オイラは、ボイラ 寒がりボイラ

6月から9月まで迄の4か月間は、失業状態ですが、冬期間はボイラーマンとして出身高校を暖めています。

ゴールデンウイークに海が恋しくなった美也。

2017年03月12日 13時04分07秒 | 北のポエム・北海道発のエッセー
倉庫での仕事も大分慣れてきて、美也は最近はリフトの運転を始めた。早いもので、待望のゴールデンウイークが
4月29日から五日間始まろうとしていた。山口良平は、八戸の実家に帰省すると話していた。東京駅から夜行バスで、
片道1万円で行けるそうだ。夜の9時に東京駅八重洲口を出て、翌朝6時半ごろに八戸に着くらしく、良平は時々このバスを、
利用していると言っていた。美也は「俺はしばらく、北海道には帰れないなぁ。」と考えていた。悲しい故か、久々に海が見たくなった。
長い休みの一日を海の見えるところで過ごしたかった。北海道では、直ぐ目の前が海であり潮風を浴びない日は無かった。
一番先に頭に浮かんだのが、湘南の江ノ島だ。サザンの歌によく出てくる海で充実した1日を過ごすなんて夢のようであった。
東京メトロで渋谷まで行き、そこから東急電鉄と小田急を乗り継いで、片瀬江ノ島駅までは2時間くらいで行ける。
時間は少しかかるが、メトロ浦安駅から片道880円で憧れの江ノ島に行けるのだ。

 5月2日(火曜日)7:00に浦安から渋谷経由で片瀬江ノ島に着いたのが、9時をまわっていた。
ゴールデンウイークの中日ではあったが家族連れや若者、カップルなどで賑っていた。美也は江ノ島展望灯台に行ってみた。
江ノ島の中央の高台にあり、駿河湾を一望できた。北海道の家の前から見る日本海とは、比べものにならないくらいの
大海原が広がり、赤道まで行けそうな太平洋がきらめいていた。改めて、太平洋に包み込まれる自分の小ささが判った。
折角なので、あの有名な江ノ電に乗ってみようと思い、江ノ島駅から鎌倉高校前を通り、七里ヶ浜、稲村ヶ崎駅まで、
乗車して、鎌倉海浜公園まで散策してみた。たくさんのサーファーで賑やかな海岸線であった。北海道との気候の差に、
ビックリする美也であった。気温22℃もある。北海道の田舎では、7月上旬にならないとこんなに暑くないのだ。
有名な観光地を一人歩いていると、むなしさが込み上げてくる。のども渇いたので、コーヒーでも飲もうと小さなカフェに
入った。二階から海を見渡せる展望室があり、そこに座って待っていると二十歳ぐらいのスレンダーなスタイルの店員が、
注文を取りに上がってきた。「お客様はお一人ですか。」と尋ねてきたので、「はい。」とうなずいた。ニコッと微笑み、
「何になさいますか。」と丁寧な感じの言葉遣いで、聞いてきた。「アイスコーヒーください。」と言うと「かしこまりました」
と笑顔で頭を下げ、階段を下りていった。美也はこの時、「凄く、かわいい子だなぁ~、彼氏いるんだろうなあ。」と
男としての本能で、普通に考えてしまった。しばらくして、彼女がアイスコーヒーを持って上がってきた。コースターの上に
グラスを置くと、「お客様は、観光ですか。どちらからいらっしゃったのですか?」と聞いてきた。「千葉の浦安です。」と
美也は、照れくさそうに答えた。「あら~、ディズニーランドのある浦安ですか。」「私、あそこに5回行ったんですよ。」
と言ってきたので、「あ~、そうなんですか。好きなんですね。ディズニー。」と言うと「はいそうなんです。メチャ好きです。」
とあどけない表情を見せた。彼女は、直ぐにお辞儀して一階に降りていった。美也には、「彼氏と5回も行った」と自慢しているように
聞こえた。海を見てアイスコーヒーを飲み、30分ぐらいでカフェを出た。サーファーの日焼けした顔の男女がボードを抱えて
歩いている。ここだけ別世界の異様な感じであった。普通の格好で歩いている自分が浮いている様であった。
夕方になり、七里ヶ浜あたりで江ノ島と富士山の間に下りる夕日を、江ノ電の中から見たときは、感動ものであった。
北海道の田舎で見る、日本海に下りる夕日も綺麗だが、こちらで見られるのは、富士山と江ノ島海岸だ。山・島・海と三拍子
揃っている。とても、かなわない光景である。


コメントを投稿