ノンフィクションをフィクションに昇華したサスペンス映画「メイ・ディセンバー」は二人の女優により更にメタモルフォーゼされた。
1990年代に実際にアメリカで起こったメイ・ディセンバー事件。日本でも36才の女性教師と13才の生徒が性犯罪事件としてスキャンダラスに報じられたが、その後、獄中出産と出所後に結婚し家庭を築いていた。今回の作品は、事件を基にフィクションされた原作を基にキャロルのトッド・ヘインズ監督に主演のナタリー・ポートマンが制作に加わりジュリアンムーアが妻役として映画化されたもの。
映画は、妻グレイシーと夫ジョンは、結婚20年後に家庭が舞台。二人を取り上げる映画が製作されることになり、妻役を演じることになったナタリー・ポートマン演じるエリザベスが周辺を取材し二人と関わることで起こる心理サスペンス。
実際の事件でも犯罪か純愛かで意見が分れたが、嫌がらせを受けながらも平穏な家庭を築いていたところに、演技への執念を燃やす女優により、夫婦の奥底に眠っていた疑念と不安が湧き出す様相が作品の醍醐味とも言え、ジュリアンムーアとチャールズ・メルトンの好演が光っていた。その意味でもナタリー・ポートマンの存在は決して前に出ることなく演じきっていたのではないか。
ある評論家は事件の当事者に対し配慮を欠いたと辛辣に述べているが、映画自体がモデルであってもフィクションを原作にしていること。また、当時メディアに頻繁に登場し、もはや公的な存在に近かったことなどを鑑みればその意見は当てはまらないのではと思う。他にも細部をこけ下す映画ユーチューバーもいたが、観る前に気持ちを萎えさせる行為の方が程度が低い。
自分の目で確かめてみて良かったと思える作品でした。