65オヤジのスタイルブック

DVD・サウルの息子

映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回はカンヌ映画祭グランプリ作品、アカデミー賞外国映画賞を獲得した「サウルの息子」です。

 

今回の作品は、ハンガリー出身のネメシュ・ラースロ初監督作品です。テーマはホロコースト。ホロコーストを取り上げた作品は、数えきれないほどあり、僕も数多く観ていますが、今回の作品は初めての視点でした。

シンドラーのリストなどの過酷な状況下でユダヤ人に救いの手を伸ばした主人公にスポットをあてた作品が印象的な取り上げられることが多いのですが、今回の作品は、まったく異なる視点で描くことでホロコーストの歴史的な意義を観る者に問いかけている点です。

主人公のサウルは、強制収容所でゾンダーコマンドとして働くユダヤ系ハンガリー人。彼らの仕事は、ユダヤ人のはぎ取られた衣服から貴重品を探しだし、ガス室で処刑された死体処理や室内の清掃などを行うこと。そして彼らも数か月後には、同じ運命をたどります。

物語は、サウルがガス室で生き残りその後殺された息子?をユダヤ教の教えにのっとりラビを探しだし、埋葬しようとする二日間を描いています。

ナチスの目を盗み、収容所内をかけずり回りながら遺体を隠し、ラビを探しだす間にも絶え間なく続けられるユダヤ人の処刑。そして、証拠を一切残さないナチスドイツの周到なまでの悪行。サウルの中心にその背後で行われる行為が見え隠れする画面は、人間の尊厳を対比して表現されリアリティが増幅され、ホロコーストの恐怖を改めて感じます。

世界的に広がりつつあるナショナリズムの台頭の現在、人間としての尊厳を謳う意味でも、ホロコーストを描いた作品は、ますます重要性を帯びていると思います。今回のサウルの息子は、結論を結ぶ事無く、観る人に問いかける手法で胸に迫る逸作ではと思います。


ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「【映画・ドラマ・演劇】」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事