ふと、静かな気持ちになりたい時。
ただ、ひたすら、鳥の声しか聞こえない静謐を求める時。
あなたはどこに行きますか?
私はここに行きます。
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ラス・ドゥエニャス修道院。
Convento de las Dueñas
もう勝手にヒーリングスポット使いにしてますがw
サラマンカの中心、マヨール広場より徒歩10分程にある、
市内で今や唯一現役である修道院。
この中にある、こじんまりとした回廊をゆっくりと散策する。
それだけをしに、時々散歩途中に寄ったりするのです。
● 黙想の場所、五角形の回廊
中に入ると、意外と小さいことがわかる。
勧められてまずは二階に上がると、
下には綺麗に整えられた庭園が広がり、
目線を上げると大聖堂がそびえる様子が見える。
よく眺めると、中庭と回廊が五角形になっているのがわかる。
このラス・ドゥエニャス修道院の回廊は、その美しさ、
そして無二の五角形の形から、「最も美しいスペインの回廊14選」
にも選ばれた。
密色の柱が日を吸って柔らかく輝き、
柱頭に彫られたグロテスクなケダモノたちが
生き生きと蘇る。
朝の早い時間にはほぼ観光客はおらず、ただひたすら
鳥の囀りが聞こえるのみ。
もともとこの回廊(スペイン語ではClaustro、英語ではCloister)
という場所は、もちろん各部屋につながる便宜上のものであったが、
一方で修行する者らの黙想の場であったともいわれる。
それぞれの所用を一旦忘れ、
回廊で黙想、ゆっくりと回り歩くことで神との対話としたのかと。
●老後問題対策から生まれた修道院
この場所がドミニコ会の修道院として始まったのは
15世紀の初頭。
もとは大きなお屋敷だったのを、女主人が教会側に
提供する形で始まったといわれる。
そのお屋敷時代をわずかにのこすのが、
ムデハル様式の扉枠など。
時代を経て粉々になっていたタイル扉枠を、
現代の修復師らの手で蘇らせていた。
当初の目的は、格式ある家のご婦人らが老いて
未亡人になった際、病と孤独に朽ち果てぬよう
保護する養老院であったとか
中世の老後問題は、死に直結する深刻な問題で、
こういう修道院があちこちに現れ始めたのが
この時代だったという。
現在でもこの場所に住む方は高齢の修道女ら。
毎日を祈祷に捧げるかたわら、菓子製造を
活動の一環として、長く続けている。
制作の様子
昔からの変わらないレシピで
作られたクッキーらはどこか懐かしい素朴な味。
入口に販売所があるので、
訪れた方はぜひどうぞ。
●黒い聖女「チカバ」
そしてこの修道院に行かれることがあるなら、
2階にある小さな部屋を覗いてほしい。
そこにはアフリカから奴隷として連れてこられ、
紆余曲折の厳しい道のりを経て、ドミニコ会の
修道女となり、ここサラマンカでその宗教生活を
終えた「黒い聖女」ことテレサ・チカバの紹介がある。
その人生において壮絶な人種差別、いじめを、
受けながらも、決してめげず、神に仕え、病人の
世話に明け暮れたとのこと。
そのドラマチックな人生に興味を引かれる。
1700年代の古い話とはいえ、外国人として
この地に長く住んできた者として、共感のような
ものを感じる。
古い墓はスペイン独立戦争の際に破壊されてないが、
唯一残った小さな彼女の靴が展示されている。
頼りない程小さな古靴を見て、
自分が彼女だったら…と想像を巡らして
心が痛くなるのだが。
●なぜか、ほんのちょっとだけレアな理由
さて、この修道院の話をすると、実は
「見逃してたわ~」という方が結構多い。
おそらく入口が地味なこと、
開館時間が短いことからかと思われる。
(午前10:30から12:45 /午後 16:30から19:15/日曜祭日休
入場料2ユーロ *2021現在)
観光客専用の施設ではないので、
内部に住まわれる修道女らの活動リズムに合わせているかと。
もう閉館時間が迫る頃。
出口へ向かう私たちの背後で、鐘の音と共に
とある扉がすーっと音もなく開き、
それはそれはちいさなお婆様シスターが現れ、
ホトホトと歩いて、もう一つの扉に吸い込まれていった。
その小さな背中を眺めながら、
自分とは違う時間の流れを感じる。
夕暮れの回廊。
いいもんです。
ぜひ。