暗闇の世界の真っ只中にいた間
常に思っていたのは
ここは自分がいる世界ではないということ
でも
この言い方も的を得ていなくて
多分
その当時の自分には
そこは見えていなかった。
見えていなかったからこそ
空想というか妄想の世界の中にいたのです
妄想の世界では
自分はいつも注目を浴びている
キラキラと輝いている
全ての言動がみんなから見られている
そんな感じの華やかな世界を
頭の中で思い描いていた
プロレスラーになったり
甲子園に出場したり
アニメやテレビドラマの正義感あふれる主人公になったり
みたいな未完成なシーンばかりが
自分の内面で再生され続けていた
未完成というのは
自分が何らかの形で登場してくるところから始まり
何らかの行動をして
山のような拍手を浴びたり
ヒロインをピンチから救い出したり
そして
そこで終わり
という
他との絡みも何もなく
そこだけが延々と繰り返されている
そんな妄想をしていたのですね。
当然
このようなことは誰にも話せずに
周りの友達にも
家族にも
とってつけたような
笑いに向かうお話や
野球だったりプロレスだったりのことを
言うくらいしか
話していなかった。
そして
いよいよ進路選択
これといって
特に何かやりたいことやら
なりたい職業なども
何もイメージできていなかったけど
大学には言っておこうと思ったのね。
だけど
勉強もほぼ手つかず
というよりは
一次試験がお正月明けにあったのだけど
その時期に自分は
夢中になって
横溝正史の本を読みまくっていたのです。
しかも
ご丁寧に
ノートに
登場人物の行動やら
気になるセリフやら動きやらを
時系列に並べてメモ書きしながら
横溝正史さんが用意したトリックを解き明かすというミッションに
メチャクチャ
はまっていました。
それこそ
これ以上読み進めれば
犯人やらトリックやらが分かってしまう
という一歩手前のところまで
そこを
何回も何回も
読み直し
ノートに書き綴ったメモを見ながら
犯人は誰?
一体どういうトリックが
その事件を構成しているのか
というのを必死になって考えていたのです。
一次試験に向けて
必死になっているのではなく
トリックを暴くことに
必死になっていたのですね。
結果
トリックも犯人もほぼ
横溝正史さんが
用意されたものに近づけたので
大満足だったのね。
テストの結果は
当然
酷いものでした。。。
さて
その自己採点した点数に則り
どの大学を本当に受けるのかを決める時期になりました。
その時点で
その年の大学合格はないだろうという見込みを持った私は
ここで
一つのプロジェクトを思い立ったのです。
名付けて
「自分変身プロジェクト」
サブタイトルが
「一年間浪人して
自分を徹底的にトレーニングして
全く生まれ変わった自分で
大学に合格して
大学生活を謳歌する」
というものでした。
このプロジェクトを思いついた時点で
大学はどこでも良いからとりあえず受けると決めました。
そして
浪人するからには
一年計画のスタートとなります。
4月からの本格的な浪人生活に先駆け
少しでも
スタートダッシュをするために何をするべきかを考えたのです。
決めたのが
そのときいちばん苦手な教科のみ
二次試験で徹底的に学習するというものでした。
すると
自動的に
二次試験を受ける大学が決定したのです。
二次試験はその苦手教科一つだけ受ければ良い大学
落ちるの分かっているのだから
わざわざ遠くに行かないで
条件にあった中で家から一番近い大学
自分にしてはスッキリと決めました。
その大学に対しては特に憧れとか何もなかったけど
自分変身プロジェクト
ロケットスタートを切るために
苦手教科を克服する!
それが目的でした。
そして
一次試験で横溝正史を夢中になって
トリック暴きに挑戦したくらいに本気になって
ひたすら学習しました。
超シンプルにしたのです。
一冊参考書を選ぶ
それを最初のページから
納得するまで読み込み
問題といて
答え合わせして
間違ったところを
何故間違えたのか分かりまで
読み込み
納得して
初めて次にページに進む。
翌日は
もう一度最初からやり始める
みたいな感じで
最初のページあたりは
毎日毎日
読み
問題を解いていたので
ページはボロボロになりました。
当然進むスピードはメチャクチャ遅かった
約一ヶ月朝から晩まで頑張ってやって
二次試験当日まで
進んだのは
全体の1/3も進まなかったと思う。
妙な達成感は持てたけどね。
二次試験を受けてみて
手応えとしては
すごく力がついたという感覚を得たのです。
この調子で3月の1ヶ月を学習に費やせば
いよいよ
4月からの「自分変身プロジェクト」が順調にスタートが切れる
とワクワクしていたのですが
なんと
その年に
合格してしまったのです。
これにはビックリしました。
一次試験のテスト結果からして
全くありえないことでした。
本当に
想定外でした
自分は結果発表すら見に行かなかったのです。
あるはずがないと確信していましたので。
「無駄だから行くのやめとけ」と言ったにも関わらずに
わざわざ見に行ってくれた母親から
電話がかかってきて合格が伝えられたのです。
喜びどころか
怒りがこみ上げてきました
「なんで
自分がやる気満々になって
楽しみに
取り組みつつある
プロジェクトを
邪魔する」
と叫んだのを覚えています。
神様を呪いました。
早速
その日に
親戚の叔父さんも喜んで来てくれて
お祝いが開かれたのです。
そこで
自分は
初めて両親に対して自分の思いを伝えたのです。
自分はその大学に興味も憧れもない
自分が何者なのか
どうしたいのか
浪人して
一年かけて学び鍛えて
自分が学ぶ目的を持てる大学を選びたい。
なので
浪人します!
その大学にも行きません!
ここで
母親が激怒して
「馬鹿なことを言い出すな💢
そんな甘っちょろいこと言っていて
一年間浪人するって
どれだけ大変だと思うの?
大体
そのお金は誰が出すの?
そんなことには
お金は絶対に出せない。
頭冷やしてこい」
と大声を出し始めたので
こちらも負けずに
言い返す。。。
というストーリーを予測していたのですが
母親も父親も妹も叔父さんも
みんな目がはてな状態
「まあ
勉強していて疲れたんだろ。」
「うれしくて興奮しているから
自分でも何言っているのか分からないだろ」
などと言って
「お酒でも飲め」って
お酒を勧めてくる
どうしてみんな
「馬鹿なこと言うもんじゃない」みたいに
怒り出さないの?
と
ものすごく
拍子抜けしてしまったのを覚えています。
高校の担任の先生にも電話をして
その大学に行かないで
浪人します
と伝えたのだけど
「よく受かったなあ
すごいぞ!
もっと喜んで良いんだぞ」
と話が噛み合わない。
ずっとずっと
謎だったのですね。
なんで私が真剣に
本音で話したのに
みんな受け取ってくれなかったのだろう?
なんと最近になり
やっと分かったのです。
もしかしたら
中学高校時代で
自分が本音というか本心を語ったのは
それが初めてだったかもしれなかったのです。
オオカミ少年みたいに
いつもいつも
口から出す言葉は
本音とはかけ離れていた
そんなことを続けていたら
本当に言いたいことを
初めて声に出して言ってみたけれども
相手に
伝わらなかった
ということだったのですね。
自分がせっせと種まきをして育ててきた
自分自身の言動が
自分の本当にやりたかったことを
邪魔してしまったのです。
邪魔をしたのは
自分のせいなのに
それを
神様を始め
周りの人達のせいに
ずっとずっと
してきたのでした。
そのまま
人のせいにしっぱなしの人生に
ならずに済んだのは
感謝です。
きっと
母親からすれば
素直に喜べ
って思っていたのでしょう。
ちゃんと
そこにつながる
エピソードも
思い出しました。
次はそれ。