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映画 ゴヤの名画と優しい泥棒

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本日の映画レビューは、名作ノッティングヒルの恋人の監督の遺作となる、事実に基づくヒューマンドラマ「ゴヤの名画と優しい泥棒」です。

職業柄、名画にまつわる作品はよく鑑賞しますが、今回の作品は1961年にイギリスで起こった名画盗難事件を描いたもので、ゴヤの作品を脇役にしたものです。

主人公は長年妻と連れ添い年金と妻のヘルパーの収入で生活しているケンプトン。年金生活者にとって唯一の娯楽であるテレビを視聴料が払えず苦心している。ある日、イギリスの英雄ウエリントン公爵を描いたゴヤの名画を身代金に年金生活者の視聴料にあてることを計画します。

この名画は、ナポレオンから2度救った英雄ウエリントン公爵を描いたもので、スペインも救ったことからゴヤが描いたものですが、そこは宮廷画家らしからぬゴヤの作品が反映されていて、公爵自身が気に入らずこの絵を手放し、周りまわって1億4千万で買い取りロンドンナショナルギャラリーにお披露目となります。その19日後に盗難事件がおき、当初は国際犯罪組織の犯行と思っていた当局も、ケンプトンの犯行声明により知ることとなります。

物語は、退役軍人でもあった正義感が強く、どんな人にも平等なケンプトンと彼を慕う息子、彼の性格に悩みながらも献身的に働く妻、そして17歳で事故死した長女と家を出た長男の人間模様と犯行の過程を中心に描かれていて、当時の労働者階級の抱える貧困が貧しくも明るく描かれています。

中盤では、ケンプトンの裁判の模様が描かれますが、彼のユーモアを交えて犯行の経緯が語られ次第に彼の魅力に市民が揺り動かされています。そして彼に下された判決が成熟したイギリスの民主主義を感じました。そして、終盤には新しい事実が語られ物語は更に感動のエンディングとなります。

夫婦を演じたのはイギリスの名優、ジム・ブロードベントとヘレン・ミレン。二人の名演があってこその作品だと強く感じるものでした。特にヘレン・ミレンの演技を知る人には驚きを隠せないと思います。ノッティングヒルの恋人の監督であるロジャー・ミッシェルは、この作品を取り終えた後に65歳で急逝され今回の作品が遺作となりました。監督の作品へのインタビューを観ると、この作品がいかに魅力的であることがわかります。

誰もが笑い、泣き、心揺さぶられる作品であることは間違いありません。今年絶対に観るべき作品と断言しておきます。偏屈で心優しい市井の男が起こした奇跡を体験してみてください。


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