歯科技工管理学研究

歯科技工管理学研究ブログ
歯科技工士・岩澤 毅

続き5

2007年03月29日 | ごまめ・Dental Today
22 - 衆 - 社会労働・文教委員会連… - 1号
昭和30年07月29日
昭和三十年七月二十九日(金曜日)
    午前九時十九分開議
本日の会議に付した案件
 歯科技工法案(内閣提出第一三五号)(参議院 送付)
○中村委員長 これより社会労働委員会・文教委員会連合審査会を開会いたします。
 先例により委員長の職務は私が行います。
 歯科技工法案を議題といたします。まず趣旨の説明を聴取することといたします。紅露政府委員。
○紅露政府委員 ただいま議題となりました歯科技工法案につきまして、提案の理由とその要旨を御説明申し上げます。
 わが国の歯科医療の現況を見ますと、国民の大多数が歯科疾患に冒されているといっても過言ではない状態でありまして、そのうち、義歯、充てん、矯正に属する治療技術も必要とする患者はおびただしい数に上っているのであります。わが国の診療に従事している歯科医師の数は、人口約三千百名に一人の割合でありまして、この程度では国民の歯科医療の需要を満たすに不十分であり、また今後の歯科医師の需給の見通し毛、将来の人口増加を考慮する場合必ずしも十分でないのであります。しかるに近年歯科医療に対する国民の需要かますます高まって参りつつあります関係上、歯科医療中の歯科技工につき、歯科医師のほか、いわゆる歯科技工士に委託する場合が次第に多くなり、これ等歯科技工士と称する人々が役割が漸次高まって参りますとともに、その数が相当多きに上って参ったのであります。
 しかるに、これら歯科技工士につきましては、現在何ら法的規制が加えられておらず、またこれらの者の中で正規の職業教育を経た者はきわめて少数で、大部分は徒弟見習いとして習熟した者であります。従って、その技術内容も千差万別であり、国民の歯科医療を確保する上は、はなはだ欠ける点が多かったのであります。このような状態にかんがみ、歯科技工士の資格を定めて、その資質の向上をはかるとともに、歯科技工の業務が適正に運用されるように規律し、歯科医師の業務を適正に補足させることによって、歯科医療の普及と向上に寄与しようとするのが、この法案を提案いたしました理由であります。
 次に、その要旨を御説明申し上げます。まず第一に、歯科技工士の免許は、都道府県知事の行う試験に合格したものに対して、都道府県知事が与えることといたしております。
 第二に、歯科医師または歯科技工士でなければ、業として歯科技工を行なってはならないことといたしたいのであります。
 第三は、歯科医師の指示書によらなければ、業として歯科技工を行なってはならないことといたしました。
 第四に、歯科技工を行う場所である歯科技工所につきまして、開設の届出義務、管理者の設置義務等必要な規制をするとともに、これに対して行政庁の一定の監督権を定めております。
 以上がこの法案を提案しました理由及びそのおもな要旨でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみかに御可決あらんことをお願いいたします。
○中村委員長 以上で説明は終りました。
 質疑の通告がありますので、順次これを許します。並木芳雄君。
○並木委員 ただいま提案理由の説明をお聞きいたしました。この審議は、専門である社会労働委員の皆さんがおやりになって下さいますから、私どもはそれにおまかせするのでございますが、文教委員の一人として、どうしても見のがすことのできない修正が参議院でなされたのに気がついたのであります。ですから、私はその点、これでよいかということを政府に聞いておきたい。
 政府の提案に対して、参議院で修正がなされた個所は第十四条でございます。受験資格のところで「試験は、次の各号の一に該当する者でなければ、受けることができない」といって、その第一にあげてあるのが「文部大臣の指定した歯科技工士学校を卒業した者」とあるにかかわらず、参議院から送付されてきましたこの歯科技工法案を見ますと、これが抹殺されておる。そして次の二の厚生大臣の指定した歯科技工士養成所を卒業した者」が第一に繰り上っております。以下の点は問題ないように思うのですが、要するに受験資格の中に、文部大臣の指定した学校と厚生大臣の指定した養成所と二種類あることを認めることができます。いずれもその受験資格を獲得することが、政府の原案であったわけです。ところが、修正されたものでは、文部大臣の指定した学校というものが、厚生大臣の指定した養成所または学校というふうに直ってもおりませんから、所管争いで文部大臣から厚生大臣に移ったというものでもない。どっちの所管が正しいかということは別問題として、それならばまだ恕すべき点がある。これは私の了解ですから、もし間違っていたら御訂正願いますが、ただこの法案を読んだだけでは、文部大臣の指定することのできる学校が抹殺されてしまって、宙に浮いてしまう。幾らお盆のシーズンだからといっても、幽霊になって宙に浮いてしまったのでは成仏できないだろう、こういうことが文部委員の一人としてぴんときたのです。ですから、私の質問はどっちかというと、文部大臣の方になさるべきものかもしれません。しかし同じ政府ですし、私は与党ですし、それでいいかという質問ですが、それでいいのですか。
○高田(浩)政府委員 まず私から事務的な点を御説明申し上げたいと思います。結論から先に申し上げますれば、事務的な支障はない。と申しますのは、歯科技工に関します学校にしても、あるいは養成所にしても、いわゆる養成施設を卒業した者というのが資格要件になっております。これに対して、厚生大臣が指定をすればそれでいいわけでございまして、それが学校教育法上の学校になっておりましょうとおりますまいと、厚生大臣が指定をすればそれで受験資格が生ずる、そういうことになります。ただ従来、衛生関係の立法につきましては、厚生省と文部省との所管に関しまして、学校教育法第一条の学校につきましては文部大臣が指定をするし、その他の各種学校については厚生大臣が指定をするという建前にずっといたしておりましたので、従ってこの法案も、政府としては今お話のように文部大臣、厚生大臣の二本建で出してきたわけでございます。しかしこれにつきましては、例外がなきにしもあらずでありまして、たとえば栄養士法等につきましては、厚生大臣一本で処理しておるのでございます。そういうわけで、原則的には文部大臣、厚生大臣と二本建でやってきておりますが、例外的にはそういう例がある。それから実際の取扱いといたしましては、先ほど申し上げましたように、厚生大臣が指定すればそれでよろしいということになるわけであります。
○並木委員 今のでいいでしょうか。その片一方は学校です、片一方は厚生大臣の指定した歯科技工士養成所を卒業した者というのです。具体的に言った方がいいと思うのですけれども、具体的にどういう学校がありますか。
○高田(浩)政府委員 現在は結局歯科技工士というものが法律上成規に認められた職でございませんので、従って、これに関する養成機関というものが、法律上の効果を発生するには至っておりませんが、ただ現実に事実として実在しております養成施設は、東京医科歯科大学歯学部附属の歯科技工士学校、それから財団法人愛世会愛歯技工士養成所、それから日本大学歯学部附属の技工士養成所、この三つと承知しております。
○並木委員 あとの二つは養成所ですから、それは第二の厚生大臣の指定に該当するのだろうと思います。問題は第一です。その学校は、文部省で管轄しているのじゃないですか。次官でも局長でもけっこうですが、伺いたい。
○稲田政府委員 ただいまの第一の国立大学に付置しております学校は、文部省で監督しております。私どもの方の事務的な見解からいたしますれば、やはり政府原案におきまして学校と養成所と最初から書き分けておりますように、養成所は養成所であり、学校は学校である。学校が削られました場合に、学校を養成所として取り扱いますことは、この法律としては、われわれとしては不都合だと考えております。
○並木委員 そこで、私与党として弱ってしまいます。政府の中の考えが違っている。つまり、一が削られて、その学校が――具体的に言うと、今の東京の医科歯科大学の附属の学校がオートマティカリーに第二の中に入ってくるならば、事務的には不都合を生じない、これが医務局次長の答弁です。それがいいか悪いか別として、事務的には支障を生じないと言うが、今の稲田局長の答弁ですと、第一の学校は第二の養成所のカテゴリーに入らないという答弁です。私も法律をすなおに読むと、入らないように考える。何らかの措置を講じなければ、入らないのじゃないですか。それならば最初から二つに分けたことは、法の体系からいって非常におかしいと思うのです。それならば、初めから文部大臣または厚生大臣が指定する養成所または学校というふうに一本にしてしまえば、どっちが指定したってかまわないというふうになるのですけれども、分けたところに学校と養成所の性質の違い並びに所管の違い、それぞれの特色があって生まれた沿革、存在理由、そういうものの違いが、私ははっきり出てきていると思うのです。さて今の答弁ですと、お聞きの通り同じ政府の中で見解が違ってきているのです。だから私心配しているのですが、これをどういうふうに解決していったらいいものでしょうか。政務次官も二人おられるし、どうですか。やはり私の心配は杞憂でなかったということなんです。私は追及するわけではないのです。与党として御注意下さいということで、両次官の前へ問題を提起したわけですから、一つ至急調整していただけませんか。今、私はここで両次官から食い違う答弁を聞いて快哉を叫ぶ立場ではありません。野党からどういう質問が出るかわかりませんが、場合によっては、文部省でこういう学校を作っておいて、その学校を卒業した者が受験資格を得られないような、そんな不見識なことがあるかというような、きついおしかりが出るかもしれません。これだけ発言して、次官から何かお聞きできれば幸いだと思います。
○寺本政府委員 私も紅露さんも、政府委員ではありますが、ともに参議院議員でありまして、参議院でそのような修正が行われたことを非常に遺憾に存じております。参議院で修正が行われます際には、文部省としては、政府としての意見を申し述べる機会が全くございませんでした。従って、ただいま並木委員から御指摘のような矛盾のある修正ができ上ったものと考えます。私どもといたしましては、これは政府提出の法律案でありまして、政府提出の法律案で、ただいま並木委員が御指摘の通りの原案になっておったものですから、意見の食い違いがなかったのでございまして、たとい修正があっても、その意見が変るはずはなかろうと考えます。従いまして、政府としては意見の食い違いがあるはずはないので、学校は学校、養成所は養成所で、学校が削られたから養成所が拡張解釈されるということは、政府部内の解釈としては通らぬだろう、かように考えます。従いまして、どうぞ一つそういう矛盾のございませんように、食い違いがございませんように、衆議院の方で御修正下さるようお願い申し上げます。
○高田(浩)政府委員 厚生省といたしましては、歯科技工士養成所の中に、すべての養成機関が入るという解釈で参るつもりにいたしております。また法案審議の過程においても、一応はそういうような意見もあったのでございますが、従来の取扱いの例によりまして、政府提案のようにいたした次第でございます。単に一本ということになりますれば、そういうふうな解釈でございます。
○稲田政府委員 文部省、厚生省と申しますと、多少所管争いのようにお聞き取りいただきますと、非常にわれわれは遺憾でありますけれども、もう一つは、やはり法体系、教育体系の問題でございまして、先ほど医務局次長も申されましたように、他の七つの例が、やはり学校は文部大臣が指定する、養成所は厚生大臣が指定するということになっております。もちろん、両省の間におきましては緊密に連絡をいたしまして、遺憾のない取扱いをいたしております。他の法体系との関連において、あるいはまた教育体系というような関連におきましても、やはり政府原案がわれわれといたしましては、事務処理上最も望ましい形であると信じております。
○中村委員長 辻原弘市君。
○辻原委員 今、主として修正された事務的取扱いについての意見の開陳が、政府部門の方からあったわけでありますが、その前に、単に歯科技工士の問題だけではなしに、われわれ文教委員としては、教育体系の根本的な問題として、実は相当重視しているわけです。というのは、現在、文部大臣の指定する云々というのに該当する学校が、一つであろうが、二つであろうが、三つであろうが、そのこと自体が問題ではない。それよりも、一体学校と名のつくものの所管を厚生省がやり得るのかどうか、また現在学校という名がついているそれぞれの教育機関でありながら、その性格を法律によって一挙に変えてしまおうというようなことが、行政上果して妥当であるのかどうか、こういう根本的問題が横たわっていると思います。これは先般文教委員会と運輸委員会の間に起りました商船大学と運輸省所管の養成機関との間にも、そういう論争が繰り返されたのであります。しかし、それは学校と養成機関との問題でありましたので、一応学校はあくまでも文部省所管、養成機関は運輸省所管であるという建前を、直ちにどうこうするということの問題にまでは触れていかなかった。しかし、養成機関といえども、いかなる専門技術の教育であろうとも、教育機関であるならば、これはやはり本来教育を主管する文部省か所管すべきであるという本質論まで生まれてくるわけであります。そこで、さらにこの問題は、少くとも養成所でなくして、各種学校ではあるけれども、学校という名のついている教育機関を厚生大臣が指定をするとか、あるいは法律によってその学校である性格を養成所に変えていくとかいうふうなことは、一体どういうことであるのか。もしそういうことが行われるならば、これは農林省所管による養成所あるいは教育機関、あるいは運輸省所管のそれ、随所にあるわけでありまして、そういうものは、専門の分野だからというので、教育機関をそれぞれ各省の所管に帰せなければならぬという本質的な問題、少くともわれわれとしては、政府として教育機関に対する取扱いをどうするかという根本的な方針が示されなければ、このことは軽々に承認するわけにはいかない。
 そこで、私はこの機会に、提案者である参議院の紅露先生にお伺いをいたしたいのでありますが、一体参議院で修正をやりなさったときに、本質的にそういう問題に触れて、単にこの問題だけでなくして、今後起り得る問題であっても、これは主として農林技術に対する養成機関だから、農林省が所管をしてよろしいというふうなことにまで発展してもやむを得ないのだ、あるいは先ほど私が申し上げましたように、運輸省が所管をしている海員技術養成機関、こういうものも、やはり本来それぞれの専門技術を主として取り扱っている省がその所管に当るのが正しいのだというふうな考え方で、他の問題にまで波及するようなことがあっても、それはやむを得ないとお考えなさって提案されたのか、この点をお伺いしたいのと、いま一つは、どうしてもこう修正しなければならなかった一番の理由というものを、われわれはまだお伺いしていないのであります。一体、学校は文部大臣に指定させ、養成所は厚生大臣に指定させ、両々相待ってこの技工士の養成に当る、受験資格を与えていくということのどこに不都合があるのか、この点を明らかにしていただきたい。
○紅露政府委員 これは、申し上げるまでもなく、政府原案ではございませんので、政府原案といたしましては、ただいま事務当局から話されましたような考えもあったということを聞きますけれども、それはあくまでも私どもの知らないことでございました。そこで政府原案によって私どもは参議院で御審議を願っておりまして、その結果として修正がなされたわけでございます。それが今問題になっている一元化という点になって参ったわけでございます。そこで、これで差しつかえはないかという委員会のお尋ねでございますが、事務当局に尋ねましても、また私どもも考えまするのに、今後の問題はしばらくおきまして、この技工士の養成という問題は、歴史がすこぶる新しいわけでございます。御承知と存じますが、二十六年、七年、八年というふうに、この三つの養成機関も設置されたようなわけで、まことにその歴史が新しい、また確固とした行き方が打ち出されておらないときだと思うのでございます。それで、これが一元化されたらどんな効能があるかというお尋ねでございますが、これは技工士は、何と申しても歯科医師に付属したものでございます。この点、今までは全くこれを何らの規制もなく、やりっぱなしてあったわけでございまして、そこからいろいろな弊害が生まれます関係で、今度は身分法を制定しよう、こういうことになったのでございますが、歯科医師とのバランスというものも考えなければならない問題でございます。厚生省でこれを所管いたしますならば、そのバランスは適正に保たれていくであろう、こういうふうな考えが実際面として出てきたわけでございます。
 そこで、それならば、これを実施して差しつかえないか、こういう参議院の修正に対してのお尋ねでございましたが、実際問題として、運営に差しつかえはございません、こうお答えをしたわけでございまして、これは十分御検討を願ってけっこうでございます。決して政府部内においての対立もございません。
 それから最後の、今後こうした問題が各所に出てきた場合に、それぞれみな今のような考え方で発展させるかというお尋ねでございますが、そこまでは私どもも今考えておりません。この問題は修正でもございますし、実際面に当てはめました場合に、厚生省としては、一元化することの効果は確かにある、こういうふうに考える次第でございまして、その他につきまして問題が残りますれば、これは検討をさせていただくよりほかはございません。
○辻原委員 これは将来、学校の所管問題について当然いろいろ波及すると思う。この考え方を推し進めていくならば、波及することは事実であるが、そこまではお考えになっていないということであります。そこまで考えていただかなくては因る。これはテスト・ケースであります。こういうことは初めてのことであります。従って、この点については、私は提案者にもお願いをするし、そこに並んでおられる政府部内の方々が、学校いわゆる教育体系というものをどう取り扱っていくかという根太方針をお定めにならぬ限りは、われおれは承認するわけには参りません。
 同時に、なぜ文部大臣の指定する各種学校に受験資格を与えるのが悪いのか、こういう私の問いに対して、運営は困りませんという御答弁は、当っていないと思う。どういうやり方をやられても、養成機関というものを設けていけば、運営には困らぬでしょう、また一元化すれば、運営はやりやすいでしょう。そういう運営のやりやすいとか、やりにくいとかいう問題の前に、せっかく法律まで作ってこの資格向上をはかっている、しかもそれに直接つながるものは歯科医師であります、歯科技術であります。だから歯科技術を向上させ、歯科衛生というものを向上させていくということが究極の目的であって、単に歯科技工士というものの養成機関だけの運営がたやすく行われるとか、行われないということは、第二義的の問題であります。その観点に立って考えて、その場合に、どうしても歯科技術の向上、あるいは技工士法まで作って資格要件を確固たるものにするという段階に、文部大臣の指定する各種学校に入れたら、そのことの究極の目標というものに到達されないという考え方においての御説明がないのであります。これは私見でありますけれども、少くとも歯科大学は文部大臣の管轄下にあります。そうしてどんどんその管轄によって、いわゆる学校教育として養成していく。国家試験を受けて社会に出るとするならば、ほかの海員養成機関を見ても、その他の専門技術の養成機関を見ても、学校は文部大臣が所管をしている。それに付随するいろいろな専門技術の養成は、その近くで有無相通じて行われるとき、初めて――人間は感情でありますから、感情が対立すれば別であります。しかし感情を抜き去った場合には、そういう両々相待った運営がきわめて能率を上げ、経済的に行って、費用の節減等においても十分効果を発揮できるということは、論を待たないのであります。しかし、往々にしてそういったいろいろ人間の感情がわだかまったり、あるいは自分の分野を争いがちになってみたりするから、できるだけ分けて、けんかする犬は遠ざけておこうという安易な考え方になるのであります。しかし、それよりも、むしろ、むずかしいけれども、歯科大学というものがあって、そこで歯科技術を養成して、その近辺においてこの歯科に付随する技工士を養成していくということは、本質的に考えて、何ら差しつかえないものであります、しかも現在行われている、しかも附置の技工士学校を、各種学校といえども学校であるとするならば、それを文部大臣が指定するということにおいて、現状を認めるのに何の支障があるかということをわれわれは承わりたい。その点の了解が得られないならば、ただそういうことの方が都合がよかろうという答弁では、大義名分が立ちません。同時に、将来に対して、これは一つの学校体系に対する大きな方向を示唆するものであって、われわれはそういうような影響が随所に出てきた場合に、責任の負いようがありません、これが農林省関係に、運輸省関係に、あるいはまた厚生省関係に出たということでは、教育体系は必ず乱れるのであって、それをもよしとする政府の方に統一した見解があるとするならば、私は了承するにやぶさかではありません。しかし、常にわれわれはそれを心配しておるものであります。いわゆる教育体系というものをどの程度まで確立していくか、専門分野にわたるものの各省にゆだねる点につきましても、それをどの程度にするか、その分野というものをわれわれは考え、心配しつつ、教育行政の立法化に当っているわけであります。たまたま私の方の所管の法律ではありませんけれども、こういう問題が派生いたしましたので、この際私としては、政府部内の意見の統一をやっていただきたいということがまず第一番、それの基本的な方針について伺いたい。
 次に、これは先ほどの事務当局の説明に、重ねてお尋ねするのでありますが、運営上支障はございませんという厚生省のお答えであります。しかし、法律をすなおにながめてみますと、これは修正されたそのままの条文でもってすれば、第二号の厚生大臣の指定するというのは、明らかに養成所と書かれてあります。各種学校が養成所でないことは明らかでありますが、その点事務的には差しつかえないということは、何かそれに手を加えるのか。その各種学校というものを養成所に切りかえるという考え方であるか。それはすでに事務的に文部省との間に話し合いがついていて、その各種学校を厚生省の養成所に切りかえるという折衝が進んだ段階において、あなたは事務的に支障がないと言われておるのか。それとも、厚生省だけのお考えで、あなたは事務的に差しつかえないと言われておるのか、そこの点を明確にしないと、そんなことを一つ一つの省に、お前の方は差しつかえないか、ええ、それでけっこうでございます、それならよかろうというようなことでは、政府というものは、厚生省だけではないのですから、関係する各省が一々了承して、初めて政府としては差しつかえないという、いわゆる内閣の意見が開陳せられるわけであって、厚生省だけの意見、厚生省事務当局だけの意見を聞いて、それで法律案の審議の上においてけっこうだということでは、いかに私が現状としてやむを得ないものと認めたからといって、そういうような程度の政府部内の答弁でもって、この法律の運用におきまして万全である、支障はないといって了承することは、あまりにも軽率ではないかと私自身思うのでありまして、一体その点の事務的折衝はどう進んでおるのか。各種学校を養成所に切りかえるのか、あるいはさらに法律につけ加えて、この第一号を削った上に、現在あるところの各種学校を養成所と読みかえる規定を作るのか、その点について事務的に明らかにしていただきたい。
○高田(浩)政府委員 誤解のないように、最初に法律の解釈について申し上げたいと思います。先ほど来申し上げておりますように、看護婦等の養成につきましては、学校については文部大臣が指定をする、養成所については厚生大臣が指定をする、そういうふうになっておりますが、この学校とは何を言うか、養成所とは何を言うかということの解釈でございます。従来、学校教育法の第一条で、学校とは小学校、中学校、高等学校云々と書いてございますが、これがすなわち学校である。それから第八十三条のいわゆる各種学校、これはすなわち養成所に入るのだ、そういうふうな解釈のもとに来ております。ただ実際の問題としまして、たとえば東京大学でありますとか、京都大学でありますとか、そういうところに附置をいたしております看護婦の養成所、これは形式的には、その看護婦の養成機関それ自体は、第一条にいう学校ではなくて、第八十三条に相当すべきものでありましても、その本体がいわゆる大学等でございますので、便宜の取扱いにして、その分は文部大臣の方におまかせをして指定をしていただく、そういうような実際の取扱いにいたしておるのでありまして、従って、今お話しのように、各種学校までも全部文部大臣ということにはなっていないのでございます。この点をまず御了承をいただきたいと思います。
 それから、先ほど申し上げました医科歯科大学に附置の技工士学校その他につきましては、私どもの承知しております範囲におきましては、これはそれ自体としては、学校教育法第一条のいわゆる学校ではなしに、むしろ八十三条相当のものであるというふうに理解をしております。
 なおつけ加えて申しますが、この修正についての提案をなされました参議院の方がおいでになっておりませんので、私の方からその趣旨を申し上げるべき筋合いのものではないと思いますが、審議の過程において、私どもが承知しております範囲において申し上げますれば、技工士というのは、職掌柄歯科医師との関係が非常にデリケートな関係がございまして、従って、将来これが歯科医師まがいのことをするようなことになりましては、医療体系上非常な混乱を来たす。これについては、やはり歯科医師と歯科技工士との数のバランスというものが最も大切なことであって、これに最も神経質な配慮を払わなければならない。それについては、二本建よりも一本建の方が、より適切に行われて心配の種がなくなるのではないか、そういうような趣旨のように私どもは拝聴いたしました。この点をつけ加えて申し上げておきます。
○稲田政府委員 文部省の責任におきまして学校教育法の文部省の解釈、見解を申し上げざるを得ないと思います。文部省におきましては、各種学校は学校であります。なればこそ、厚生省におきます診療エックス線技師法、歯科衛生士法、保健婦助産婦看護婦法等におきましても、学校という名前を用いて各種学校を学校扱いしておられると考えるのであります。
 なお、この法律自身におきましても、第十四条の第四号が修正漏れになっておりまして、外国における学校という字が残っておるのであります。もし修正の御趣意が、あらゆる歯科技工士を養成する施設を養成所とおっしゃる御趣意なれば、日本国が認めるる学校のみをなぜ学校としてお残しになったのか、私どもはその了解に苦しむのであります。
○辻原委員 そんなことは、文部省に伺うまでもなく、厚生省のような答弁であるとすれば、各種学校というものは、学校教育法からはずさなければならないのであります。学校と明らかに名がついて、厚生省が所管しておるところの養成所とは、明らかに区別せられておるのであります。そういうことであるならば、たとえば各種学校の中に含まれておるあらゆる、たとえば洋裁の養成所であるとかいろいろなもののうち、各種学校の都道府県知事の認定を受けざるものも、受けておるものも、全く同然であるというようなことになってしまって、各種学校と規定した法律の意味が、何らなくなってしまうのであります。現在各種学校と指定せられることに、なぜ各種の養成所が狂奔しておるかというと、それは単なる養成所ではなくて、明らかに学校教育法で定められてある学校という、その資格を取得したいがために、各都道府県知事に認定を要請するのであります。従って各種学校が養成所であるなどという法律解釈は、どこでお立てになったか知らないが、そういうことでは、私どもとしては了承するわけにいきません。これは文部省の見解を聞くまでもなく、法制局の見解を聞くまでもありません。しかし、それぞれ御都合のいいように解釈される点は、これは所管省としてはやむを得ない点もあるかと思いますが、そういう無理なやり方をやらずに、私はすみやかに政府部内の意見を統一すべきであると思う。
 もう一つは、もし厚生省の言われるごとく、各種学校をも養成所と読みかえ、養成所と解釈してよろしいという法律解釈が成り立っているならば、あえて次官会議等において、この政府原案を作るときに、第一号に文部大臣の指定した云々いうようなことを入れる必要はないのであります。このことを入れた経緯を、私はいろいろ聞いてみましたけれども、結局、現存する技工士養成学校が漏れてはいかぬという趣旨において、文部大臣云々の規定が加わったものである。もしあなたの言う解釈であるならば、そういうものを加えたところで、現存する学校はないということになる。そういうような矛盾がここに起って参るのでありまして、そういうような、あなたの言う通りの解釈であるとするならば、文部省の方も、政府の方としても、一項を加えていくようなばかなことをなぜやったかということを、私は原案についても質問をしなければなりません。現存する学校がないのに、文部省が指定すべき対象がないのに、何でこの一項に文部大臣をうたったかという疑問が生じてくるのであります。従って、その解釈はこれ以上申し上げませんけれども、二つの点に問題があるということを指摘いたします。真正面から政府の見解は対立している。法律の常識的な解釈をもってしても、厚生省のお話では了解が行きがたい。この点はそういうような無理なやり方をなさらず、一つ事務当局は事務当局でよく折衝をされて、その取扱いをどうするか、また内閣としては、教育体系について、この種のことが行われてもいいのかどうかについての基本方針を定めていただきたいと私は考えるのであります。
 そこで、最後に文部政務次官に一つその点をはっきりしておいていただきたいのでありますが、これはあなたの所管で、教育体系が将来かようなことで乱れていく一つの突破口にもなるので、この際そういうことでよろしいかどうか。これは内閣としてのはっきりした意思統一をまずはかってもらいたいと思うが、その点について、早急に大臣その他に申し出られまして、閣議において取り扱われる意思があるかどうか。
 同時に、提案者である先生にもお伺いしたいのでありますが、明らかに見解が対立しておる。事務的にも、基本的な方針においても、政府部内の意見の一致が見られないのであります。私は提案者からも、そのようにして将来歯科衛生というものを向上させていけるのか、これの方がベターであるという点についての御説明を、残念ながら承わることができなかった。従って、その点について、これ以上申し上げませんが、今私が指摘いたしました二点について、早急に事務当局、政府部内の見解を一致させて、運営に支障なからしめるような配慮を、あなたは今お持ちになっているかどうかを明らかにしていただきたい。お二人にその点を伺って、私の質問はこれで終ります。
○寺本政府委員 学校教育体系の問題につきましては、辻原委員の言われる通りの考えを持っております。それが将来乱れてはいかぬと思いますから、事は大きな問題ではないように思いますが、大臣とも相談の上で、衆議院の各位にお願いして、原案に戻していただきたいということをお願い申し上げておるわけであります。
○赤城委員 今の厚生省の方の話の中に、将来歯科技工士が歯科医師と混乱するような傾向になるおそれがあるから、一本にした方がよい、こういうような御意見のようでありましたが、その御意見のよしあしは別として、そういうようなことは、ほかの独自の法律できめていくべきで、今言うように、学校として指定されておるものについて、学生も生徒もおるのに、この法律によってその受験資格をなくしていくというような、横道から攻めていって、学校教育法に認めておる学校を認めないというような形でいくという行き方というものは、筋違いではないか。将来技工士と歯科医師との混淆をおそれるということならば、そういうようなことをおそれないような法律とか何かによって、まっすぐに正道からこれを直していくという態度で行くべきである。それを、各種学校としてある文部大臣の指定した歯科技工士学校の卒業者に、受験資格を認めないというような横からの行き方というものは、私どもは納得できないのでありますが、その点について伺いたい。


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