歯科技工管理学研究

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歯科技工士・岩澤 毅

◆10.8入れ歯感謝デーと入れ歯のトレーサビリティー

2005年10月03日 | 朝日新聞・週刊金曜日
◆10.8入れ歯感謝デーと入れ歯のトレーサビリティー  

 本年は、入れ歯差し歯を作る歯科技工士に関する歯科技工士法が制定され50周年を迎えた。これを記念して、日本歯科技工士会は、10月8日を「人々の健康快活に役立ち、健やかな長寿につながる入れ歯や差し歯に感謝する」趣旨で「入れ歯感謝デー」と定めた。その入れ歯の生産流通を「食」との対比で考えてみたい。

「食の安心・安全」に対する消費者の要望を踏まえた、生産者と流通業者そして行政の努力が、牛肉・野菜などに続きトレーサビリティー(生産履歴の追跡可能なシステム)の普及を促す動きが続いています。農水省は生産から販売までの情報を消費者に伝えるトレーサビリティーの仕組みを2007年度までに約70品目の生鮮食料品や加工食品に普及させる目標を掲げ、民間への支援事業を年内に始めています。相次ぐ牛肉などの偽装表示問題などで「食の安全」に対する消費者の関心が高まっていることに対応したものです。

 その「食」を体内に取り込む入り口である歯(入れ歯や差し歯)に関しては、実際の生産者である歯科技工士に関する情報、使用される材料とその加工法、生鮮食品には存在する流通価格などに関する情報が患者に公開されること無く、今だ閉ざされた状態です。入れ歯や差し歯に関する患者・消費者が必要とする情報を公開し、信頼性を高め患者・消費者の選択の目安とする制度化された方法が必要です。

 一部のスーパーの食品売り場店頭やファーストフード店にある生産者に関する情報と同等の生産者情報すら歯科診療所内に掲示されていることは極めて稀です。

 歯科医療は、昨年来の日歯連事件などに現れた患者・国民不在の政治力への傾斜などの不正な働きかけの実態の露見により、患者・国民からの不信と医療者側の自信喪失の中にあります。

 人が自分の口から食物を体内に取り入れること、噛むこと・咀嚼が全身の健康の維持に大きな役割を果たすことが、日本学術会議などにより解明されつつあります。

 多くの国民がより良い入れ歯を必要とする高齢化社会にありながら、歯科医療に内在する情報の閉鎖性とシステムの不全が、歯科医療が本来果たすべき国民の歯とお口の健康の維持の役割を支える歯科医師と歯科技工士の共同作業・チーム医療の推進に弊害と停滞を生んでいます。

 患者中心の歯科医療へと転換すべき時代を迎え、歯科医療関係者の個々の技術・能力と進歩する歯科医療技術を学ぶための研修受講状況などを含めた情報公開による信頼性の向上が必要です。

 それらの情報への患者・消費者のアクセスの保障が、歯科医療への国民の信頼を再構築し、患者中心の時代の歯科医療の基盤を整備するものと思われます。それらの成果の上に新たな歯科医療技術者のチーム医療が、推進されることが求められていると思います。

2005.10.03記
10.05不採用通知

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