本作は、東京国際映画祭でグランプリを獲得し口コミで評判となった映画で1月17日から全国公開され、全編モノクロで映画として撮られています。
主人公は妻に先立たれたフランス文学者の元教授、渡辺儀助。代々続く日本家屋に住み毎日の食事を自らが調理して暮らす生活を淡々と描いていきます。そんな暮らしの中で登場する人々との関係が描かれ静かな日常の中突然現れる敵が描かれています。
先ずこの映画の特色として描かれるのが長塚演じる主人公の食卓シーン。日常の食卓は素朴でありながら手の込んだ調理で、元教え子が訪れると手の込んだフランス料理とワインが用意されます。その食事がモノクロながら食欲を注がれます。また、彼とかかわる女性たちの配役も亡き妻に黒沢あすか、元教え子の瀧内公美、行きつけのBARで出会う大学生に河合優美と三様の色気があり、老人の性を掻き立て、日常に狂おしさを与えていて飽きさせません。
映画の終盤で現れる敵には、日常の生活の中で関係する人々との接触がカギとなっているように感じました。また、原作と映画の設定は大きく異なっているように感じたのはモノクロの作中の中にある家電製品で、古い日本家屋と新旧の家電製品、そして敵を予告するパソコンなどです。しかしながら、むしろ近い過去の方がむしろ敵に対するリアリティを色濃くさせてのではないかと思っています。
男というものは、孤独を楽しむ人生を送っていても、どこか寂しさと欲への渇望があるものです。そこが男だなと思わせる作品でした。