あぽまに@らんだむ

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天秤を揺らす者(SQ5)

2018年02月05日 | 世界樹の迷宮5関連










これはSQ5のマイギルドの「東雲千尋(しののめちひろ)」に関連するSSSです。
興味のある方は「きっと君を護るから(SQ5)」をお読み頂ければ少しは分かるかと思います。
マイギルドに関してはメンバー紹介がありますので、宜しければご覧下さい。
大丈夫な方はお手数ですが、下へスクロールしてご覧下さい。↓↓↓↓↓








































<天秤を揺らす者>



調停者(シェトリヒタル)と彼は言った。



調停者とは、天秤を揺らす者を排除する仕事。
天秤を揺らす者とは安寧を乱す者。
つまりギルドにとって都合が悪いと査定された者を抹殺すると言う訳だ。
リズベットは気怠そうに水色の長い髪を揺らしながら、勧められた椅子の背凭れに腕を乗せるだけにして立っていた。
リズベットはピアニーとギルド、ヴァランシェルドにリーパーとして勧誘された後、暫くして目の前の男、ギルドマスター補佐のシェラザードに秘密裏に呼び出された。
詰まり、ギルドマスターであるヴィクターは関与していない仕事なのだろう。
彼は調停者の説明をすると暫く言葉を発しようとしなかった。
魔術を得意とするウォーロックらしく口許だけが薄っすら弧を描いているだけで感情が読み取れない。
暗殺はリーパーの生業なのだから別に構わない。
それが命令ならば実行するだけだ。
だが、リズベットはピアニーでは無く自分が選ばれた事に少し安堵していた。
ギルドマスターのドラグーン、ヴィクターに絶対の信頼を寄せ始めているピアニーには聴かせたくない仕事だった。
シェラザードは恐らくそれを見越して自分を選んだのだろう。
リズベットはまるで蝶のようにふわりと椅子に座ると「それで、何から始める?」と口許に人差し指を当て妖艶に微笑んで見せた。



仕事は順調だった。
ヴィクターはギルドの運営を実直に熟し、シェラザードはヴィクターの補佐として彼に都合の悪い者は躊躇無く秘密裏に消していった。
元々、年若いギルドメンバーを食い物にしようとしたり、クエスト達成や報酬に関して彼等の生命を脅かす恐れのある悪党ばかりが相手だったので、リズベットは何の感慨も無く仕事を遂行する事が出来た。
しかし、ある夜呼び出されたリズベットは柄にも無く依頼内容を再度聴き直した。
シェラザードはそれも想定していたらしく困ったように片眉を引き上げた。

「ある男の査定をして欲しい。そう言ったのだよ」

シェラザードらしくない答えだった。
知性に置いてはギルド随一である彼は、仕事の表裏全てに置いて自身で決断して来た。
その彼が判断を先送りにし、尚且つ遂行者であるリズベットに委ねると言うのだ。

「あなたさえ惑わせる男なんて楽しみだわ」

「妙な言い回しは止めなさい。確かに魅力に関しては恐らく現世界では右に出る者はいないだろうね」

「何それ怖い」

先日ヴァランシェルドは人攫いの盗賊団を討伐するクエストを受注し、速やかに実行した。
其処でヴィクターはある壮年の男を救助し、有ろう事か連れ帰り自室で保護していると言うのだ。
同室で実弟であるジェラールも同意しているらしく、シェラザードは頭ごなしに反対出来ず困っていると言う。
詳細を聴くと彼は貴重な「外来者(ビジター)」だと言う。
彼は人攫いに捕まった際、怪我を負い、ベッドに横になった状態でシェラザードは対面したのだが、まさしく彼はヴァランシェルドに取って「天秤を揺らす者」だと言うのだ。
「外来者(ビジター)」は危険な要因だ。
出来る事なら関わらない方が得策だろう。

「推測なんて本当にあなたらしくないわね」

リズベットは鈴が転がるように笑った。

「今は面会謝絶状態だから許された者以外は逢う事が出来ない。お披露目の際、君の目で確かめてくれ」

「本当に私が決めていいの?」

シェラザードは道化師のように首を竦めて見せると傍らに立て掛けてある魔法の杖を見遣った。

「彼は外来者(ビジター)だ。確かに私の魔力感知では危険を予知しているのに、彼に逢うと何故かそれを疑ってしまうのだよ」

決断を迷うのは初めての事だとシェラザードも戸惑っていた。
問題は先送りにしても問題ないとしてシェラザードは男の完治を待ち、リズベットに判断を任せる事にしたと言うのだ。



「天秤を揺らす者」
それが全て悪だとは限らない。
調停者はその善悪をも判断しなければならない。
安寧を乱す者なのか、それとも別の波をギルドにもたらす者なのか、全てはその男と逢わなければ分からない。
リズベットは彼に逢うその時をひたすら待ち、やがてその日がやって来た。
しかしリズベットはシェラザードとは違い、一瞬で彼に「陥落」した。
その時の感情を説明するのはリズベットにも難しいだろう。
その生業から、生死を瞬時に決断しなければならないリーパーである彼女が、彼を一目見た瞬間、恐怖し、高揚し、そして保護欲に駆られた。
その複雑な想い全てを覆い尽くしリズベットはその男「しののめちひろ」を殺してはならないと判断した。
「外来者(ビジター)」を匿う事はリスクが大きい。
でも、それを考慮してもギルドメンバーに何かが生まれる予感がした。
その夜。
リズベットはシェラザードに逢い、それを伝えた。
シェラザードは泣いた赤子を宥めるかのように困った顔をして見せると小さく溜息を吐いた。

「それも予測していたよ。では、調停者として君は彼を護るのだね」

愛用の大鎌を軽く振るうとリズベットは年下の男の子を見遣るような顔をして愛らしく笑った。

「そうよ。そんなあなただって彼が可愛くて仕方無いから困っていたのでしょう?」

女の子は何でもお見通しなんだねとシェラザードは薄く笑った。
調停者は天秤を揺らす者を排除する仕事だった。
でも今夜から護る仕事も追加される事になる。
リズベットはパーティ前夜のように気分が良かった。
そして「忙しくなるわね」と喉を鳴らした。
シェラザードも月を見上げると大きく頷き共に笑った。



<了>



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結局どちらも千尋にメロメロなのですよ。
次回は千尋の初めての探索が書きたいです…安西先生…






























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