先回に引き続き司法に対していろいろ思うところがあったところ、NHKのアンコールドキュメントを観ました。
内容は、99.9%の有罪率の日本の刑事裁判で20年間で14件の無罪を勝ち取った、弁護士・今村核さんを追ったドキュメントです。
司法において、裁判官と検事の関係は公務員という立場で言えば、検事側の物的証拠や証言に傾きやすく、その論拠をいかにして崩していくかは至難の業と言えます。
彼は、時間と労力を惜しまず、科学的な実証を積み上げながら相手側の論拠を崩していきます。番組では、二つに裁判が例に挙げられ、一例は、痴漢冤罪事件で、証拠の映像と痴漢被害者の証言を基に素人がみても明らかに無罪であるのに、裁判官の推測に基づく有罪判決を、さらなる詳細な証拠映像により高裁での逆転無罪を勝ち取ります。
もう一例では、すし店店主による放火事件で、検察側の店主の借金を元に自白を強要による放火事件となったものを、再現による科学的な実証を構築しながら、検察側の専門家の証言を覆し無罪を勝ち取っていきます。
疑わしきは罰せずの原則が通じない日本の司法の現状がつぶさに理解でき、今村弁護士の弱者に寄り添う姿に静かな感動を持ちました。
冤罪事件は、被害者と加害者のみが知りうる事実であり、一般的には被害者感情に立つがゆえに、必ずしも正義とみなされない側面があります。論拠を覆すだけの確かな証拠が必要です。さらに、今村弁護士のような執念と信念を持つ人が多く生まれることが大切だと感じました。