トム・ハーディ主演、ジョシュ・トランク監督による暗黒街の帝王アル・カポネの晩年を描いた映画「カポネ」を鑑賞。
散々なレビューが並ぶ最悪な作品かなと半ば期待薄で臨んだ本作。史上最高のマフィアのボス、アル・カポネの晩年を描いていて(とは言っても40歳で出所48歳で死亡)物語は、長い服役生活を終えてフロリダの大邸宅に戻るところから始まります。彼の体は梅毒に侵されて排泄もままならい状態でさらに痴ほうと悪夢にうなされる毎日で精神状態は不安定。妻の介護の中で家族や友人たちの介助の中で静かな生活を送っています。
FBIはカポネの隠し財産を探るべく、盗聴とスパイを送り込みます。しかし、財産の隠し場所はカポネの頭の中に。FBIや家族、友人も財産のありかを探り出そうと思案を重ねます。果たして彼は本当に狂ってしまいたのか、果たして財産は見つかるのか。映画の本質はそこにあるのか。不明のままに、トム・ハーディ演じるカポネの狂気がクローズアップされ、悪事を重ね栄華を極めた男の末路の醜態がこれでもかとばかりに晒されていく、まさに下衆の極み的雰囲気が醸し出されいています。
たぶん、辛辣なレビューも見たくないものを見せられた気分によるとところが多いのではと思いますが、ここまで徹底的に醜態を描き、狂気の沙汰を見せつけられると僕は、人間の性みたいなものを感じてむしろ作品に対しては好感を持ちました。
悪のヒーローは、誰もが、いつの時代も生き急ぐような潔良ささえも感じる死を期待するのではないかと思います。しかし、アル・カポネの晩年はそうではなかった。今まで描かれなかったのは悪のヒーローとしての存在感の強さゆえ、誰もが描かなかった悪の最後の姿をトランク監督が描いたところに価値があります。そんなカポネの人生にも一筋の光を示しています。ラストシーンはそのことを静かに語っています。