先月末にシアトルに立ち寄った際にWing Luke Museumで購入したブルース・リー本のことは紹介したが、実はこの時もう1冊、こちらの小さな絵本を購入していた。
ブルース・リーの人生を全20ページほどの絵本にして紹介したもので、『Who Was Bruce Lee?(ブルース・リーとは誰だったのか?)』というタイトル。2022年に出版されたものなので、比較的新しい絵本だ。手に取って見てみたところ、結構良く出来ていた絵本だったので、思わず購入してしまった。ブルース・リーの絵本は何種類か出回っているが、今回発見したこの絵本は、これまで見たブルース・リー絵本の中では割と良く出来ている方だと思う。
まず表紙のイラストがなかなか秀逸だ。割と似ている絵だし、顔の部分だけがめくれるようになっており、めくると幼少時代のブルース・リーの絵が現れる仕掛け。
まずはサンフランシスコで生まれたブルースが、俳優であった父の力もあり、ブルース幼少の頃から、子役で映画などに出演しており、幼い頃からエネルギッシュな子供であったことが語られる。
そして香港で育った子供の頃は、けんかばっかりしてトラブルに巻き込まれることも多く、けんかに強くなるため、カンフーも習い始めたことなどが語られる。そしてイップマンの教えを乞うことになる。
しかしブルースはなかなか自分の怒りをコントロール出来ず、ある日ボートに乗っていた時、むしゃくしゃして水面をパンチしたところ、水は幾ら強くパンチしても破壊したり、動きを止めることは出来ないことに気づくエピソードが紹介される(後にブルース・リーの名言、”Be Water”(水になれ)という截拳道の哲学に繋がる出来事であった)。
単身アメリカに渡ったブルースは住み込みでシアトルの中華料理屋で働きながら、アメリカにおけるアジア人への差別に就き、身をもって経験していく。
そしてブルースは、自己表現の方法として、截拳道という武道を生み出し、人種を問わずこの武道を教えようとシアトルに道場を開く。
やがてブルースの活動はハリウッドの目に留まり、TVドラマ『グリーン・ホーネット』に準主役で起用される。
そしてこのことから、ハリウッド俳優にも武術指導などを行う仕事も多く手掛けることになっていった。しかし、やはりハリウッドは当時まだまだ白人社会。中国人がドラマや映画の主役を張るなど考えられないことだった。
これに失望したブルースは家族と香港に里帰りするが、この時『グリーン・ホーネット』のTV放送が香港で行われていて、ブルースは香港ではちょっとした有名人になっていた。これにより、香港での映画製作会社から声がかかり、そこから次々に映画の主演を任され、いずれも大ヒット。このページのチャック・ノリスのイラストが特に良く描けている。
最後のページは、ブルース初主演のハリウッド映画、『燃えよドラゴン』の大ヒットで、ついにアジア人の地位向上、そしてハリウッドではそれまで見たこともないカンフーを全米に広め、水のようにその流れが止まることなく、世界をインスパイヤし続ける存在となっていくという説明で絵本は終わる。亡くなったことにはあえて触れていない。
僕は以前から触れていることだが、ブルース・リーという人物は単なるアクションスターを超越し、世界の中でアジア人に対する見方を変え、そして彼がこの世に残した映画を通して、その後の武道や格闘技、そして哲学に及ぼした影響力はあまりにも大きく、まさに偉大なる革命家であったと思う。その意味からも、歴史上の偉人の一人として語られるべき存在だと思っている。このようなブルース・リーの絵本により、世界中で多くの子供たちにも彼の偉業が語り継がれていくことを本当に嬉しく思うので、良い絵本を発見出来たことは何とも感慨深いものがあった。