映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、是枝裕和監督の2016年作品「海よりもまだ深く」です。
ありがちな家族の在り様の中で、親子と夫婦、その息子が抱える思いを淡々と綴った作品です。阿部寛と樹木希林が親子で共演し、阿部の元妻役を真木よう子が演じてます。
15年前に新人賞を授賞するもその後、小説家といて自立できず探偵稼業で別れた妻に息子への養育費に苦心している阿部演じる良太が、お金の工面に母親の元を訪れます。直接的に切りだせない良太は、亡くなった父の形見の品やへそくり探し出そうとしますが、うまくいかず母親とたわいもない昔話でお茶を濁します。そんな中、月に一度の息子と面会をきっかけに、台風の近づく日に母親の住む団地で元妻と息子の家族で一夜を共にします。
描かれる日常には、これといった抑揚も波乱もなく、元夫婦や母親、姉などのすれ違う心模様。阿部と樹木の親子のたわいもない会話の中に男と女の感情の違いがセリフとして語られ気だるさの中にユーモアを含んで面白いです。
ラストでは、どこか似た者同士の亡き父が息子に遺したエピソードでしめられ、気恥ずかしい男の同士の心模様も、どこか自分と似たとこがあり、自分の映し鏡ような作品でした。どんな作品でも、人間ドラマを描かせたら是枝監督は天下一品だと思いました。