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65オヤジのスタイルブック

小磯良平展・稲沢市荻須記念美術館

休日の夕方に家からほど近い稲沢市にある荻須記念美術館に出かけました。当館は、稲沢出身の洋画家・荻須高徳の作品を常設している美術館です。

比較的小規模な美術館で、荻須高徳に所縁のある作家の特別展が年に一回開催されています。今回は、神戸出身の洋画家・小磯良平展を開催中です。

小磯良平は、荻須と東京美術学校の同級生で、同時期にフランスに渡り西洋絵画に触れています。二人の洋画家は技法の点では大きく異なります。荻須はパリの街並みを中心に西洋絵画の王道を歩んでいますが、小磯は日本で西洋絵画の基礎を根付かせながら、独自の画風を展開していきます。

今回の展覧会は、一般展示室で小磯作品を常設展示室には荻須の新収蔵品を展示していましたが、二人の画風を比較しながらその違いが鮮明にわかる展示となっています。

小磯作品は、神戸市立小磯記念館の収蔵品を中心に展示されています。神戸の記念館を訪れた方にはなじみのある代表作がずらりと並んでいますが、今回のポスターの表紙を飾った婦人像は、ふくやま美術館の作品で10号作品ながら、小磯良平の女性像のもつ清楚な気品が漂う秀作です。また、具象に徹した小磯が抽象画に挑戦した時期があり「かぼちゃのある静物」はその一端が覗かれる作品ながら、教え子たちの挑戦を称えながら自らは抽象を断念し、具象画に戻ったエピソードから、どこか具象の雰囲気を醸し出していて小磯の優しさを感じる作品でした。

今朝、前衛画家で作家としての著名な愛知出身の赤瀬川原平さんの訃報を聞きました。赤瀬川さんは自らの芸術運動とは別に近代絵画の意義をピカソの抽象画を境にしてこう述べられています。「ピカソを過ぎると、たしかに絵はだんだん素直ではなくなり、「描写」という鑑賞の入口はなくなって、自己主張ばかりが強く、理屈っぽくなってくる。目に快い順目〔じゅんめ〕の鑑賞ではなく、違和感の強い逆目〔さかめ〕の鑑賞に変ってくる。観客が被虐的な立場に立たされる、ということかもしれない。絵をゆっくり眺めて愛でるという関係からは、遠ざかってしまうのだ。」ひろしま美術館より。

小磯良平の作品は、その点で眺めて愛でるという関係において、心地よい絵画ではないかと思います。


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