スパルタカス 1960
監督 スタンリー・キューブリック
名作。
緊張感の連続で3時間があっという間の映画でした。
綺麗な構成で描かれていて、映画の開始早々、反抗したために足にかじりついた主人公スパルタカスは石にはりつけられ餓死させられそうになり手足の自由を奪われるのですが、最後は同じように苦痛と餓死を待つだけの磔の刑にされます。
磔の刑にされたスパルタカスは、意識朦朧としている中、死んだと思っていた妻と再会します。妻は苦しみながら死を待つだけのスパルタカスに涙を流し、足にすがり言葉をつむぎます。
また敵でも味方でもない奴隷商人も同様に、最初は手足を拘束されたスパルタカスを購入することで結果的にスパルタカスを自由にするのですが、最後はスパルタカスの妻と子どもを逃がすことでスパルタカスを結果的に救いました。
美しい構成です。
さらにスパルタカスは最初は孤独なのですが、だんだんと周囲に人が増え、たくさんの人に囲まれます。そして死によってだんだんと周囲の人が減り、最後は孤独になります。
うーん。
素晴らしいです。
それだけではありません。
政治家たちの対比も実に面白かったです。女性に囲まれハーレムを形成し、醜く太り、ときに犯罪者ともやり取りをする政治家は最後はスパルタカスの妻に大金を渡して逃がし、選び抜いた美しいナイフで潔く自害します。
一方で女性を寄せ付けず、共にいようとするのは男性奴隷1人だけのクラッススは奴隷商人の剣闘士たちに大金を積んで死闘させはしましたが、基本的に潔癖で、腐敗を正そうとする反面、スパルタカスに怯え、正規軍の力を借りてスパルタカスを殺します。さらに描写は2人だけで共にお風呂に入る程度でしたが、ゲイであるように匂わせ、美しい男性奴隷への不合意の性強要を印象付けられます。
この矛盾と対比が同じ映画の中で行われていて、3時間が濃密なものとなっています。
もちろん俳優たちの魂の入った演技は最高で、まるで本物のように感じられるほどでした。画面を観るとハッとそちらに目を奪われてしまう主役たちの魅力も非常に良かったです。昔の言葉だとスター性というヤツですね。
面白かったです。
恐らく影響力も凄まじく、去年見た映画だけでも序盤は【ブラックアダム】はそっくりそのまま参考にしていますし、後半のシーンでは【ナポレオン】が似た画角での撮影をしていました。
本当にあっという間の3時間で、濃密で、未だに消化しきれない傑作です。
心の底からオススメしたい映画ですね。