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最近は子育てを中心に時々建築話、旅行記や映画の事を綴っています。

マグニチュード・震度だけで測れない建築学的地震規模

2011-04-08 22:28:09 | ■建築話
昨晩またマグニチュード7規模の地震が発生しました。
東京での感覚では311の本震ほどの揺れは感じませんでしたが、ニュース・ラジオ等で情報収集する感じだと、震源に近い地域では本震より揺れを強く感じた人もいたようです。

それは、一度地震を受けて建物が弱くなったという要因ももしかしたらあるかもしれませんが、実際の揺れはマグニチュードや震度といった指標だけでは測りきれないからだと思います。

縦揺れ、横揺れといった言葉があるように同じ震度、マグニチュードでも全く同じ地震というものはありません。
私も専門家ではありませんが、簡単に解説すると・・・
地震の揺れ方は波形で表され、周波数・速度応答スペクトルといった指標で解析されます。
実物大実験などで耐震強度を実験する時には「阪神淡路大震災の時の波形」で行うといった形で、揺れ方を設定し行うんですね。

先日、手元に届いた建築専門誌によると・・・
今回の東日本大震災の”地震”による建物被害は阪神淡路地震より少ないと想定されています。

それは、木造住宅が被害を受けやすい周期(1~2秒)の波形が先の震災の1/2~1/5程度しかなかった事が挙げられています。
そして、超高層に影響を与える可能性の高い長周期(6~10秒)も1944年の東南海地震の1/2~1/3程度だったようです。

ですから、今回の地震で建物被害が少なかったから今の基準で充分だという事ではなく、今回はたまたま建物被害のおき難い周波数の地震だったという認識を持たなければいけないようです。

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ユーチューブ等で震災当時の映像を掲載している方がいて、それを見ていると高層マンションはかなり揺れていたようですね。
戸建住宅の揺れ方とは大きく違いました。
今回の地震は高層階の方のほうが揺れを大きく感じたようですが、これがまた地震の周期によっては中間階のほうが大きく揺れる場合があり、高層階だから一概に危険というわけでもないのが難しいところです。

同じ地震でも建物の構造で揺れ方が変る。
コレは建築界においては一般的な考えだと思うのですが、実際建物を設計する際には建築基準法などの基準に従って設計するので、その前提となる地震と異なる震災が来た時にはやはり想定外なんですよね・・・

「想定外」という言葉を安易に使うことは許されませんが、想定のレベルをどう定めるか?これほど難しいことはありません。
ですから、私も国の定めた基準に従う事はもちろんですが、安全性を増す為にも施工不良やミスがないように監理(チェック)する事が私の役割かなと思っています。

地震対策。
コストとデザイン、安全性のバランスをいかにうまくとるか本当に難しいんです。。。
目に見えない安全性という性能にいかにコストを掛けられるか?

考えを止めてしまったら最期。
建築家たるもの常に探求しなければなりませんね。

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最期に建物の固有周期について詳しく触れた文献を見つけたので紹介しておきます。
興味がある方は是非ご覧下さい。
→大林組技術研究所のレポート(強震動予測で対象となる周期範囲)へ


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2 Comments

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Unknown (がるばんそ)
2011-04-09 00:00:23
被災地を回ってきましたが、建物への地震直接の被害は、瓦の重みで屋根に穴が開いたり、外壁に亀裂が入ったり、ガラスが割れるといったようなものでした。
なので、AKATUKIさんが言うように今回の地震での建物への被害は幸いなことにあまりなかったように感じます。
しかし、津波の被害は本当にひどいもので、建物の基礎ごと流されているような場所も多々ありました。
そのような地区にあっても、本当に少し条件が違うと、瓦礫のような地区でも、10-20軒くらいの集落が残っている場所もありました。
想定外という言葉を今回よく聴きますが、地学者や天文学者は100年や200年など一瞬というように考えています。
願わくば建築に携わる人も、想定というものを考える一番ひどい状況を想定したものにしていっていただけると、ありがたいと思います。
長文申し訳ありません
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おかえりなさい (akatuki)
2011-04-09 23:41:20
>かるばんそさん

ボランティアご苦労様です。
感想等は今度じっくり聞かせてくださいね。

想定外についてですが・・・
非常に難しい問題で、建築の場合は大震災の度に厳格化されて今日の建物があるわけですが・・・

やはり経済性と天秤にかけた建物を建てざるを得ないんですね。
土地を買う場合も地盤の悪い地域は良い地域に比べて安く、例えば私の住む荒川区は地盤が悪い地域がほとんどで、一番悪い想定をすると戸建住宅は建ててはいけない事になってしまいます。
また、200年に一度の大雨の際は3m水に浸かる事になっているんです。
だからといって土地を手放して他に家を建てようと思うと、建築費に充てる資金が足りなくなってしまう・・・

もちろん、予算等の範囲で最大限の努力をするのですが、予算の枠を取り払い無尽蔵にお金を掛けていたづらに耐震性をあげるわけにもいかないのです。

だからといって、安全性をないがしろにする事はいけませんが、阪神淡路の際なども新しい基準で建てた家はほとんど崩壊(損傷はしていると思う)していないんですね。
そのことを前提に、どこかで点を打たなければいけないのも確かなんです。

家の損傷はやむを得ない。建物の倒壊を免れ、火災等の際に安全な場所に避難出来うる強度を保つ事が設計の目標とされているんです。

それから先は個人が何所まで保険をかけるかという事です。
私の場合は建築基準法(100年に一度の大地震・震度6~4)の1.25倍まで耐え得る耐震性能以上を基本に設計させていただいています。

※個人建築を前提に話を書きましたが、公共建築の場合は前提が異なると思います・・・
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