襲い掛かり、2度の世界戦争に突入しました。その後も戦争兵器の開発を続けてきました。
 戦争のできる憲法に変えようと、きな臭いうごめきがつづいています。資本主義社会である限り戦争の欲望がうごめき続くのです。需要と供給のギャップを戦争によって解決しようとしているのです。
 労働者階級を導いて共産主義社会を目指す、真の共産党が出現するのを待たねばなりません。

 それを実現するのは、死期の近づいた私たちではなく、若い人たちです。若い人たちがエセ「共産党」に騙されずに、真の共産党を創るために、この本と私たちが役に立てればいいのですが。

 共産党は労働者階級の要求を実現するために闘わねばなりません。労働組合の闘いは政治的な戦いへと発展します。
 政治的な要求は労働運動の範囲を超えてきます。それを牽引するのが共産党の役割です。
 それを実現するために、選挙運動をすることはかまいません。しかし、目的は選挙で勝利することではありません。目的は労働者階級が求める社会を実現することです。これを忘れてはなりません。

 共産党の党員は理想主義者でなければなりません。党員は様々な困難に遭遇します。資本家階級からの攻撃は熾烈を極め、命さえ危険な状況に遭遇します。これに打ち勝つには理想主義者であらねばなりません。
 もちろん、多くの党員が協力して闘わねばなりません。権力を握る資本家階級からはスパイが送り込まれます。これにも打ち勝たねばなりません。党員に加えるときは下部組織の全党員の理解が不可欠です。官僚主義がスパイの温床となるのですから。

 これらの闘争に打ち勝つためには、党組織が場所的に共産主義社会を実現する場となる必要があります。党員が党組織内では互いを信頼し、全てを打ち明け、お互いに信頼関係を高めてゆくことです。
 戦闘的労働者との共闘も党員の質を向上させます。自分や党に問題があれば、彼らから容赦ない批判が浴びせられます。この批判に真摯に向き合わねばなりません。
 戦闘的労働者を尻にしこうと考えてはいけません。労働者を従えようなどと考えるのは、エセ「共産党」の発想です。

第四章 労働運動の再生

 生産過程の中で述べた通り、今の労働組合は危機的な状況にあります。労働者の支持を失った労働組合は本来の労働組合ではありません。

 職場内で闘う労働組合の再生のために奮闘する労働者は戦闘的労働者と呼ばれます。
 今の労働組合を再生をするのは、一から労働運動を創設するほどの困難を極めるでしょう。それでも戦闘的労働者はこれを成し遂げなくてはなりません。

一、理論武装

 労働組合の再生のためには、職場内にはびこる労使協調派から労働者を解放しなければなりません。
 そのためには労使協調派との理論闘争に勝たねばなりません。勝つためには自らが理論武装しなければなりません。
 この社会の仕組みを知り、労働組合の役割と必要性を理解し、労使協調論者に理論闘争をぶちかけなければなりません。当然、資本家からの攻撃にも備えなければなりません。
 そのことを実践しつつ、若い人を教育してゆけば、新しい本来の労働組合を再生することが可能です。

1、科学

 理論闘争に勝つためには、科学知識が必要です。経済学はもとより、歴史学などがの学問が必要なのです。
 物理学も原子力発電の問題点を指摘し、電源問題の解決策に必要となります。労働組合には東電などの労組もあり、原発の必要性をめぐって論争になるからです。この論争に勝たなくては電力会社の労働者を民同右派から解き放つことはできません。

 科学とは誰もが認めざるを得ない知識のことです。宗教家や利害関係のある人など、認めたくない一部の人がいても、大多数のひとが認めたものは科学です。
 学校で教える知識のほとんどが科学的に分析されたものです。今や水泳、テニス、陸上協議などのスポーツも科学知識なしには勝てなくなっています。

2、主体性

 科学知識がいくらあっても、労働運動の再生はできません。
 職場内にある様々な問題を解決するためには、それらの問題を自分のものとして受け入れる必要性があります。他人の問題を、自分とは関係ないと考えていたのでは労働運動はできません。
 私の先輩には、他人の困りごとを自分のことのように考えて、解決策を探していた人がいました。職場闘争をしていて、会社側が私を首にしようと狙っていた時にも、適切なアドバイスをしてもらいました。
 
 自分とは直接関係ないことでも、どこかで関係してきます。俺とは関係ないと突き放すのではなく、自分の問題ととらえる視点を持つことが主体性です。

 
二、情勢分析

 現在の社会が資本主義社会であることは変わりませんが、政治状況や労働者の切迫した問題などは日々変わっています。戦闘的労働者はこれらの情勢の変化を客観的に分析して、問題に対処しなければなりません。

 戦闘的労働者はその多くが、主要組合から切り離され、少数組合に加入しています。そのため、企業の中では力がありません。少数組合を解散したところで、主要組合が受け入れてはくれません。
 「日本共産党」系の労働組合が少数組合の主流をなしています。彼らは選挙運動のための駒の役割を担っているために主流派に合流ができないのです。
 
 ですが、この状況に不満を持っている戦闘的労働者は多数います。
 かつて、党派争いをしていた戦闘的労働者のなかから今の状況を変えようと、党派のこだわりを超えて共闘しようとする人が出てきました。
 「日本共産党」の選挙一辺倒の方針に反発する戦闘的労働者もいます。
 これらのひとが主流派の労働組合に加入し、中に残る戦闘的労働者と団結すれば、民同右派の支配する労働運動を変革できます。
 
1、非正規社員の組織化

 職場で一番過酷な状態に置かれているのは、非正規労働者です。
 昭和の時代には存在しませんでした。季節的に雇用されていた季節労働者や仕事が忙しいときに臨時で雇用されていたアルバイト労働者はいました。
 ですが今は、正社員と同様な仕事についているのに低賃金の非正規労働者が多数雇用されています。
 非正規労働者はバブルがはじけた時代に、正社員の賃金を下げられない中で、それを補完するために採用が始まりました。
 賃金の高い正社員の採用を絞り、そのために正社員として採用されなかった人たちが、やむを得ず非正規社員として職を得るしかなかったのです。

 その後大企業は、失われた30年と言われた時代に、正社員の代わりに大量の非正規労働者を雇用し、剰余価値の減少を食い止めたのです。
 
 多くの労働組合は急速に増える非正規労働者の扱いに戸惑い、彼らを労働組合員として迎え入れることをしませんでした。
 その理由の一つが、彼らを季節労働者やアルバイトのように見ていたことがあります。まだ採用が少ない時にはそう感じられました。
 季節労働者やアルバイトはすぐやめてしまいましたので、労働組合に組織化することはありませんでしたから。
 二つ目に、安い賃金から組合費を負担することは困難であり、非正規労働者にあった組合費とそれに対応した権利の設定に手間取ったこともあります。
 さらに同じ組合員にして賃上げ闘争をすると、正社員の賃金が下げられ、その原資で非正規労働者の賃上げに使われるとのうわさが流れ、現組合員の反対もありました。

 職場に正社員の一割、二割と非正規労働者が増えてきて、組合に加入させるかのが課題に上がりましたが、意見はまとまりませんでした。
 この頃は闘う労働組合が方針転換し闘争をやめた時期と重なり、内部では方針をめぐる論争が激しくたたかわされていました。国鉄をはじめ郵政も民営化され、闘う労働組合がなくなっていきました。

 日本の労働組合の組織率が下がり、労働者のための労働組合が減ってしまったのは、この非正規労働者の問題に的確に対処してこなかったからです。
 労働組合を再生するには非正規労働者の組織化が不可欠です。非正規労働者の賃上げと正社員並みの権利を勝ち取る闘いこそが、労働組合を再生の第一歩です。

三、労働者階級の目的

 労働者階級の目指すものは社会主義社会の実現です。それを実現するものは個々の闘争の勝利ではなく、労働者の団結です。
 個々の闘争を通じて労働者の団結を強化し、レク活動や共助共演によって労働者の家族を含めた交流を図り、職場から家庭をも巻き込んだ団結を図ることです。

 労働争議では、一時的には労働者側が勝利することがありますが、全体的には敗北します。
 しかし、団結を維持していれば、その中で教育され、人間性を磨き、新しい社会を創るマグマが形成されてゆきます。
 個々の戦いの勝敗も大事ですが、新しい社会を創ることこそが、本命なのです。
 労働者階級が勝利するというのは、新しい社会、社会主義社会を実現する以外にはありえません。
 
 労働組合の役割は、個々の戦いに勝利することではありません。
 闘争の勝敗は、労働組合の団結力と経営者側との力関係によって決まってきます。団結力が強く、組織が大きければ小さな要求は通ります。
 しかし、政治課題などの国全体に関する要求は、国全体の労働者の力量が無ければ実現は不可能です。政治課題に勝利できる程の力が労働者側にあるのなら、資本主義社会は社会主義社会へと向かうはずです。



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