今回の映画レビューは、北野武監督作品の「首」です。
ここのところ忙しさにかまけて、映画レビューもできずにいました。と言うか映画館に行く時間もなかったのが事実ですが、たまたま仕事でのトラブルが円満解決したので帰りに映画でも観ようと賛否両論の「首」を観ることに。北野作品はヨーロッパでは無条件に高評価で意外と日本では賛否が分かれるところ。ただ個人的には好き嫌いの単純なところではないかと思っています。
今回の作品はアウトレイジシリーズの時代劇版のイメージかなと予測しながら鑑賞しましたが、ところが随所に時代劇に対するアンチテーゼ的な意味合いの強い作品でした。
物語の主題は明智光秀による謀反、本能寺の変前後を描いていますが、タイトルの首にあるように次々に首が飛びます。また歴史の闇の部分である武将同士の性愛を中心に描き戦国武将のヒーロー像を真っ向から否定しています。それは秀吉や尾張武将が使う尾張弁が信長だけに誇張されている部分も信長の傍若無人ぶり際立たせています。また、女性の登場がほとんどない点も特徴的です。
登場人物として面白かったのは元甲賀忍者の芸人として登場する木村祐一や忍者の郷の奇々怪々な棟梁多羅尾光源坊役でホーキング青山のなど芸人の生かし方が強く印象に残る演出でした。
北野ファンなら、ラストはらしい演出だと納得されたかと思いますが、僕が一番は信長の首の行方。ネタバレになるので控えますがひとつの説に監督らしい演出を残し、きれいごとでは済まない乱世をテーマに最後までぶれずに通したことはあっぱれでした。反面、戦国武将を敬愛し歴史ロマンに胸を打つ人々の反感を買うことは一目瞭然ではあります。