水蒸気に放射線を当てると水素が生成される事は明らかだ。
放射性物質を収めていたケース内で水素が発生して職員が怪我をする事故が有ったが、その事例からも分かる。
従って、チェルノブイリの事故も直接原因は水素が発生して爆発した為だ。
福島第一原発の建屋が水素爆発したのは、保管していた使用済核燃料プールの水が何らかの理由で低下し、冷却停止で建屋に充満していた水蒸気に放射線が当たって水素が発生したのが原因だ。
これが最も単純であり、真っ先に考えられる水素爆発の原因である。
にも拘わらず事故調査委員会は、水素が発生した場所を原子炉(圧力容器)内としているのは、ベントが事故の直接原因であるからだ。
国民は事故調査委員会にもっと不信感を持たなければならない。
何故ベントを行ったのか?
それは、チェルノブイリの事故と同じ事が起きる可能性を危惧した為と思われる。しかし、実際にそうなるかは別問題だ。従って、ベントしなかった場合はどうなっていたのかを検証しなくてはならない。
検証結果によっては、ベント操作が重大な誤りであり、除染にかかる費用負担と他の原発を停止させた、その損失の全てが、ベント操作を決断し、指示した人物に請求される事になる。
では具体的にベントをしないとどうなったのかを考えてみたいと思う。
先ず第一に、圧力容器内の水位が重要である。放射線は液体の水では完全に遮へいされ水素も生成されない。
この水は運転中の最大出力時であっても燃料棒が露出しないだけの量が計算されて封入されている。常に放射性物質に接触しているので、外部に漏れない様に厳重に封印される。
燃料棒が露出してしまうと水素が発生する事は設計者も分かっているので、十分な水量が確保されている筈だ。
次に重要なのが、圧力容器と建屋内に張り巡らされている、発電機や復水器、冷却ポンプに繋がっている配管類の耐圧性だ。
この耐圧性が重要なのは、中に流れる高圧の水蒸気が外に漏れると圧力容器内の水位に重大な影響が有る為である。
この配管類の耐圧性は、ある一定の値より高くする必要が無い。その基準となるのが、「水の臨界」である。
密閉容器内で水を際限なく加熱し続けると蒸発して内圧が高まり続けるが、飽和状態になると温度も圧力も上がらなくなる。
この温度と圧力は十分に設計が可能な範囲なので、設計に取り込まれていると考える事が出来る。(実際、設計図を見れば分かる事だ。)
地震発生直後、緊急事態となり発電停止対応としてスクラムが行われた為、核分裂反応は停止に向い、崩壊熱が徐々に低下して水蒸気の圧力が低下して行く。
発電タービンもそのまま回しているので、復水器で腹水すると圧力容器内の水位は上昇に向かう筈だ。
しかし、ここで津波が襲来。
津波によって、復水器(ラジエーター)に冷却用の海水(冷却水)を送るポンプと腹水した水を原子炉に戻すポンプが海水に浸かってしまう。更に、地震によって外部電源が消失し、非常用発電機や非常用バッテリーも海水に浸かって全電源が消失する。
復水器に送る冷却用の海水が来ないので、水蒸気が水に戻りにくい状態となり、腹水された水を送るポンプも停止しているので、原子炉に水が戻って来ない状態となる。
この状態が設計に完全に考慮されていなかったのかと言うとそうではない。
非常用復水器というのが備わっている。
一部の識者のコメントでは、この非常用復水器は作動していて、ある一定の期間、水位を保っていたらしい。この辺は曖昧で関係者から口封じが行われている可能性が有る。(NHKの再現映像では復水器は操作された後に戻したので機能していなかった事になっているが信用に値しない)
もし、非常用復水器が作動していて、常用復水器のポンプを修理する時間が有ったとしたら過失となる。
東電は常用復水器のポンプを修復しようとする筈だ。それ以外に重大事故を防ぐ方法は無いからだ。もし、その要請を聞き入れない国や政府の態度が有ったとしたら完全な過失となる。
津波襲来後にポンプの修復を試みたのかどうかは不明だ。検証が求められる。
ポンプの修復と発電機の調達には、自衛隊の大型ヘリコプターが必要となる。
時間的余裕が無いのと、一般道が地震で不通だからだ。
それでも、東京都が消防隊員を送り込んで、後に海外からも称賛されたので、復水器の作動中にポンプと発電機の予備を準備して福島第一原発に運び込み、交換修理する事が出来た可能性は有ると考えられる。
しかし、残念でならないのが使用済核燃料プールから発生した水素によって建屋が爆発してしまった事だ。プールの水位まで見ている余裕が無かったのであろう。
点検で入った時には、放射線量が既に上昇していて、使用済核燃料がその時には露出していたのは明らかだ。地震でプールにクラックが入り水位が急激に低下した可能性もある。
建屋が爆発してしまったので、修復作業がより困難になった。東電もこの時に修復を諦めた可能性が有る。作業員の安全が確保出来ない為だ。
そうやって考えると、使用済核燃料プールの設計に問題が有ったと言える。水漏れが起きて水位が低下していたとしたら、放射線量の上昇の原因にもなるので、完全な設計ミスだ。
しかし、それでも東電が諦めずにベントを拒否して修復を試みた場合について考える必要が有る。何しろ、ベントした事が環境汚染の直接的原因だからだ。
しかも、菅政権はベント(放射性物質の拡散)を深夜帯にアナウンスせずに秘密裏に行った。
だから一時的に外出禁止になっていたのだ。(この事から菅政権が放射性物質の拡散を甘く見積もっていた事が分かる。拡散後に国民が騒ぎ出したので、大袈裟な態度に打って出たのだ)
例えベントしないで放置したとしても、「水の臨界」を考慮した設計である為、水蒸気の圧力や燃料棒の予熱による原子炉の破損は永久に起きない。(NHKのCGは大嘘。あれはベント後の状態)
しかし、完全に臨界状態になると、水は液体と水蒸気の中間の性質となり、水位の概念は無くなる。つまり、見かけ上、水位は低下し続けてゼロになる。燃料棒より水位が低下すると水素が発生するので、チェルノブイリの様になる可能性は有ったと、考えざるを得ない。
なので結論としては、腹水が停止した状態でベントせずに放置し続けて、修復作業をするのは、原子炉の水素爆発のリスクが有り「危険であった」と言える。
従って、建屋の水素爆発後もベントせずに修復作業をするのは不可能に近く、ベントが不適切あったとは言えない事になる。
しかし、それでも事故調査で明らかにするべきなのに明らかになっていない重大要素と疑惑が存在する。菅政権は、原発を全停止させ、反原発運動を指揮したが、それらが適切な行為であったのか検証する必要がある。
①非常用復水器の作動中にポンプと発電機を復旧出来れば大事故に至らずに済んだ。なので、非常用復水器の動作時間の検証と、結果に拘わらず復水器の復旧の努力をしたのかしなかったのかの確認。(東電の重大な要望を政府が聞き入れなかった疑い)
②建屋の水素爆発が、重大事故を回避する為の復旧を妨げた。地震発生時に使用済核燃料プールの破損が起きて水位が低下していなかったかを検証し、施工ミスや設計ミスが無かったかの確認と水素発生原因の確認と修正。(国が施工ミスや水素発生原因を隠ぺいしている疑い)
③ベントすると多少に拘わらず放射性物質が住民の頭上に降り注ぐので、その危険性をアナウンスする必要が有った。それをしないで秘密裏に行ったのは住民不安を煽る原因となった。ベント操作をアナウンスせずに行う事を決断した責任の所在の確認。(政府がベント操作を要請していながら住民に周知しなかった疑い。自殺者を増やした誘因の可能性)
④NHKに共産党、社民党、民主党の党員が在籍し、菅政権のプロパガンダに協力した可能性。(脱原発報道を繰り返し行い、世論調査でも回答者に忖度させて、世論を脱原発へ誘導し、事故調査を妨害した疑い)
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