戦争しない国が好き! おのだのりこ
「虹立つや戦争しない国が好き」 冒頭でこの俳句が紹介されている。2014年度国民文化祭俳句大会で文部科学大臣賞を受賞した高校三年生女子の作品だ。心に響く作品だと思う。
この本は、1964年から2004年まで東京の女子学院中学校の国語の教師だった著者が、自分の担当する中学三年生に夏休みの課題として「身近な人たちの戦争体験聞き書き学習」を実施し、その中から集めた作品集である。戦争経験者の話を聴いた中学生が書いたものではあるが、語り口を一人称にし、戦争経験者が語ったような形にしているのが特徴である。
そのためだろうか、聞いた話であるはずなのに、当事者の体験談であるかのような迫力で読み手に迫ってくる気がした。
女子学院中学校と言えば、偏差値70を超える超優秀な生徒の集まる進学校である。とても中学三年生が書いたものとは思えないほど完成度の高い作品もあった。また、作品を書いた生徒たちは外交官になったり大学の教員になったりと活躍している。
中学生の父兄も次第に戦後生まれになっていくこれからの時代に、このような取り組みに代わるものが行われるとよいのだが。
少なくとも、私たちはこのような作品に触れ、戦争をしてはならない、という思いを新たにしていかなくてはならないと思う。