時には目食耳視も悪くない。

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360度パノラマ回転のユーモア

2017年04月07日 | 映画
 最近、観て衝撃だったのは《えびボクサー(原題:Crust)》(2002、イギリス)です。
 何が衝撃って、こういう映画を作ってしまう人たちがいるってところ。

 世界が平和だと思える貴重な瞬間です。

 この《えびボクサー》、イギリス映画なのですが、面白いのかつまらないのか微妙に分かりませんでした。
 ヒットしたらしいのですが、全くそんな要素は感じられなかったです。(ごめんなさい)

 主人公は本当に巨大なエビ(本当はシャコなんですって)です。
 多分、ハリボテなんだろうけど、結構リアルでグロテスクな仕上がりになっています。技術スタッフさんたちの努力が窺えます。
 そして、このエビ(シャコ?)が繰り出すパンチの威力は相当なものという設定になっています。
 あれ?でも、実際のエビ(シャコ?)って前に進めるの?後ろ向きに飛んで逃げるイメージがあるけど?
 それに、シャコって泥の中にいなかったっけ?巣穴に筆を突っ込んで獲るんですよね?
 そもそも、海の生き物が陸上で生活(生存)できるものなの?

 はいはい。分かっています。そういう細かい所にこだわっちゃいけないんですよね?
 内容よりも、作品の製作過程を想像する方が笑えます。(だいの大人が何してるの…失笑)

 それにしても、イギリスのユーモアってひねりにひねりすぎていて、結局は360度回転して元通りな感じがして、日本人の私にはピンと来ないことがしばしばです。
 イギリスの人たちには抱腹絶倒でも、あまり英語に造詣が深くない私にしてみれば、理解できなさすぎて「今の笑うところだったの?」と野暮な質問をしてしまいそうになります。
 いやはや、イギリス人の思考回路は摩訶不思議。

 とはいえ、逆に、日本の笑いだって外国では通用しなかったりするのかもしれませんし。(ピコ太郎さんの世界的ヒットはいまだに謎ですが…)
 日本でも、関東と関西では笑いのツボが微妙に違ったりしますし、国が違えば笑いのツボギャップがさらに大きくなるのかもしれませんね。

 さて、映画に話を戻しますと、この映画は偶然獲れた巨大なエビ(シャコ?)を見世物にして、お金儲けをしようという崖っぷち中年男性と、彼と行動を共にする破局寸前の若いカップル(こちらもある意味崖っぷち)が中心になってお話が展開します。
 巨大エビ(シャコ?)を売り出すスポンサーを探しに、企業やテレビ局にあの手この手の売り込みをしたり、巨大エビ(シャコ?)を飼育するために餌を確保したり、全体的にはドタバタ喜劇仕立てになっています。
 (ちょっとシュールな笑いなので、笑えない人は笑えないかも…)

 巨大なエビ(シャコ?)という有り得ない設定を通して描かれる、崖っぷちおじさんのぶち当たる現実や、若いカップルを取り巻く人間模様が、イギリス社会の現状を皮肉っているととれないこともないです。
 とにかく、この映画そのものがイギリス流の皮肉のユーモアであることは間違いないです。

 昨今話題になっている欧州連合(EU)からの離脱宣言も、皮肉のユーモアとしてニヒルに笑い飛ばせるといかにもイギリスらしくて格好いいのですが、現実は映画のようにはうまく行きませんね。



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