今日はいいお天気。
三重県に住んでいると海や山が近くにあり、
人がほとんどいない環境にでかけています。
湧き水を汲みにいったり、
養鶏をされている農家さんのところで卵を買って、
おいしいお豆腐をつくっているおじいさんのところで
たくさん買ったお豆腐のおまけにおからを頂いて。
日々を少し豊かに、工夫して過ごしたいです。
今日は人があまりいない海岸で潮干狩り。
アサリ・はまぐりなど、ざくざく。
お宝探しのようで楽しいです。
さて、昨日の記事（ こちら )では、
伊勢根付についてご紹介させてもらいました。
伊勢根付のこと、少しわかってもらえていたらうれしいです。
その昨日の記事の中に、クイズがあったのですが、覚えてますか？
こちらの正直の根付。
わらじの裏にヒキガエル
というデザインなのですが、
どういった意味が込められているのでしょう？
というクイズでした。
わかりました？
うふふ。
私、根付の職人として、
こういうそこに込められた秘密とか思いとか、
そういう話しをするのが大好きなんです。
こういう思いで作ったのかなあ、こんな人が買って使っていたのかなあって
いろいろ想像して、わくわくうれしくなっちゃう。
さて、答え合わせです。
この「わらじ」は、「旅」を表現しているんです。
「カエル」は、「帰る」という意味。
つまり、江戸時代お伊勢参りに来た人たちは、
命がけで、長旅をしてきて伊勢神宮に着いたのですが、
このあとまた長旅をして、故郷の家まで無事に帰らなければいけないんです。
だから、無事に帰れますように
という祈りを込めて、
わらじの裏にカエルなんです。
伊勢根付ならではのデザインですね。
でも、ここに込められた意味はそれだけじゃないんです。
カエルがヒキガエルなのはどうしてなのか。
引きがある、引きが強い
なんて、運が強い人のことを言ったりしませんか？
だから、ヒキガエルは、
ひき(=運)が得る
という縁起を込めてあるんですね。
『この根付を持つ人の運がより良くなりますように。』
という願いが込められた根付。
必死の思いで伊勢まで来て、伊勢神宮にお参りをして、
この根付を買って、
無事に家に帰ったら、きっと素敵な未来が、
運のいい未来が待っているんだっていう
買った人の思いもここに込められていて
きっと、帰り道中なんども開いては
この根付に元気をもらったんだろうなあとか、
故郷に帰って、いろんな人にこの根付を見せて
伊勢の話、道中の話しをしたんだろうな、とか、
なにか人生で苦しいとき、
お伊勢さんの御加護がありますようにとこの根付に祈ったかもしれないな、とか
いろんなことを考えちゃう
そんな、ずっと使う人に寄り添って、
ふと背中を押してくれるような根付を作りたい
私の根付がそんな存在の根付であれたらいいなあと
いつも思っています。
根付ってね、たくさん触って、摩耗して、飴色になった状態を
根付用語で”なれ”って言って
価値が増すんです。
職人が作って終わりじゃなくて、
使う人に成長させてもらって一人前になるのが根付なんです。
その考え方がすごく好きなんです。
大量生産・大量消費が当たり前で、
ともすると人すらいくらでも替えがきくような社会の中で、
本当に大切なもの、気に入ったものを大事に大事に使い続けて
その使った証が”なれ”として現れて、
価値が増すというその存在が、
経験を重ねて美しくなるというその考え方が
とても素敵だと思ったんです。
格好いいでしょ？
もちろん、その彫刻の精巧さ細かさ、美しさに加えて、
使い込むほどに価値が増す。
粋な洒落、おかしみ、言葉遊びといった遊び心や
縁起、願い、祈りまで。
職人は、そういった様々な遊び心、心遣い、祈り、願いなんかを
本来は伝えないで、こっそり作品の中に込めておいて、
いつか、ふと使っているうちに気がついてくれたらいいなと彫っているんです。
わざわざ伝えるなんて野暮なことは本来はしないんです。
気がついてもらえなかったらどうするの？
ってよく聞かれるのですが、
気がついてもらえなくてもいいの。
いえ、気がついてもらえなくて当然なの。
でも、全部でなくても、ほんの少しでも
なにかのはずみにふと、
こういう意味なのかな？
こういう配慮で彫ったのかな？
って思ってもらえたら嬉しい。
あ、これどうやって彫ったんだ？
っていう、彫りの妙から、
遊び心、祈りまで、
昔から日本人が大切にしてきた精神性を
ぎゅっと詰め込んで、
使ってくれる人とともに、
美しく成長するのが根付なんです。
そんな、根付の魅力、もちろんまだまだ
これからもっともっとお伝えしていきますからね〜！！
