ケーブル日和【オーディオケーブルの超マニアックなお話】

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RCA-XLR変換ケーブルの特徴と気をつけたいこと

2023年07月31日 | ケーブル使いこなしノウハウ

今回は「RCA→XLR変換ケーブル」と「XLR→RCA変換ケーブル」を詳しくご説明いたします。

変換ケーブルを使うとバランス伝送になるのか、アンバランス伝送になるのか、その理由も分かりやすくご説明します。

また、変換ケーブルを使うとRCAケーブルやXLRケーブルで機器を接続した場合と比較して、音量が変わる場合が多くあります。このことについても詳しくご説明いたします。

 

1.変換ケーブルの役割は?
オーディオ機器のアナログ用入出力端子には、RCA端子とXLR端子があります。
通常は、RCAケーブルを使ってRCA端子同志を接続したり、XLRケーブルを使ってXLR端子同志を接続して使用します。
しかし、機器の組み合わせや使い方によっては、異なる端子同志を接続したい場合があります。
例えば、RCA出力しかないCDプレーヤーをXLR入力端子しかないパワードスピーカーに接続したい場合があります。(RCA→XLR変換)
また、CDプレーヤを2系統のアンプに接続したい場合に、XLR出力を有効利用してRCA入力しかないアンプに接続する場合等です。(XLR→RCA変換)
この役割を担うのが変換ケーブルです。


2.RCA端子とXLR端子はどのようになっている?
変換ケーブルを使う上で、RCA端子とXLR端子の違いをご説明します。
まず、RCA端子です。
出力信号は、GND(基準電圧0V)とHOT(正相信号)の2種類です。


一方、XLR端子は以下の通りで、RCA端子には無かったCOLD(逆相)信号が加わり、端子の数も3つとなります。
また、写真の通り端子の形状も大きさも違います。



3.同じ端子同志の接続では信号はどうなっている?
通常は同じ種類の端子同志を接続するのが基本です。
XLR端子はバランス伝送、RCA端子はアンバランス伝送となると言われますが、実際の信号はどのようになっているかをご説明します。

先ずは、XLRケーブルによる接続は次の通りです。
尚、図中のプリメインアンプは説明のために非常にシンプルな構成となっていますが、実際のアンプはもっと複雑です。


最大の特徴は、GND(基準電圧0V)、HOT(正相)、COLD(逆相)の3つを使い、信号を伝送することです。
入力側の機器では、COLD信号(逆相)を回路内で反転し、HOT信号(正相)と合成します。
これにより、伝送途中で混入したノイズ成分が打ち消しあい無くなるため、外部ノイズに非常に強い伝送方式となります。
この方式をバランス伝送と言います。

一方、RCAケーブルによる接続は次の通りです。
こちらの図中のプリメインアンプも説明のために非常にシンプルな構成で、バランス伝送関係の回路を無くした構成になっています。


GND(基準電圧0V)、HOT(正相)の2つを使い信号を伝送します。
伝送途中で混入したノイズ成分は、そのままアンプの増幅回路に入力されることになり、ノイズが大きいと音質に悪影響が出てきます。
では、変換ケーブルと使うとどうなるのでしょうか?


4.変換ケーブルと使うとバランス伝送はできるのか?
答えは、No「ノー」です。
変換ケーブルを使うとバランス伝送はできず、全てアンバランス伝送になります。
具体的なイメージをご説明いたします。

先ずは「XLR→RCA変換ケーブル」で接続した場合です。

出力機器のXLR端子には「GND・HOT・COLD」の3つの出力がありますが、入力機器のRCA側には「GND・HOT」の2つの入力しかありません。
これを接続するために、XLR端子のCOLD(逆相)は未接続とし、GNDとHOTの2つの信号をRCA端子に接続します。
図でもわかるように、方式的にはアンバランス伝送となり、伝送途中で混入したノイズ成分は除去することはできません。

次に「RCA→XLR変換ケーブル」で接続した場合です。

出力機器のRCA端子にはGND・HOT」の2つの出力しかなく、入力側のXLR端子にある
「GND・HOT・COLD」の3つのうち、GNDとHOTしか接続できません。
COLDの入力は、通常ノイズを防止するため、変換ケーブル内部でGNDに接続します。
これらのことから、方式的にはアンバランス伝送となり、ノイズ成分を除去することができません。


5.変換ケーブルで接続すると音量が変わる?
例えば、CDプレーヤーとプリメインアンプを接続する場合、RCAケーブルで接続した場合と比較して、変換ケーブルを使用すると音量が変わる場合が結構あります。
実際に、RCA→XLR変換ケーブルを使用されたお客様から、RCAケーブルで接続した場合と比較して音量が下がったとのお問合せをいただいたことがあります。
これは、機器のXLR端子とRCA端子の電気的な仕様の違いによるものですが、あまり知られていません。

先ず、次の表を見てください。
これは、有名メーカー3社のCDプレーヤーの出力電圧と、プリメインアンプの入力感度の比較表です。



ここで注目していただきたいのが、CDプレーヤーのXLR出力電圧とRCA出力電圧はメーカーによって異なっているということです。
しかも、XLR出力電圧とRCA出力電圧が同じメーカーもあれば、XLRの方が倍近い電圧になっているものもあります。
オーディオ機器の出力規格は統一されていないため、このような状況になっています。

あと、もう一点注目していただきたいことは、CDプレーヤーのXLR出力電圧がRCA出力電圧の倍あるメーカーは、プリメインアンプの入力感度を見るとXLRの入力感度がRCAの入力感度の倍の値になっています。
これは、XLRケーブルで機器同士を接続した場合と、RCAケーブルで機器同士を接続した場合に音量差を無くすためです。(あくまでも自社製品同志を接続した場合ですが)

さて、上記の表を元に変換ケーブルで接続したら音量はどうなるのか、次の項で具体的に説明いたします。


6.変換ケーブルで接続すると音量はどう変わるのか?
まず、結論から申し上げると、音量は次の通りになります。

①「XLR→RCA変換ケーブル」で接続した場合
 RCAケーブルで接続した場合と比較すると、音量が同等か上がります。


「RCA→XLR変換ケーブル」で接続した場合
 RCAケーブルで接続した場合と比較すると、音量が同等か下がります。


さて、何故このようなことになるのでしょうか?
この説明は電気的なお話となり、ちょっと厄介なのですが、出来るだけ分かりやすく説明したいと思います。

下記の図を見てください。
これは海外C社のCDプレーヤーとプリメインアンプの電気仕様を基に、説明のためにシンプルな回路でモデル化したものです。(実際のプリメインアンプはもっと複雑で、回路構成も様々です)
そして、回路の各部分に電圧も記入しています。


さて、上記の図では、XLRケーブルで接続した場合も、RCAケーブルで接続した場合も音量は変わりません。
プリメインアンプが側で入力切替を行っても、同じ音量で再生されます。
これは、CDプレーヤーのXLRとRCAの出力電圧の違いに合わせて、プリメインアンプ側でXLRとRCA入力感度を変えてあるためです。

では、これを変換ケーブルで接続したらどうなるのでしょうか?

① 「XLR→RCA変換ケーブル」を使用した場合


上記の図のように、プリアンプ部の入力電圧が+8.0Vから+16.0Vとなり、2倍になります。
つまり、RCAケーブルで接続した場合と比較すると音量が上がることになります。

② 「RCA→変換ケーブル」を使用した場合


上記の図のように、プリアンプ部の入力電圧が+8.0Vから+2.0Vとなり、1/4になります。
つまり、RCAケーブルで接続した場合と比較すると音量が下がることになります。


7.変換ケーブルにも「2番HOT」「3番HOT」はあるのか?
これは、YESです。
RCA端子はGND(基準電圧0V)とHOT(正相)の2種類、XLR端子はGND(基準電圧0V)とHOT(正相)、COLD(逆相)の3種類の信号を使用します。
変換ケーブルでは、RCA端子とXLR端子間をGND(基準電圧0V)とHOT(正相)の2種類の信号を使用して接続します。
XLR端子には「2番HOT」と「3番HOT」の2種類の規格が混在していますので、変換ケーブルもこれに合わせる必要があるのです。
ケーブル工房TSUKASAの変換ケーブルでは、オプションで「2番HOT」か「3番HOT」を選択できるようになっています。


8.変換ケーブルで特に注意が必要なこと
XLR→RCA変換ケーブルでは、特に注意しなければならないことがあります。
それは、XLRプラグ側のCOLD端子の扱いです。
XLRプラグ側のCOLD端子は、未接続(オープン)になっていないと、接続する機器の出力回路を壊してしまう可能性がありますので、これは必須です。

実は古い機器でトランスを使用したXLR出力回路を搭載したものは、COLD端子をGNDに落とさないと正しく音が出ないということがあり、一部のXLR→RCA変換ケーブルや変換プラグで、COLD端子をGNDに接続しているものもあります。
しかし、現在の機器の殆どは、XLR出力回路が電子化されていますので、COLD端子がGNDに接続されていると過大な電流が流れて、電子回路が壊れてしまう可能性があります。
よって、特にXLR→RCA変換ケーブルでは、XLRプラグ内でCOLD端子が未接続(オープン)になっているものを、使用することが大切です。
※ケーブル工房TSUKASAのXLR→RCA変換ケーブルでは、XLRプラグ内でCOLD端子は未接続としています


9.フォノ用バランス回路の変換用としては使用できません
最近、フォノイコライザーでもバランス伝送対応のものが増えてきており、XLRの入力端子が装備されているものがあります。
また、レコードプレーヤー側にもXLRの出力端子が装備されているものも発売されています。
では、これらフォノ用のXLR端子で変換ケーブルは使用できるかというと、これは使用できません。
理由は、通常のXLR端子とフォノ用のXLR端子は1番ピンの扱いが異なるためです。

<CDプレーヤー、アンプのXLR端子> ※2番HOTの場合
1番ピン:GND(基準電圧0V)
2番ピン:HOT(正相信号)
3番ピン:COLD(逆相信号)

<レコードプレーヤー、フォノイコライザーのXLR端子>
1番ピン:GND(トーンアームやケーブルシールドを接続)
2番ピン:HOT(正相信号)
3番ピン:COLD(逆相信号)

レコードプレーヤーやフォノイコライザーのXLR端子の1番ピンは「基準電圧0V」ではなく、「トーンアームやケーブルシールド」が接続されており、これらをアースに落とすためのピンになっています。
レコードプレーヤーでMCカートリッジを使用した際のバランス出力は、フローティングバランスと言われており基準電圧を持ちません。
基準電圧はフォノイコライザー側で回路により作成し、バランス伝送を実現しています。

この違いにより、変換ケーブルはレコードプレーヤー、フォノイコライザー関係のバランス伝送では使用することができません。



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