…どうしたものか。
ついこないだまでは、いつものバルで、いつもの友達と
バカな話で盛り上がってた。
夕方の公園のブランコには、わらわらと子供が
ぶら下がっていて、その歓声が響き渡っていた。
ベンチにはつつましく座って日向ぼっこを楽しむご老人。
市場では、弾けた魚やの奥さんの呼び込みが気持ちよかった。
それが…
新型コロナウィルス感染の爆発的な拡がりにより、
スペイン政府は国家非常事態宣言を発令、
2020年の3月16日より不要不急の外出を禁じる緊急体制を
敷くことになる。
「イタリアとか中国大変だよね~」
なんて他人事のように喋っていたその数日後、地獄が始まった。
人っ子一人いないマヨール広場…
散歩やスポーツも含む、不要不急の外出は禁止。
すべての経済活動は停止、商店やバルレストランは閉店。
一方、あっという間に感染者が爆発的に増加し、
医療破綻が始まるまで数日とかからなかった。
(緊急体制が開始してから3週間程過ぎ、
感染者は14万超え、死亡者は1万3千人を超える)
催事場は緊急病院に、
スケートリンクは遺体安置場に、
一斉に感染者の出た各地の老人ホームには、軍隊が出動
して救出作業が行われる。
あれよあれよという間に、一切の日常の細々した風景が
すべてかき消され、メディアはウィルスの話題一色
の報道となり…
まったく息をつく間もなく、気がつくと
ため息混じりで毎日をウツウツと過ごす自宅軟禁の日々が
始まってしまったのだ。
●夜8時、バルコニーにて
老若男女年齢問わず、自宅待機。
必要最低限の外出以外、すべて禁止。
…せめて外の空気を吸って、陽の光に少しでも
あたろうと、バルコニーに出て午後を過ごす人が
多くなる。
ふと向かい側もみると、やはり同じ考えたらしき
人たちがちらほら…
やがてお互いに声をかけたり、手を振ったり
するようになった。その頃から…
「どうせなら、夜8時に皆でこのバルコニーから
拍手をして、今、頑張って働いてくれてる人達に
感謝の意を示してはどうか?」
というアイデアが広まった。
これが全国区で広まり、今はスペイン全土にて
ずっと行われている、デイリーイベントとなっている。
毎日19時58分ちょうど。
ぽつぽつと各自がベランダに出てきて、以下のように
拍手が始まる。(ビデオ撮影は、とある日のサラマンカ市内)
病院で働いてる医療関係な方達。
公共交通機関をたゆまず動かしてくれている人達。
道路清掃やゴミ収集の方達。
運送業、スーパーや食品店の方達。
警察や軍隊の方達。
すべての方達への感謝を込めて、さわさわと拍手が鳴り響く…
これが2020年の初春の夕方の風物詩となった。
●「RESISTIRÉ / 耐え抜くぞ!」
さて、この拍手セレモニーの後、
必ずやといってよい程、誰かがスピーカーを持ち出し、
DÚO DINAMICO(デュオ・ディナミコ)の代表曲、RESISTIRÉを全員で合唱、
というのが、これまたお決まりの盛り上がりミニイベントとなっている。
(↓ビデオはコルドバの例)
このDÚO DINAMICOは最近のグループというより、
かなり昭和の懐かしグループジャンルの方々。
(写真ビフォーアフターでごめんw)
1958年結成、主に60~70年代にポップなリズムと分り易い歌詞
のヒットソングを連発した2人だ。
その後一旦解散した後に、86年再結成、その2年後に出したアルバムに
挿入されていた曲がこのRESISTIRÉ(レシスティレ)だった。
もちろんこのアルバム自体もヒットしたが、この曲の知名度をその後
アップさせたのは、実はあのペドロ・アルモドバル監督の90年の初期作品
「Átameアタメ~私を縛って」のワンシーンに使われていたことからだった。
(個人的には初めてみたスペイン映画のうちの1つのお気に入り。
アントニオ・バンデラスが当時ピチピチでときめきました…)
以下簡単に歌詞の一部を訳してみる。(超訳です)
八方塞がりになって
宵闇に纏われ苦しめられる時。
静寂に怯え、
立っていることさえ苦しく、
蘇るいまいましい記憶で、
圧し潰されそうになっても。
耐え抜いてみせる。
すべてを前に、凛と立ち向かい、
この世が例え嵐を吹き付けようと、
折れ曲がろうとも、必ず立ち続ける
イグサのように。
耐え抜いてみせる。生き抜くために。
どんな衝撃にも耐え、決して諦めない。
夢が粉々に砕け散ったとしても、
耐え抜いてみせる、耐え抜いてみせるんだ。
Cuando duerma con la soledad
Cuando se me cierren las salidas
Y la noche no me deje en paz
Cuando cueste mantenerme en pie
Cuando se rebelen los recuerdos
Y me pongan contra la pared
Me volveré de hierro para endurecer la piel
Y aunque los vientos de la vida soplen fuerte
Soy como el junco que se dobla
Pero siempre sigue en pie
Soportaré los golpes y jamás me rendiré
Y aunque los sueños se me rompan en pedazos
Resistiré, resistiré
●2020のスペイン応援国歌
歌われていたとてもポピュラーな曲。
ラテンなヘラヘライメージとは違う、
非常に体育会系な歌詞からくる…この堅牢さはとっても
スペイン…と個人的に感じる。
さてこの歌はこの“コロナに負けるな”応援歌として
この数週間大いに歌われ、DÚO DINAMICO
の両氏は著作権をマドリッド自治体に譲渡したとのこと。
現在実に様々なバージョンがネットに上がった。
一番話題を呼んだのが、スペインの様々な
著名ミュージシャンによって合作で
皆さん自宅待機態勢であるものの、
普段集められない様々なジャンルの方々の合作で面白い。
さて明日も。
そして明後日も。
この応援歌は毎日、同じ時間に全国で歌いあげられる。
小さい子供たちが、ベランダの柵にしがみついて
大声で歌っているのをみると、
と祈る気持ちになるのは、私だけではないはずだ。
参考資料-https://www.elmundo.es/madrid/2020/04/01/5e84b38cfc6c83043b8b465a.html
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