日本歯科新聞 2021年9月28日
歯科技工業に対する規制改革を考える
ワンマンラボの「終活」へ共同開設の可能性
岩澤 毅 (歯科技工士)
高齢者が安心安全に過ごせる社会を目指し活動する一般社団法人終活カウンセラー協会では、「終活」を「人生の終焉を考えることを通じて、自分を見つめ、今をより良く自分らしく生きる活動」と定義しています。
歯科技工士の高齢化、50代、60代の比重の大きさが様々話題になっています。加齢に伴う特有の課題を見据えて、高齢の歯科技工士の経済問題・歯科技工所のソフトランディングの道を考えておくことも必要でしょう。歯科補綴装置の供給体制の根幹にも触れる課題です。進歩する歯科技工技術を考えれば、設備投資などはエンドレスに続けなければいけないわけですが、残り期間を考えれば一定の方向転換が必要になります。
いつか来る歯科技工所の閉鎖には、体力も気力も必要です。歯科技工所には、家族にとっては謎だらけの薬品や器具機材があります。その処理法も資産価値も処理法も不明なものが残されては、家族にとっては大変困った話であり、想像以上に困難を伴うことになります。また、取引先の歯科医医院に迷惑をかけないことも、優先して考えなければならない。
家族に迷惑をかけないためにも、自宅に併設した歯科技工所の設備を撤去する。あるいは、大家さんとの関係で、契約を解除する等々が必要になってきます。しかし、体力も気力もあるうちは生きがいのためにも、経済的にも仕事を続けたいものです。ここに矛盾が起きてしまうわけです。
そこで今回閣議決定した、「経済財政運営と改革の基本方針2021」等の歯科技工に関する部分の「複数の歯科技工士等による歯科技工所の共同開設」「歯科技工に使用する機器を複数の歯科技工所が共同」が有効に生かされる可能性を感じます。
歯科技工業にたいする規制改革によりワンマンラボの歯科技工士が抱える「終活」問題に新たな選択肢をつくり、歯科技工士の高齢期の暮らしをより充実したものに出来る可能性が広がることを期待したいと思います。