見ないことはないほどに日本人はよく居眠りをします

これは外国人からすると、かなり奇異な姿に映るようで、
「欧米にはない独自の習慣」 だというのが
英ケンブリッジ大・東アジア研究所のブリギッテ・シテーガ
准教授(文化人類学)の論です。
シテーガさんは、
「欧州では電車内で居眠りする人、ましてや隣の人に寄り
かかって寝る人は見ません。 日本は安全だから、安心して
居眠りできるという面はあります」
ただ、治安の良さだけで居眠りを説明するのは不十分で
「社会的にも許容されている」と社会的ルールや文化的な
意味を考察する必要性を強調します。
周囲は見ず知らずの人ばかりの電車のなかでは、居眠り
は人間の存在を消す『社会的な魔法のマント』
で、酔っぱらった状態に似ているらしいのです。
お酒を飲んでいると、普段は許されない言動も無礼講
として許される」と説明、「居眠りをして目を閉じてしまえば、
その人は社会的に存在しなくなる。つまり、周囲の乗客との
衝突を避ける効果があるとシテーガさんは言います。
ただし、居眠り中の女性に要求されるのは、男性の視線
を意識しての行儀の良さで、「広げたままの脚や乱れた髪
は、だらしがないと厳しい目が向けられる」 としています
ブリギッテ・シテーガさんの著書
『世界が認めたニッポンの居眠り 通勤
電車のウトウトにも意味があった!』
… は、阪急コミュニケーションズ刊です。
さて、
居眠りは「魔法のマント」
【英研究者、日本人考察 存在消し、衝突避ける】
という静岡新聞8月25日付夕刊の見出しに、目が止まった
のは「魔法のマント」の文字に惹かれたからで、上述
した記事には多少のアレンジが加えられています。
文化的土壌の延長線上に「居眠り」があるかどうかも
、それが世界に認められたものなのかどうかも知るところで
はありませんが「魔法のマント」は言い得て妙です。
奇しくも、
それから、さらに一週間前の静岡新聞(8月18日付)朝刊
の『サイエンス(ブック)カフェ』 ~研究者の本棚~
の最終回で紹介されていたのが、竹内薫、荒野健彦 著の
『「透明人間」の作り方』だったのですが、
タイトルにギョッとしたのは言うまでもありません
ホンモノの
透明人間としては、「透明人間の作り方」
なんぞを簡単に伝授されては死活問題だからです

なにしろ、当ブログの沽券に関わる一大事ですし、
断じて見過ごすわけにはまいりません。
とは言ってみたものの確かにそれはそうなのですが …
この本はタイトルの通りに、物体の透明化技術について
書かれたものなのです。
驚くべきことに、ここでは、
子供の頃に誰もが夢に見た 「魔法のマント」
いわゆる 「透明マント」 が登場します
今、まさに、その夢が物理学者たちによって、現実の
ものにされようとしているというのです

2006年、米国の「サイエンス」誌に初めて透明化技術に
ついての論文が掲載され、世界中から注目を集めることに
なりました。
隠したい物体を「メタマテリアル」と呼ばれる物質
で覆うことで目の前から消し去ることができるのだそうで …
まさに「透明マント」そのものです
この「メタマテリアル」は、ミクロなコイルを無数に
配置したものであり、光 の進行方向を電磁気的に自在
に曲げる物質です。
光を迂回させ、物体の背後にある風景をそのまま正面に
届けることで、物体を透明にしてしまうという仕組みです。
その原理を理解するのは必ずしも容易ではないのですが
、幅広い層に興味を持ってもらうために関連する話題を多く
絡めながら浅く広く解説しているようなのです。
たとえば、
導入部では 「ハリー・ポッター」 シリーズなどの
SF映画における魔法の「透明マント」を紹介し、
続いては生物の擬態や戦闘機のステルス技術などに関係
する話が登場します。
また、SFに関連した現実社会での実際の研究として、
「タイムマシン」 や 「テレポーテーション」
についても少しページを割いています。
本書を通して、「子供の頃に夢見たSFの世界に今も夢中
になって取り組んでいる物理学者たちがいることを実感して
もらえるとうれしい」 と本の紹介者である静岡大学 理学部
物理学科の坂東一毅講師は語っていますが …
もしも、
「透明マント」が実用化されるとなると、なにやら
好からぬ


いずれにせよ、透明人間としての矜持が保てそう
になく誘惑の罠に嵌ってしまいそうで怖いのです

しかしながら、
実用化といっても、極々、限られた人間だけの門外不出
の“秘密の道具”でなければ意味がないのです。
皆が皆、透明になれるのでは、スリルもドキドキ感も
なく面白味をまったく感じないばかりか、当然の対策として
新たに「透明マント」返しを意図した“逆透視メガネ”
や“逆探知マスク”など「透明マント」の発見装置 が
開発されることでしょう
結局のところ、
“頭隠して尻隠さず”のタヌキ寝入り

同じで、透明になってのぞき見しているつもりがバレバレの
お見通し状態ではバカ丸出しなのです。
「そんときゃあ、空を使って飛んで逃げるしかにゃあらぁ」
って、何のこっちゃか意味不明なのも無理ありません。
空使い(魔法使い)がホウキに乗って一目散にトンずらを
決め込むというわけではないのです

静岡の方言で、
【空を使う】は、とぼけて知らないふりをする。 シカト
することで、「空使い」はそうした態度をとる人を指します。
【飛ぶ】は、駆ける。 疾走する。 つまり、走ることです。
まあ、それはそれとして …
空寝(そらね)で必死に聞き耳を立てていても、電車内
の「居眠り」と同様にその存在を透明にできるのならば、
タヌキ寝入り も立派な魔法の「透明マント」
なんですがねえ

