◇4話 アザラシまんじゅう商品企画
日本の大手和菓子メーカーで新商品の開発会議が行われていた。
開発担当の中堅男性社員がいた。
アイデアはどれも垢抜けず、ダメ出しばかり食らっていた。
今日もどの企画も通らず頭をかかえた。
男性社員は仕事を終えると家族の元へ帰宅した。
「ただいま!」
と元気な声で玄関ドアを開けた。
男性社員は仕事の気分を家庭に持ち込まないと決めていた。
小学生の娘に声をかける。
「今日の学校はどうだった?」
娘は父親の質問には答えずに質問で返してきた。
「アザラシまんじゅう、すごく美味しかったよ!お父さんの会社のおまんじゅうだよね?」
すると母親が出てきて
「この子、学校から帰ってきたらテーブルの上に置いてあったアザラシまんじゅうを食べたっていうの。美味しかったから、また食べたいっていうの。でも、そんなおまんじゅうは用意してないのよ。」
「食べたもの!お父さんの会社の試作品とかじゃなくて?」
と娘がいう。
「え?!アザラシまんじゅう?どんなおまんじゅうだった?」
と父親が聞くと
「このくらいの大きさで。。。」
と手のひらを見せて
「上用饅頭みたいな大きさで、真っ白で、真ん丸のかわいいアザラシの形で、中の餡は小豆のこし餡なんだけど、どこかクリーミーな味わいだったよ!とにかく美味しかったの!また食べたい!食べたい!食べたーい!」
父親は娘の話を聞きながら胸の高鳴りを感じた。
「作るよ!また食べれるよ!」
男性社員は答えると目が輝くのだった。
この胸の高鳴りを感じるのは、男性社員だけではなかった。
女の子のお腹の中で消化されているアザラシまんじゅうも一緒だった。
お腹で消化されたアザラシまんじゅうは、あくる朝には女の子の体内から排泄され、トイレから下水処理場へ流された。
下水処理場の浄化槽をいくつも渡って、水の一部になったアザラシまんじゅうは川に流され海に流れ着いた。
そして海水の一部となって水蒸気になると雲になり、雨となってやがて地球上に降り注いだ。
動物に食べられたすべてのアザラシまんじゅう達もみんな消化され、排泄されると土の栄養になって地球に浸透していった。