ミドリが店員をやってる終わった後の美容院にアノンはいた。今は照明を落として、二人だけがガラス張りの店内にスポットライトのように照らされて立っている。アノンは椅子に座ってカバンを膝に抱えて鏡に写った自分を見ていた。
「どういうこと、アノン?」
これから髪でも切るみたいにアノンの後ろに立ってミドリは問いかけた。
「何のこと?」
「『カプセル』から僕達だけ閉め出しくらったんだ」
「え、どうして?」
「最近、ほらナンバー狩り?あれは私達のせいだってことになって…仲間割れだとか…思えば神宮橋の立ち退きも裏で手が回ってたんじゃ」
「そう…なんだ」
「悔しくないの?」
「仕方ないよ、そうなっちゃったんだから…」
アノンは大きな鏡の前の自分の顔を眺めた。ちょうどその後ろに大きな全身鏡と合わせ鏡になってどこまでも向こうに幾重にも自分を映した。アノンは椅子の一つに座ってくるくると回りだした。
「それだけじゃない。それにアカ達が辞めたいって言い出してるんだ」
「アカが…」
アノンはその遊びにも飽きたみたいに椅子を止めた。
「最近会ってなかったんだ。別におかしいとも思わなかった。ナンバー狩りでちょっと用心するって言ってただけだったのに…何か知ってる?」
「そうか。それで…」
「やっぱりアノン知ってるんだ…」
「今度のおっきなイベントやるでしょ?これ…」
アノンがポスターを差し出すとミドリはそれを手にとって見た。
「…そんな…」
ミドリは言葉をなくした。出演者の中に知ってる名前が幾つもあったから。
「…アカ、それに他のみんなも…」
「アカ、それに他の何人かもの委員会と代理人に丸め込まれて…オトナ達がマキーナを自分たちのものにしようとしてる…見てよ、デウ・エクス・マキーナのロゴの下」
「下?」
「○Cってついてるでしょ。それって誰かが権利を持ってるって」
「そんな。僕達が作ったものなのに…一体いつから…?」
「…さあね。ただ私達の知らないところでは着実に進んでたんだ。社会化され組織化されひとつの権力を目指して収束されていく『管理』。これが狙いだったんだ」
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