またまたジャズの名盤レコードを手に入れることが出来た。1956年にPrestige Recordsからリリースされた、ソニー・ロリンズのアルバム『Saxophone Colossus』(通称: サキコロ)である。ジャズファンにはもはや定番でお馴染みの名盤だと思うが、実は最近までソニー・ロリンズの存在も、この名盤も知らなかった。しかし、マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンなどを色々と聴いていくと、やはり避けて通れないジャズの名盤として必ず登場するのが、このアルバムだということがわかり、ついに聴いてみることにした。
ソニー・ロリンズは主に1950年代から活躍したサックス奏者で、マイルズ・デイヴィスとも頻繁に演奏していたジャズ界の巨匠である。その男性的で、天才的なサックスプレイはファンも多く、ビバップからハードバップなどのジャンルに影響を与えた。そして数ある彼のアルバムの中でも、この『サキコロ』は最高傑作とされている。それにしても、薬に手を出し、不摂生がたたって、早く亡くなるジャズミュージシャンが実に多かった中、ソニー・ロリンズは現在93歳でまだご健在だというから驚いてしまう。ジャズ業界でこんなに長生きなのは珍しいのではないだろうか。
さて、アルバム『サキコロ』だが、まずブルーの背景の中でサックスを吹くソニー・ロリンズの姿が、まるで影のように描かれているジャケットが何ともオシャレでカッコいい。ジャズ界の巨匠感満載で、これだけでちょっと聴いてみたくなってしまうが、やっぱりジャズは青いカラーが良く似合う。アルバムに収録されているのは下記5曲。
- Thomas
- You Don’t Know What Love Is
- Strode Rode
- Moritat
- Blue 7
『サキコロ』の録音には、トミー・フラナガン(ピアノ)、ダグ・ワトキンス(ベース)、マックス・ローチ(ドラム)といった当時を代表する優れたミュージシャンたちが参加。レコーディングは一気に行われたらしく、中でも『St.Thomas』、『Moritat』、『Blue 7』は特に名曲と言われている。それは各曲における緻密な構成と即興のバランスが絶妙だからなのだろう。
まず1曲目の『St. Thomas』はソニー・ロリンズ祖先の故郷でもあるカリビアン地域の影響が見られる、カリビアンリズムがとてもエキゾチックで心地良いフュージョンジャズとなっている点でユニークだ。中盤のドラムソロ、後半のピアノソロも素晴らしい。2曲目の『You Don’t Know What Love Is』は軽快な1曲目から一転して、ムーディーなジャズバラードの定番となった曲で、粘着力のあるサックスプレイが堪能できる。
3曲目の『Strode Rode』はハードバップ、ビバップの影響が色濃く感じられ、クールに刻まれるベースと、スピード感のあるサックス、ピアノ、シンバルが見事に展開される。4曲目の『Moritat』はまたムーディーながら軽快さもあるナンバーで、アルバムの中でも一番洗練されたサウンド。そして最後5曲目の『Blue 7』は、タイトルも素敵だが、カッコいいベースで始まり、中盤のソニーの即興サックスが冴えわたる名曲。これもどこか地下のバーでウィスキーを片手に(ウィスキーはあまり飲まないが(笑))、ゆっくり聴きたいような曲だ。
僕もまだまだジャズの超ド素人だが、このアルバムを聴いていて、“ザ・ジャズ”アルバムという印象を強く持った。ジャズとは、本当に自由な音楽表現であり、演奏もまさに一期一会である。全く同じ演奏というのは2度とないのだ。その意味ではその奇跡的な瞬間を収めたレコードを通して、我々は一つの“芸術”に触れているとも言えるし、その解釈も十人十色と言えるかもしれない。そこがまたジャズのいいところでもあり、懐の広さ故の楽しみ方、魅力であると感じる。その意味で、まさにこのジャズを体現している一つのアルバムが、この『サキコロ』ではないかと思ってしまった。Apple Musicでも聴いているのだが、やっぱりまた夜な夜なじっくりとレコードで堪能して行きたい。
何だかジャズの名盤がどんどんレコードで増えて賑やかになってきたのがとても嬉しい(笑)。