透明人間たちのひとりごと

太陽の戦士

 秋が、根付いてきたようです。

 10月といえば金木犀。

 好きな匂いではないのに、惹かれてしまう。

 でも今年は、あまり気にも留めないように、日々が過ぎていきます。




 風邪をひきました。


 気だるい。


 この気だるさは嫌いじゃない。


 懐かしい感じがするのは何故だろう。


 中学生の頃、休み時間はよく寝ていました。

 それも決まった場所で。

 窓際のロッカーの上。

 防災ズキンを枕にして寝る。

 ロッカーの木の匂いと、太陽の匂い。

 たまに、チョークの匂いがとんでくる。


 ぽかぽか。


 とても暖かく、まどろんでいる時間はとても心地よい。


 そんな情景が浮かぶ。


 あれから10年たった。


 10年。

 中学校の校舎はなくなったそうです。

 建て替え。

 耐震構造に問題があるとかで、建て替え。

 やれやれ。


 木の感触、下駄箱の錆びた匂い、渡り廊下に吹く風。

 思い出せば、ありありと浮かんでくるのに、

 それはもうない。

 頭の中にある、「もの」

「ある」世界と、「ない」世界。


 ぽかぽか。

 ぽかぽか。


 ぽかぽか。


 
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