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再生医療

2014-06-09 18:49:49 | Weblog
人の医療も含め、時代の最先端の一つは「再生医療」でしょう。
ノーベル賞につながったiPS細胞の研究など、画期的な変化が今後認められてくると確信しています。

獣医学領域でも脂肪幹細胞を用いた再生医療は治験が実施されています。当院も登録し、過去には使用した実績もあります。活性化リンパ球療法などを実施している動物病院も出て来ています。以前、活性化リンパ球療法を口腔内扁平上皮癌の犬に実施したことがありました。残念ながら、そのケースは十分な有効性は出せませんでした・・・。

この数ヶ月で、マイブームなのは「再生因子」による治療です。細胞そのものを用いず、成長因子いわゆるグロース・ファクターを投与する治療方法です。名古屋大学の研究成果を先輩の獣医師を介して紹介されました。有償治験の一環として承り、完治が難しいとされる疾患に用いています。意識の高い飼い主さんでないと、費用やリスクにご理解いただけないので、必要そうな場合に限り提案させていただいています。

営業の担当者さんから、様々な実際の症例のお話を聞いています。今までの医療では完治やコントロールが難しい症例で、有効な結果が出てきているようです。人の医療機関でも治験がスタートし、肝硬変や糖尿病・その他での有効性の検証が始まりました。ちらほらと、「これはいいかも!」という事例が出ていると聞いています。

ホームドクターである以上、飼い主のいる動物で「実験」をするわけにはいきません。しかし有望な治療方法がない場合には、リスクをとっていかないと前に進むこともないのです。乳癌やニキビダニ症・甲状腺機能低下症に肝臓腫瘍を抱えるコーギーの老犬に投与しています。さきほど診療に来て、再生因子を投与していかれました。非常に快活になって元気になった・・・との好評価をいただいています。難治性の口内炎の猫も今日来ていましたが、以前に比べてステロイド剤に頼ることが無くなりました。腎臓癌を摘出した老シーズーは、対側の腎機能の低下のため再生因子の投与を開始しました。良い結果が出るかはこれから判断ですが、腎機能の低下に関しては仲間うちでは意外によい成績が報告されてきています。

根拠・エビデンスのある医療(EBM)に加え、未知の分野ではありますが、冷静な検証をしていきたいと思っています。こういう貴重な体験を紹介してくださった先輩のK獣医師には、感謝の言葉しかありません。